お知らせNews

1人遺産分割協議1

2021/12/21 火曜日

1人遺産分割協議ということがある。 遺産分割協議とは相続人が複数いる場合に、被相続人の遺産をどのように分けるのかを決める話し合いである。 これを相続人が1人しかいない場合にも行うことができるのか、ということである。 そもそも相続人が1人しかいなければ相続放棄でもしない限り、その者が一切合切の相続財産を承継するハズであり、協議などをして遺産をどのように分けるのかを決める必要はないのではないだろうかという疑問が起きる。 これは次のような場合に実益がある。 被相続人A、相続人は配偶者のB、ABの子であるCという場合で考えてみる。 要するに一人っ子家庭で両親の一方が死亡した場合である。 Aが死亡した直後にBとCが遺産分割協議を行って、亡A名義の不動産の承継者を決めて登記申請をしておけば何の問題もない。 問題となるのは、A死亡後に遺産分割協議をしないままBが死亡してしまった場合である。 本来であれば登記申請は2件行う。(価格を5千万円と仮定した場合) 1件目 登記の目的 所有権移転 登記原因  年月日(A死亡日) 相続 相続人   1/2 亡B 1/2 C 添付書類  省略 登録免許税 20万円 2件目 登記の目的 B持分全部移転 登記原因  年月日(B死亡日) 相続 相続人   1/2 C 添付書類  省略 登録免許税 10万円 仮に相続人がもう1人いれば、Bの死亡後にその者とCが遺産分割協議を行うことができる。先にご紹介した遺産分割協議当事者適格の承継理論だ。これにより1件の登記申請でAから直接C名義の所有権移転登記申請が可能となる。 2件目に支払う10万円の登録免許税は省略できる。 遺産分割協議とはまさに話し合いであり、話し合う相手がいてはじめて成立するのである。 いくら遺産分割協議当事者適格を承継したとしても話し合う相手がいない=相続人が1人ということが問題の本質である。 かつては1人遺産分割協議は可能と解されていた。 この場合、Cは「Aの相続人C」という人格と「Aの相続人Bからその相続人としての地位を承継したC」という人格の2つがたまたま1人の人間に同居しているだけであり、この2つの人格が1人の人間の中で協議を行っているから相続人が1人でも遺産分割協議が可能という理論だ。遺産分割決定などとも呼ばれていたようだ。 よく考えたものだと感心してしまうが、なかなか無理がある理論でもあるような気もする。 聞いたところによると、この理論を司法書士会が激オシして法務局にねじ込んだ、という噂もあるほどだ。 相続人が複数いれば1件の申請で行うことができるのに、たまたま1人しかいないと2件に分けて行う必要があるというのは不公平だ!ということがその実質的根拠であろう。 確かに、登録免許税は余計に負担しなければならないし、価格が高ければ相続税の負担も深刻だろう。これは申請人としては深刻な問題である。 ところが、登記研究という登記実務に関する雑誌に上記のようなケースでは、B及びCとの間でなされた遺産分割協議書の提供がなければAから直接Cへの相続を原因とする所有権移転登記はできないという見解が示された。遺産分割協議書の提供ができなければ、まずAから亡B・Cへの登記申請を行い、次いで亡BからCへの持分移転登記申請を行うべし、ということだ。 登記研究は当局の公式見解ではないが実務に多大な影響を及ぼす文献であり、実務の世界では大きな衝撃であった。登記研究第758号(平成23年4月号)である。 この登記研究の前後にC作成の「遺産処分決定書」だが「遺産分割協議書」を提供してAから直接Cへの相続を原因とする所有権移転登記申請を却下し、この法務局の却下処分を是認した裁判例があったのだ。 いずれも1人しかいないのであれば協議もへったくれもあるか!協議などする余地はなかろう!というものだろう。法務局は永年この1人遺産分割協議には疑問に思っていたようである。司法書士会にねじ込まれたことを苦々しく思っていたのかもしれない。 これにより、1人遺産分割協議は完全に息の根を絶たれと思われた。 しかし、1人遺産分割協議には続きがある。これは長くなるので後日。