株式併合2
2022/1/27 木曜日
株式併合の続き
しかし、株式併合がやりやすくなったのかといえばそうではない。従前の規律に後から少数株主の保護が規定されたので、全体の規律、手続の流れがとてもわかりにくくなってきている。この頁では手続の流れを整理して、なるべく省エネかつ平和的な株式併合の方法を検討してみたい。
まずわかりにくいのが1株に満たない端数処理と反対株主の買取請求である。端数処理は株式併合や株式分割により1株に満たない端数を各株主から集めて合算して売却することである。株式買取請求は株式併合に反対する株主のうち、株式併合により1株に満たないこととなる株式を会社に買い取らせるものである。
次の例で考えてみる。株主A5株、株主B5株、株主C3株、株主D1株という会社において2株を1株にする株式併合を行う。反対しているのは株主Aである。
株式併合により株主Aは2,5株となってしまうのだが、条文上は0.5株が買取の対象となるのではなく、0.5株となる1株が買取の対象となる。株式併合前の株数なのか株式併合後の株数なのかの違いでしかなく、経済価値に変わりはない。説明等の際に注意して、誤解を招かないようにしたいところだ。かくして株主Aからは1株を買い取り、以後は2株保有の株主となってもらう。
残りの株主B、株主C、株主Dは2.5株、1.5株、0.5株となる。端数処理は各株主の端数を合計するので0.5株+0.5株+0.5株=1.5株(株主Aから買い取るものはなし)とし、この段階で1株未満を切り捨てて1.0株としてこれを競売または裁判所の許可を得て任意売却する。かくして株主A2株、株主B2株、株主C1株、株主Dはキャッシュアウトとなる。もちろん、会社は事前開示事項として所定の事項を記載した書面等を準備しておかなければならないし、全ての株主に株式併合差止請求が可能であるから、差止請求への対応やリスクも覚悟しておく必要がある。
差止請求は株式併合が法令または定款に違反し、株主が不利益を被るおそれがある場合に可能なので、株主が不利益を被ることがあっても法令・定款違反がなければ問題ないであろう。このため法令遵守はもちろん、自社の定款の記載内容を事前に点検しておくべきであろう。古くからある会社で定款が会社法に準拠していない場合には事前に改正しておくべきであろう。株主総会の招集手続に手抜かりがあってはならない。
ここで注意しなければならないのは端数処理の売却方法だが、条文上は競売または裁判所の許可を得て任意売却とされているが、非上場株式は競売に付しても買い手は見つからないであろうから、裁判所の許可を得て任意売却するのが一般的であろう。実際は会社や代表者が買い手になることが多いだろう。
裁判所へ許可を求める際には株価の算定根拠となる査定書などの提出を求められるハズであり、これらを準備するのはとても面倒である。これを避けるためには事前に大株主(たいていの場合は経営者であろう)が各株主に対して1株ずつ無償で譲渡するなどして各株主の持株数を偶数にしておくことが考えられる。これにより端数処理の必要は生じない。これを「事前調整」と呼ぶことにする。もちろん造語だ。
反対株主からの買取りは裁判所を介さずに会社と少数株主の相対取引で可能だが、株式併合に反対する株主との協議で買い取り価格を決めることは困難であろうから、当事者の協議で決まらなければ裁判所に価格決定の申立をすることとなる。会社、株主の意見陳述のための審問期日が開かれるので、ここで会社VS少数株主のお家騒動第2ラウンドとなるかもしれない。これを避けるためには、少数株主に対して事前に十分に説明をし、満足の得られる買取価格を提示することであろう。結局のところ株式併合の限らずキャッシュアウトは一方的に進めるのではなく少数株主の理解を得てから進めるべきであろう。少数株主から理解が得られるのであって、会社の資金(剰余金)に余裕があるのであれば、各株主から全ての株式を買い取る契約を締結すれば、それが一番の円満解決である。
端数処理の際の裁判所の許可を得て行う任意売却と反対株主の買取請求における裁判所への価格決定の申立を比較すると、前者は一応会社と株主の対立はないことが前提となっているが、後者は対立が存在している。
前者の手続は株価の査定書その他裁判所が要求する資料を揃えるだけだろうが、非上場会社の株価の査定は専門家に依頼することとなるだろうから簡単なことではない。一方で後者の手続では裁判所が少数株主の意見を聴いたりもするだろうし、その過程で会社、少数株主からあることないことが飛び交い、裁判所を舞台にお家騒動第2ラウンドが展開されることになるかもしれない。どちらもイバラの道であるが資料さえ準備すればいいのだから端数処理の方がまだマシということかもしれない。
つまり何としても反対株主の買取請求を避けることを最優先課題として、その上で端数が生じないように事前調整を試みて、これが可能であれば躊躇なく実施して、どうしても無理ということであれば端数処理の準備を覚悟するしかない。
反対株主の買取請求を避けるためには少数株主に十分に説明をして、理解を得るしかない。しかし、少数株主の理解を得ることができない場合には単元株制度を導入するという裏ワザがある。単元株制度を導入していてかつ、株式併合割合を単元株数に乗じても単元株数に1未満が生じない場合には少数株主の保護(事前開示、差止請求、反対株主の買取請求)を回避できるのだ。単元株数が100株と設定されている会社で5株を1株にする株式併合(この場合の併合割合は0.2)では100×0.2=20.0となるので、単元株数に1株未満が生じないため、少数株主の保護を実施する必要がない。本頁ではこの手法を「単元株回避」と呼ぶことにするにする。もちろん造語だ。
単元株制度を導入した時点で単元未満株式は買取請求により保護が図られているので、株式併合の時にあらためて少数株主の保護は不要ということだろう。逆に単元株数に併合割合を乗じて単元株数に1未満が生じる場合には少数株主への影響が大きいということであろう。つまり株式併合を行う前までに併合割合を乗じても1未満が生じないような単元株数を設定しておけば、少数株主の保護を省略できるのだ。
株式併合を決議する株主総会と同じ株主総会で決議することもできるようだ。
例 1号議案 単元株式数の設定の件
2号議案 株式併合の件 ※効力発生日を同日とする
そして、3号議案で「単元株式数の廃止の件」の3つを決議することもできるそうだ。
キャッシュアウトが目的ではない株式併合であれば単元株数を併合割合に応じて変更することもある。
このように一瞬だけ単元株式導入会社となり、「単元株回避」をする。この場合、株主総会終了後は単元株制度導入会社ではないので、単元未満株式の買取請求はあり得ない。 株式併合の効力発生時点では単元株式導入会社なので少数株主の保護は不要である。1株に満たない端数が生じた場合には端数処理をすればいいだけである。
この「単元株回避」は金子先生が提唱されたようであり、以下の金子先生の本も参考にしてほしい。
単元株式の設定と廃止は登記事項であるからその旨の登記申請も必要となるので費用対効果次第だが、検討に値する方法かもしれない。
参考文献
田口真一郎・黒川龍・小野目人久「株式会社の登記全実務(清文社)」
金子登志雄「平成27年施行改正会社法と商業登記の最新実務論点(中央経済社)」

