お知らせNews

資本金への計上の是非

2021/11/05 金曜日

新型コロナウイルスの影響により、業績が悪化している会社が多い。 そんなときには増資を検討してみてはどうだろうか。

増資とは会社設立後の追加出資であり、出資者には株式が発行され株主となる。 出資であるから借り入れとは異なり、返済の必要はない。しかし出資者は株主となるのであるから、会社の経営に対して口出しができるようになる。配当もしなければならない。 増資をすると会社に資金が入るので、資金繰りに苦しいときには助かるし、債務超過を解消することもできるかもしれない。結局のところ一長一短の制度ってところか。もっとも、経営者を含め、出資してくれる人がいればの話だが。

さて、増資をすると原則として資本金が増えることとなる。

「原則として」とあるので当然例外もある。本頁ではこの例外について考えてみたい。

2000万円の金銭出資を受けた場合を考えてみよう。 この場合、原則として会社の資本金がプラス2000万円となる。 しかしこの例外として、会社法445条2項には「払込み又は給付に係る額(この場合では2000万円)の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができる。」とある。

お恥ずかしいことだが、私は司法書士試験の受験生時代にはこの条文の存在は知っていたが、その趣旨は理解できていなかったのだが、この条文はとても素晴らしいものであり、積極的に活用されてしかるべきであると考える。

どういうことか?

その前に資本金とは何かを考えてみる。資本金とは株主から出資を受けた金額であり、 株主としては「この金で事業を行って、儲けた分を(配当として)くれ!」ということであるのだから、資本金とは「軍資金」=「元手」である。 そしてここからは「会社の計算」と呼ばれる話である。

ここでの「会社の計算」とは超大雑把にいえば、この会社に入ってきた2000万円を貸借対照表上のどこの科目に計上するか、ということと考えてもいいだろう。 結論からいえば、株主から出資を受けた軍資金は資本勘定科目に計上される。

その資本勘定科目は「資本金」、「資本準備金」、「その他資本剰余金」にカテゴライズされる。つまり出資を受けた軍資金2000万円はこの3つの科目のどれかに計上されるということである。

ここで、会社法445条を無視して考えれば、いかようにも計上できる。 例えば、「資本金600万円、資本準備金400万円、その他資本剰余1000万円」でもいいし、「資本金0円、資本準備金1000万円、その他資本剰余金1000万円」でもいいし、「資本金0円、資本準備金0円、その他資本剰余金2000万円」でもいいのである。

話を戻して、「資本金」、「資本準備金」、「その他資本剰余金」とは何がどのように違うのか?であるが、会社の計算に関する本には資本的拘束力の強弱とされている。言い得て妙な気もする一方で正確な表現ではないと思う。この3つの違いについてはまた後日。

会社法445条2項によれば、原則として「資本金2000万円、資本準備金0円、その他資本剰余金0円」とすべきだが、「資本金1500万円、資本準備金500万円、その他資本剰余金0円」としたり、「資本金1000万円、資本準備金1000万円、その他資本剰余金0円」とすることができるというこである。 全額を資本的拘束力の強い資本金に計上してしまうよりも、半分を限度に資本的拘束力が弱い資本準備金に計上する方が、今後の機動的な資本政策(配当や損失処理がしやすいということ)のためには有用だ。 そのうえ、登記の際の登録免許税は今回の増資により増加する資本金の額の0.7%であるから、「資本金2000万円、資本準備金0円、その他資本剰余金0円」の場合であれば2000万円の0.7%=14万円もかかるのに対して、「資本金1000万円、資本準備金1000万円、その他資本剰余金0円」であれば1000万円の0.7%=7万円で済む。クドいようだが資本的拘束力の強弱については後日。

とりあえず登録免許税に差が出るということだけでも押さえて欲しい。 会社に2000万円の現金が入ってきたことには変わりないのに、計上の仕方でこれほど変わってくるのである。

資本金の額は税制上の優遇措置にも関わるので、必要以上に計上することは得策ではないといえよう。

一方で資本金の額は登記記録に記載され、外部から会社を観る場合の唯一の指標である。 資本金100万円の会社と10億円の会社とでは規模や信用が異なってくる。自分の会社を大きく見せたいというのは経営者なら誰しもが思うところだろう。 また、一部の公共事業では一定額以上の資本金であることを入札の参入条件としているところもあるらしい。

本来会社の業績や収益力や将来性は資本金の額のみで判断することではなく、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表をジックリと読んで初めて分かるものである。資本金の額だけで会社を判断することはナンセンスであるが、やはり「外部から会社を観る場合の唯一の指標」なのであろう。 こういった観点からは全額を資本金に計上することにも一理ある。

結局のところ出資を受けた2000万円の全額を資本金に計上するか、1000万円を下限に2000万円よりも少ない額を計上するかは会社の事情次第といったところだが、特に事情がなければ資本金とすべきは1000万円として、1000万円を資本準備金とすべきであろう。