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取締役の欠格事由9

2022/4/06 水曜日

大長編となってしまった令和元年会社法改正による成年被後見人等の取締役就任の可否・手続の締めである。
この頁はいわゆる司法書士倫理のハナシである。司法書士以外の方はつまらないかもしれない。

成年後見人に就任している司法書士が成年被後見人が取締役に就任する旨の役員変更登記を受任することができるか否か、ということである。
次の2つの前提を抑えておこう。
①成年被後見人に登記手続が必要となったときに、成年後見人である司法書士は成年被後見人から登記手続の委任を受けることはできない。
②成年後見監督人である司法書士は、その監督対象である成年後見人から登記手続の委任を受けることはできない。

①はいわゆる利益相反の問題である。委任するのも受任するのも同一人であるため、報酬その他の委任契約条件を好き勝手に決めることができてしまうことが危惧される。
②は監督者がその対象者から金品を受領するようなことがあるとその監督がユルくなってしまい、結果として公正妥当な監督が期待できなくなるおそれがあることが危惧される。

いずれの場合も金額の多寡や価格の妥当性は関係ない。それでは具体例で考えてみよう。

(1)株式会社甲の取締役であるAは成年後見開始の審判を受け、司法書士であるBが成年後見人に選任された。BはAの取締役の資格喪失による退任の登記や再度の就任の登記申請を受任して報酬を得ることはできるだろうか。

この場合の委任者は成年被後見人Aではなく、株式会社甲である。委任者と受任者は同一人ではない。①の問題はクリアである。
②についてはBはAや株式会社Xを監督する立場ではない。むしろ家族以外の第三者が務めている成年後見人は成年被後見人や家族、その関係者から常に監視されているともいうべきである。株式会社Xから報酬を受領することは問題がないので②の問題もクリアである。
よって成年後見人である司法書士BはAについての取締役の変更登記を株式会社Xから受任して報酬を得ることは問題はないと考えられる。
ただしAが株式会社Xの株式の全部を保有しているなど株式会社と同一視できるような場合には、Aから報酬を受領していると評価される可能性があるので要注意だ。

利益相反の問題は一般的には形式的な判断基準でなされるハズだが、成年後見の実務や司法書士倫理の世界では実質的な判断がなされることがある。つまり、「あの司法書士は利益相反っぽいことをやっているぞ!」とマイナス評価される。成年後見人の解任は免れても、厳重注意はあるかもしれない。もしかすると辞任勧告があるかもしれないし、以後は新たに成年後見人に選任されることはないだろうし、成年後見監督人が追加で選任されるかもしれない。懲戒処分は免れても司法書士会からの注意勧告はあるかもしれない。

(2)株式会社甲の取締役であるAは成年後見開始の審判を受け、その子であるBが成年後見人に選任され、司法書士であるCが成年後見監督人に選任された。CはAの取締役の資格喪失による退任の登記や再度の就任の登記申請を受任して報酬を得ることはできるだろうか。

この場合の委任者は成年被後見人Aや成年後見人Bではなく、株式会社甲である。委任者と受任者は同一人ではない。①の問題はクリアである。
Cが監督すべきはBであり、Bから報酬を受領することではないので②の問題もクリアである。
よって成年後見人である司法書士CはAの取締役の変更登記を株式会社Xから受任して報酬を得ることは問題はないと考えられる。
ただしこの場合も実質的な判断がなされるとハナシは違ってくる。Bが株式会社Xの代表権を有するなどにより、Cとの委任契約締結、報酬額の決定を事実上行っていると評価できる場合にはBからCへ金品が授受されていると評価されてしまうこともあるので、要注意だ。

最後は司法書士向けの話になってしまったので、司法書士以外の方からすればちんぷんかんぷんだったかもしれないので、申し訳ない。これを結びとして、この大長編となってしまったシリーズを完結させる。