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管轄外本店移転2

2021/11/29 月曜日

管轄外本店移転の続き。

先に紹介した「アナログ方式」「準アナログ方式」「デジタル方式」は登記申請書の記載内容の他に、決定的な違いが1つある。
本店移転と同時に他の申請を申請する、つまり1通の申請書で一緒に申請することができるか否かである。

会社の本店移転は会社の業務拡大、業務縮小がきっかけで行うことが多いであろう。
これにより役員の選任や退任の登記、機関設計の登記、商号の変更登記などを伴うことがあるだろう。
また、会社の本店所在地を代表取締役の自宅としていれば、代表取締役の住所変更登記が必要となる。ここではこれらを「他の登記」と呼ぶこととする。

本店移転と他の登記を別々に行うとすると、まず旧本店所在地を管轄する登記所(旧登記所)に本店移転登記を申請する。旧登記所が申請書を新本店所在地を管轄する登記所(新登記所)に送付し、新登記所が登記を完了させる。その後旧登記所でも登記を完了=登記記録を閉鎖させる。そして他の登記を新登記所に対して申請する。

本店移転と他の登記を一緒に申請することのメリットは、本店移転と他の登記が同時に処理されるので、別々に申請するよりも登記完了が早まる、つまり早く会社の登記事項証明書や印鑑証明書が手に入るということにある。

なお、登録免許税は別々に申請しても一緒にしてもトータルの合計額は変わらない。
司法書士の報酬はどうだろうか?変わらないような報酬体系をとっている司法書士が多いのではないだろうか。

あくまでもすべての登記の完了を早めることが目的である。

さて、この本店移転と他の登記の同時申請は「アナログ方式」「準アナログ方式」「デジタル方式」で、できる・できないがあるのだ。

まず「アナログ方式」であるが、この方式であれば本店移転と他の登記の同時申請は可能である。他の登記を役員の就任とすれば、登記申請書は
登記の目的 本店移転 役員の変更
登記すべき事項 年月日取締役A 就任
        別紙のとおり

と記載し、現に効力を有する事項を書き写す登記用紙には新たに就任した取締役Aをも記載する。これでOK!

これに対して「準アナログ方式」では本店移転と他の登記の同時申請ができないのだ!!

この理由は簡単で、新登記所の登記官が本店移転登記申請直前の登記簿謄本を見ながら、現に効力を有する事項を書き写すからである。この登記簿謄本には新任の取締役Aは記載されていないのだから、新登記所で新たに起こされる登記記録にはAは記載されない。
旧登記所で閉鎖されてしまった登記記録には記載されているのに新登記所の登記記録には記載されていないというおかしなことになってしまうから、このような混乱を防ぐために同時申請が禁じられているのだろう。

この場合は先に旧登記所へ役員変更だけを申請し、登記を完了させてから本店移転の登記を申請するか、先に本店移転を申請し、登記を完了させてから新登記所に役員変更を申請することとなる。よって本店移転後の登記事項証明書や印鑑証明書が手に入るのはだいぶ先になってしまう。

デジタル方式では本店移転と他の登記の同時申請が可能である。
この理由も簡単で、旧登記所の登記官は他の登記だけを先に完了させて、新登記所へ本店移転の申請書を送付し、新登記所の登記官は他の登記が完了した会社の登記記録をパソコンの画面で見ながら新しい登記記録を起こしているのだ。

要するに新登記所の登記官が何を見ながら新しい登記記録を起こすのか、ということである。
アナログ方式であれば、申請人が作成した登記用紙をそのまま登記簿に綴じていた。
準アナログ方式であれば、本店移転が申請される直前の登記事項証明書を見ていた。
デジタル方式では他の登記が完了した後の登記記録をパソコンの画面で見ていた。
ということである。

デジタル方式とは名付けたが、旧登記所で他の登記を先に処理してその登記記録をパソコンの画面で見るのか、印刷した紙で見るのかの違いでしかないので、準アナログ方式であっても旧登記所が完了後の登記記録を印刷して新登記所に送付してあげれば何の問題もなかったはずである。憖っか申請人に登記簿謄本を添付させるからこれに縛られてしまっているのである。
旧登記所から新登記所に申請書を送付する際に参考として登記簿謄本を非公式ではあるもののセットで送付していたであろうから、こういった事実上の取り扱いを制度化すればよかったのに・・・。いや、制度化したのが平成29年からのデジタル方式なのかもしれない。

よく、デジタル方式はIT化が進んだから可能となった、という説明がなされているし、私も同じようなことを述べたが、実は本店移転の登記の処理方法をチョットだけ工夫しただけに過ぎず、登記記録のコンピューター化とは関係ない。仮に登記記録が全て紙だけであっても可能な仕組みだったのだ。実のところデジタル方式という呼び方は適切ではないかもしれない。

話は変わるが、本店移転はデジタル方式以外の方式で申請しても拒否はされないハズである。実際に準アナログ方式時代にあっても、他の登記との同時申請をしたいがために、アナログ方式によって申請をしていたケースはあるようだ。新株予約権などを含め膨大な登記事項から現に効力を有する事項だけを一生懸命に抜き出していたのだろう。一文字でも写し漏らせば却下だし、見過ごされて登記が受理されれば後日更正登記だろう。リスクの高い登記申請だ。

現在ではこのようないばらの道を避けて、デジタル方式で申請すればOKだ!
あらためて考えると本店移転の登記は簡易になったということだ。