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種類株式2

2021/12/31 金曜日

種類株式ランク付けの続き。

4 取得請求権付株式
株主が保有しているその株式を会社に引き取ってもらうことができる。対価はなんでもあり。イニシアティブは株主にある。

①使い方
対価を金銭とすれば、株主はいつでも会社に対して保有する株式を買い取ってもらえるので、投下資本の回収が可能となり、ちょっとリスクのある会社への出資もしやすくなる。
対価をその会社が発行する他の株式とすれば、旧商法下の転換株式と同じことができる。

②有用度
有用性はほぼないと考える。
投下資本の回収は、取得請求権付株式でなくとも可能である。公開株式はもちろん、譲渡制限株式であっても譲渡承認請求→譲渡不承認→指定買取人または会社による買取りで事足りてしまう。
そもそも出資をしてもらったのにそれをいつでも払い戻せるというのは会社にとって自爆行為に等しい。
出資してもらった翌日に取得請求がなされてしまっては何の意味もない。(このような事態を避けるために取得請求できる時期等に条件を付すのだろうが。)
転換株式にしても実際はどれほど採用されていたのだろうか。キャピタルゲインだけが目的の投資家にとっては転換株式など興味ないし、株主数が少ない会社では種類株式相互間の交換にはあまり意味がないだろう。
よって、有用度はランクCである。

5 取得条項付株式
会社が株主から強制的にその保有する株式を強制的に召し上げることができる。対価はこれもなんでもあり。イニシアティブは会社にある。

①使い方
期間限定の事業のために出資を募り、当該事業が終了したときに対価を支払って株式を回収するような場合に用いる。残余財産の分配の優先株式の部分的な使い方である。
少数株主のキャッシュアウトのために用いることもできそうだ。キャッシュアウトとは金を渡して会社から出て行ってもらうことである。円滑な事業承継にとっては欠かせない。

②有用度
期間限定の事業の閉じ方としては使えるかもしれない。ただし、事後的に定めるには全ての種類株主の同意が必要なので、事後的に取得条項付株式とすることは事実上不可能である。これが可能であれば取得条項付株式などを定めずとも、個々の株主から相対で譲渡を受ければ足りるハズである。
事後的に設定することはかなりの無理ゲーなので、キャッシュアウトの方法には使えない。全ての株主の同意を得ることが可能ならもっと穏便にキャッシュアウトすればいい。取得条項付株式などに頼る必要など微塵もない。そもそも存在意義がないのである。
キャッシュアウトが目的であれば次の全部取得条項付種類株式が使える。
よって、有用度はランクCである。

取得請求権付株式にしても取得条項付株式にしても実務界の需要から生まれたものではなく、旧商法下に乱立していた様々な種類の株式の特徴を整理したところ、取得、交換、転換、償還など様々な表現ではあったがその違いは、
「株主が引き取りを請求し、その代わりに金銭を交付する、他の株式を交付する、これ以外の財産を交付するもの」と、「会社が召し上げて、その代わりに金銭を交付する、他の株式を交付する、これ以外の財産を交付する」
でしかなかった。前者を取得請求権付株式、後者を取得条項付株式としたにすぎない。

6 全部取得条項付種類株式
会社が株主から強制的にその保有する株式を召し上げることができる。対価はこれもなんでもあり。イニシアティブは会社にある。
これでは取得条項付株式と何も変わらんではないかと思われるが、設定方法に大きな差がある。いずれもはじめて設定する際は株主総会特別決議でOK。つまり3分の2以上の多数派の賛同があればいいのだ。
問題は既存の、既に発行済の株式を取得条項付株式とする場合と全部取得条項付種類株式とする場合に違いがある。
前者は全ての株主の同意が必要なので少数派、極論すればたった1株しか持っていない株主が反対すれば不可だが、後者は株主総会特別決議でOKなので、多数派さえ賛同すれば少数派は無視していいのだ。最も少数派には金銭を交付するなどの少数派の保護が欠かせないのだが、少数派を無視できるというのはデカい。

①使い方
全ての株式を召し上げる必要がある100%減資を行う場合や少数派の株主を閉め出す場合には、取得条項付株式は全て株主の同意が必要なことから事実上使えないが、全部取得条項付種類株式であれば多数派の賛同だけでOKなので、全ての株式を召し上げることが
実現が可能となる。

②有用度
平成26年の改正により株式併合でもキャッシュアウトはできるようになったが、それ以前はキャッシュアウトの最終手段であった。また100%減資では全ての株主の同意を得て行うことができないのであれば全部取得条項付種類株式を用いるしかなく、有用度は高いので、ランクAである。

取得条項付株式は実務界の需要から生まれたものではなく、理論の整理の結果誕生したものであるが、事後的に用いる場合には全ての株主の同意を必要とすることから使い勝手が悪い。そこで実用性が高いものとして実務界からの要請により誕生したのが全部取得条項付種類株式である。

しかし、多数派(多くの場合は現経営者)の意向だけで少数派(多くの場合は経営に口出しをする現経営者からしてみれば目の上のたんこぶのような株主)を追い出せるというのは中小企業における円滑な事業承継に資するかもしれないが、やはり問題があるといわざるを得ない制度である。なぜなら多数決の原理といえば聞こえはいいが、その実態は「数の暴力」に他ならないのである。

本来全ての株式を召し上げるのであれば、全ての株主の同意を得るべきであり、これが取得条項付株式である、とういのが会社法の理念だし会社法の学者先生の説くところである。
しかし、全ての株主の同意があれば何でもできてしまうのであるから、わざわざ取得条項付株式などに頼る必要性がない。
そのため、全ての株主の同意を必要とせずに全ての株式を召し上げることができる全部取得条項付種類株式が種類株式の中にねじ込まれたそうだ。
法の理念と実務界からの要請が対立し、後者が勝ったようだ。

数の暴力で少数派を閉め出すというのが本質であるから、多数派と少数派の対立が激化するおそれもある。有用度は極めて高いが、利用の際は慎重に行うべきであろう。

長くなってしまったので、続きはまた後日。