添付書類としての定款
2022/4/11 月曜日
定款とは会社の根本規則である。どんな会社でも社内自治としてたくさんの規則(社則など)があるであろう。就業規則などがその例である。このほかにも成文化されていないものもあるだろう。
定款は会社法で作成が義務づけられている、というか定款を作成しないと会社を創ることができないので、会社設立時には必ず作成されているはずである。「当社には定款なんてあったけ?」という会社は大至急司法書士に相談すべきである。最初から存在していないのではなく、作成はしたがいつの間にか消失または紛失したハズであるので、設立からの会社の経緯や登記記録の内容に矛盾がないように再現することとなるだろう。
さて、こんな定款だがこれが登記申請の添付書類となることがある。
会社法29条に「株式会社の定款には・・・この法律の規定に反しないものを記載し、または記録することができる。(一部抜粋)」とある。会社法の規定がデフォルトだが、会社がこれと異なる運用をしたいときには定款に定めると、この定款の定めが優先される。例えば役員の任期は原則として2年だが、非公開会社では定款に当社の役員の任期は10年である旨の定めをおけばこれが優先して、役員の任期は10年間とすることができる。10年に限らず8年でも6年でも3年でも極端なものでは1年でもOKだ。
この会社法29条を受けて商業登記法61条1項は「定款の定めがなければ登記すべき事項につき無効又は取消しの原因が存することとなる申請については、申請書に、定款を添付しなければならない。(一部抜粋)」と規定されている。
要するに会社法の規律とは異なる定款の定めが存在している会社が、当該定款規定を前提・拠り所とした会社登記申請をする場合には当該定款規定の存在を証明しなければならないということだ。
定款を添付するということは、定款を印刷したものを法務局に提出するということになる。
従来は末尾に「これは当社の定款やで!」と記載して登記所届出印を押印する。要するに代表取締役が申請会社の定款であることを証明するのだ。押印については例の印鑑不要通達の煽りにより押印はしなくても問題ないようだが。
商業登記法61条が適用される場合には定款を添付することが原則なのだが、添付を省略できる場合もある。この例外の方が多く見られるので、原則と例外がごっちゃになっている感があるので、これを整理することがこの頁の目的である。
添付が省略できる場合とは、定款を印刷したもの以外でも特定の定款規定の存在を証明できる場合である。具体例で見てみよう。
取締役会設置会社においても定款で定めることにより株主総会で代表取締役を選定することができる。会社法では取締役会で選定することがデフォなのだが、定款で定めることにより例外的に株主総会で選定できるのである。この定款規定に基づき株主総会で代表取締役を選定した場合の登記申請には株主総会議事録、就任承諾書(&印鑑証明書)の他に定款を添付する。これが原則だ。
しかし、株主総会で当該定款規定を定めた直後に代表取締役を選定した場合には、定款の添付が省略できる。
1号議案で「定款変更」を決議し、代表取締役を株主総会で選定できる旨を規定する。
次いで1号議案による定款変更を受けて2号議案で「代表取締役を選定」するような場合である。この場合には代表取締役を株主総会で選定することができる定款規定の存在は株主総会議事録で「直接」証明できるので、敢えて定款を添付する必要はないということだ。
「直接」としたことがミソである。これが例外だ。
それでは、以前の株主総会で定款変更を決議し、代表取締役を株主総会で選定できる旨を規定した会社が今回の株主総会で代表取締役を選定する場合には、当該株主総会議事録では定款規定の存在を証明できないため原則どおり別途定款の添付が必要となるのだが、株主総会議事録に「当社の定款には株主総会決議で代表取締役を選定することができる旨の規定があるので、これに基づき本株主総会で代表取締役を選定するぞ」との記載がある場合はどうだろうか。残念ながらこれは定款規定の存在を「直接」証明できていないと評価されるので、原則どおり別途定款の添付が必要となるのだ。もちろん前回の株主総会の議事録の添付でもOKだ。
しかし、例外の例外がある。役員の任期満了による退任登記である。
ほとんどの会社で役員の任期は定款で「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。」と規定している。この規定では「取締役の任期は○年である」ということと、「定時総会であること、即ち決算月がいつか」という2つのことがポイントである。ということは役員の任期満了による退任登記申請では、定時株主総会が開催され終結したことを証するための「株主総会議事録」と、この2つのポイントについての定款規定の存在を証するための「定款」の添付が必要ということになりそうである。
ところが役員の任期に限り、株主総会議事録に任期満了である旨を記載するだけで、別途定款を添付しなくてもOKなのだ。昭和53年9月18日民四5003号通知である。
これは定款規定の存在を間接的にしか証明していないと評価できそうだが、これは役員の任期満了退任という定型的かつ大量にある登記申請でイチイチ定款を添付するのであれば申請人も受理する法務局も面倒であろうとの配慮によるものだろう。
商業登記規則61条1項が適用される場合の定款添付の要否を整理すると、原則として定款を添付しなければならないのだが、例外として定款規定の存在を直接的に証明できるのであれば添付が不要となる。さらに例外の例外として役員の任期満了退任の場合に限り、間接的な証明でも足りるということになる。
実務では例外の例外が圧倒的に多いため、原則、例外、例外の例外が混同していて、例外の例外が原則であるかのように思われている節があるので、要注意だ。
もっとも、役員の任期満了退任の場合は商業登記規則61条1項の問題ではなく、商業登記法54条4項(退任を証する添付書類)の問題であるから、定款そのものの添付が求められていないという見解もある。理論上はこちらの方が正しいのかもしれない。しかし、「原則」と「例外」と「例外の例外」と構成した方が理解しやすいと思われるので、こちらをおススめする。

