一人遺産分割協議3
2021/12/26 日曜日
一人遺産分割協議もとい遺産分割の自己証明についての残された問題について考えてみたい。大きく分けて2つの問題があるが、いずれも過去になされたという遺産分割協議を適切に証明できるのか?ということである。
1つは当事者のなかに遺産分割協議に参加することができない相続人がいた場合である。
具体例で考えてみる。
父A、母B、子C及びDという4人家族でAが登記名義人となっている不動産がある。
令和元年にAが死亡してしまった。その後令和2年にDが死亡し、令和3年にBも死亡してしまい、残っているのはCだけで今に至る。
Cの弟Dは死亡当時17歳の未成年者であった。
未成年者とその親権者である親が共同相続人の場合、民法826条により家庭裁判所に対して特別代理人の選任が必要となる。
Aの死亡後にB、C、Dで遺産分割協議をしたのであれば、本来は特別代理人の選任が必要なハズである。
唯一生存しているCがこの遺産分割協議がなされたことを証明する際には、少なくともDのために特別代理人の選任がなされた上での遺産分割協議であったことを証明しなければならないのではないだろうか。登記原因証明情報の一部として特別代理人の選任審判書の添付を求められるかもしれない。
登記名義人の死亡後に残された相続人間で「不動産の相続はどうしようか?」といったことぐらいの話がなされているようなことはよくあるのではないかとはしたが、果たして特別代理人の選任までしているだろうか。おそらくはしていないことが多いのではないだろうか。そうであれば有効な遺産分割協議とはいえず、結局過去に遺産分割協議はなされていなかったということになり、Cは遺産分割協議がなされたことを証明できないということとなる。
Dが成年ではあるが、事理弁識能力がない状態であった場合も同様に、Dのために成年後見人等が選任されていなければ有効な遺産分割協議とはいえないはずである。もっとも登記申請の時点でDが生前に事理弁識能力がない状態であったことは戸籍の記載からはうかがい知れないが。
このように過去に行われたとされる遺産分割協議に参加することができない相続人がいたような場合が問題の一つ目である。
もっとも、この場合はDの死亡後にBとCとで遺産分割協議が行われていたのであれば問題はない。
2つめは証明主体である。
自己証明を第三者が行うことができるのかということである。
現在Cには成年後見人が選任されているような場合を考えてみよう。
A死亡後、遺産分割協議がなされるまでは事理弁識能力は問題なかったのだが、その後事理弁識能力が急速に衰えてしまったような場合である。
Cのために選任された成年後見人は自身が就任する前に行われたとされる遺産分割協議の内容を証明できるのだろうか?
自己証明と言えば、特別受益証明も同じような問題があるが、成年後見人が証明できるのかについては明確ではないものの、否定的な見解が多いような気がするが・・・。
やはり原則として第三者が証明することはできないと考えるべきであり、例外的によっぽど客観的な資料等が存在する場合に限り証明できると考えるべきであろう。
Cが破産していた場合には破産管財人が、行方不明の場合には不在者財産管理人が選任されている場合にも同様な問題が考えられるだろう。
このように相続人が一人の場合でも過去になされた遺産分割協議の内容を証明することにより、被相続人から直接生存相続人へ所有権移転登記が可能となるといっても、万能ではない。

