資本金0円会社の可否
2021/11/16 火曜日
減資手続により資本金の額を0円とすることができる。447条2項は「効力発生日の資本金の額を超えてはならん」とあるので、減資の効力発生日直前の直近の額が1000万円であれば1000万円までを減少させることができるのだ。
もっとも、資本金が0円と登記されている会社は100%減資の過程で発生することが多いと思われるが、私は未だ見たことがない。もちろん会社の資本政策によっては100%減資以外でも0円とすることはあるだろう。
これは会社設立後の話である。
一方で、設立時から資本金0円とすることは可能なのだろうか?
設立時の資本金は言うまでもなく株主(となる者)から出資により払い込まれた金額(払込金額)である。
かつては設立費用を払込金額から差し引くとされていたので、会社法施行により最低資本金額制度が廃止され、払込金額<設立費用の場合には資本金0円の設立が可能とされていた。なお、この場合でも資本金がマイナスとなることはできないようだ。
しかし、費用を資本から直接差し引くというのはおかしい!(資本は資本として、費用は費用としてそれぞれ計上すべし、ということだろう)という指摘があったのだろうか、会社法施行後間もなく払込金額から設立費用を差し引くことはできなくなった。
正確には費用を資本から差し引くという規定は残っているのだが、(会社計算規則43条1項3号)設立費用は0円とするという規定ができて、結果的に費用が0円とされたので、払込金額-0円となり、設立費用を差し引くことはないということだ。
何故こんな回りくどい規定の仕方をするのかと首をかしげてしまうのだが、会社計算規則とは得てしてそんなものだ。
法律の世界に身を置いている「法律人」にとっては違和感を感じるところだが、会計の正解に身を置かれている「会計人」の方々には違和感はないのだろうか。
このように設立時の出資が金銭でなされる以上は、費用を差し引くことはできないので資本金0円は不可能ということになる。
金銭出資であれば少なくとも1円以上が出資されるので、「出資額1円-設立費用0円=資本金1円」ということは可能である。いろいろなところでいわれている「設立時から資本金1円会社」はこのような仕組みによって実現できる。
しかし、現実には資本金1円会社というのは見たことがないし、あまりお勧めはできない。
資本金の額は外から見える唯一の会社の指標である。資本金1円という会社と取引をしようとする者はなかなか現れないのではないだろうか。
極端に低い資本金とするのは、設立後のやむを得ない事情で減資をした場合に限るのがよろしいだろう。
出資が金銭以外のもの=現物出資で行われる場合には資本金0円は可能かもしれない。
自動車や有価証券や不動産などの単体の財産の現物出資ではなく、事業そのものの現物出資の場合である。
正確には事業のうち、簿価債務超過の事業を現物出資する場合(会社計算規則43条1項2号イ)である。
A事業とB事業を営んでいる会社が債務超過となっているA事業だけを切り出し、これを新設する会社へ現物出資する場合である。
簿価資産100 簿価負債 600 簿価純資産△500のA事業を現物出資すると(これが共通支配下関係の取引となれば)、会社計算規則43条1項2号イにより簿価(この場合であれば△500)が資本金の額となり、さらに同条4項かっこ書きにより当該額が0円未満であるので資本金の額は0円となるはずである。
この場合は設立当初からその他利益剰余金が△500でスタートすることとなる。文字どおりマイナスからのスタートである。
別に金銭1,000の出資者もいれば、資本金の額は△500+1000=500であろう。
この場合の設立時株式の引受数であるが、本説例は発起設立であるところ、発起人間で合意・同意ができている限りどのような割当でも構わないと解されている(松井信憲「商業登記ハンドブック第3版 67頁)ところ、当該債務超過事業の現物出資者に金銭出資者よりも多くの設立時株式を引き受けさせてもOKのようだ。
ここまで長々と書いてきたが、「新設分割でも同じことできなくね?」と思われるだろう。
まさにそのとおりであり、わざわざ通常の会社設立などしなくとも新設分割で同様なことはできるし、新設分割場合は定款認証の費用もかからない。債務を承継させなければ債権者保護手続も不要となる。
あくまでも組織再編の一環ではない通常の会社設立でなければならない場合の話である。
ということで。
設立時資本金0円会社は簿価債務超過事業の現物出資により可能だが、同様なことは新設分割でも可能であるので、あえて通常の会社設立で行うメリットはあまりないということだ。

