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種類株式の登記

2022/1/21 金曜日

種類株式を初めて発行するときは、まず発行予定の種類株式を定めることとなる。
仮に「優先株式」を新たに定めることとする。
ちなみに種類株式を定める際にはどんな名称をつけてもいいのだ。「優先株式、普通株式」、「A種類株式、B種類株式」、「甲種類株式、乙種類株式」、「第1種種類株式、第2種種類株式」などが一般的であるが、これに限ることではない。会社が自由に名称を決めていいのだ。取得請求権株式や全部取得条項付種類株式など会社法が定めている名称をそのまま付すことも考えられる。ただし、定款のみならず登記もされて不特定多数の人の目にさらされることもあるので、あまり奇をてらったような名称は避けるべきである。こんなことでは投資してくれる人が去ってしまう。

種類株式発行会社とは2種類以上の株式を発行する会社なので、「優先株式」の他にもう1種類の株式を定めなければならないということだ

つまり定款の記載は、

第●条 当会社は次の内容の種類株式を発行することができる。
    優先株式 10000株

だけではダメなのだ。

第●条 当会社は次の内容の種類株式を発行することができる。
    優先株式   10000株
    普通株式    6000株    ※もう1つの種類を定める必要がある

まぁ、ダメとした定め方でも他方の種類株式は当然、「優先株式ではない株式」であると善解する余地はなくはなさそうだが・・・。

登記記録はこんな感じ。

発行可能株式総数  2万株

発行済株式の総数並びに種類及び数 発行済株式の総数 2000株

資本金の額 金5000万円

発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容
普通株式      6000株
優先株式     10000株
1.優先株式は、・・・
令和3年4月1日変更 令和3年4月2日登記

さて、ここで1つの問題が起きる。
この会社が種類株式発行会社となる前、単一株式発行会社のときに発行された既存の株式2000株はどうなるのだろうか?

この状態では優先株式を発行することができる旨を定めたにすぎず、優先株式を発行している状態ではない。既発行の2000株は「普通株式」であるらしい(種類株式・種類株主総会の登記実務 48頁)
「発行済株式の総数」の項目の登記内容が変化していないこと、「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」の項目から、令和3年4月1日から従前の株式を普通株式と名付け、種類株式として優先株式を発行することができるようになったと読み取れるらしい。(募集株式と種類株式の実務 114頁)

この見解にはやや疑問がある。既発行の株式は優先株式ではないのはいいとして、何の手続もなく「普通株式」と扱っていいのだろうか?
少なくとも種類株式の定めを決議する際に、「既存の株式は普通株式だぞ」という決議も必要なんではないだろうかと疑問を感じてしまう。
しかし、この見解は確定的なものであるのでこれ以上独自すぎる持論の展開は差し控えることとする。

だから、単一株式発行会社が種類株式発行会社への変更登記では「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」だけを登記し、「発行済株式の総数ならびに種類及び数」は登記しないのだろう。
登記申請書記載事項はこうなる

登記の事由  発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容の設定
登記すべき事項
「発行可能種類株式総数及び発行する各種類の株式の内容」
普通株式 6000株    
優先株式 10000株
優先株式
1.優先株式は、・・・
「変更年月日」令和3年4月1日

もっとも、この場合にあえて以下の様な事項をも申請しても受理されるのではないだろうかとされている。(募集株式と種類株式の実務 114頁)

「各種の株式の数」普通株式2000株

ややこしくなるのは、次のような場合である。

種類株式会社への変更の際にA種類株式(優先株式)、B種類株式(取得請求権付株式)、C種類株式(役員選任)を発行できると定めた場合に、既発行株式はいずれに属するのだろうか?
要するに3以上の種類株式を発行することができるように定めたのだが、それぞれの内容が分かりにくく、譲渡制限は別として会社法で定める通常の内容の株式がどれだか分からないような場合である
前掲の「募集株式と種類株式の実務 116頁」にはA種類株式、B種類株式、C種類株式を定めたはいいものの、B種類株式とC種類株式の内容だけ詳細に定めているような場合を紹介している。

この場合はもう1種の何の特徴もない種類株式(普通株式=D種類株式)をも定めなければならないのだろうか?
それともこの場合は「その設定により種類株式発行会社となった場合には既発行の株式がいずれの種類株式に属するかを公示するために「発行済株式の総数並び種類及び数」をも登記する必要がある」のだろうか?

上記のように既存の株式が「会社法で定める通常の内容の株式」であると扱うのであるから、「普通株式という名称を使うべきであり、このような定め方をするべきではない」と著者の金子登志雄先生も匙を投げられている。

そうでなければ「その設定により種類株式発行会社となった場合には既発行の株式がいずれの種類株式に属するかを公示するために「発行済株式の総数並び種類及び数」をも登記する(株式会社の登記全実務 395頁)」べきなのだろう

参考文献
田口真一郎・黒川龍・小野目人久「株式会社の登記全実務(清文社)」
金子登志雄・富田太郎「募集株式と種類株式の実務(中央経済社)」