社外取締役2
2022/4/27 水曜日
コーポレートガバナンスの観点から大企業では設置が義務付けられている社外取締役であるが、その人材確保が難しいようだ。社外取締役は外様役員であり、元も子もない言い方をしてしまえば「門外漢」である。だがしかし、誰でも彼でもいいということではない。どこの馬の骨かもわからん輩を連れてきて、社外取締役とすることは会社法上は可能ではあるが、事実上あり得ない。大企業のメンツに関わることだし、何よりもこんな輩では社外取締役の任を果たせるハズがない。
設置が義務付けられているものの人材確保が難しい社外取締役をなんとかして、時には無理矢理にでも、ヒドいときは脱法的にでも設置したい会社側とそうはさせまいとする会社法のせめぎ合いから、社外取締役の要件を検討してみるのがこの頁の目的である。このあたりの事情や背景を念頭に読んで頂きたい。
社外取締役の要件とは大雑把にいえば「生え抜き感がない」ということに尽きるのだが、会社法上はいずれも「~でないこと」と規定されている。
要件1
会社又はその子会社の業務執行取締役等(業務執行取締役、執行役、支配人、使用人)でなく、かつ、その就任の前10年間会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
何とも分かりにくい規定ではあるが、ここで音を上げるようであるとこの次の要件2などは到底理解できなくなってしまう・・・。
この要件は「外様とはこういったものだ」ということである。
今度の株主総会で社外取締役を選任しようとする場合を念頭に置く。なお詳細は別の頁に譲るが、社外取締役を選任するというのは些か適切な表現ではない。取締役として選任した人物がたまたま社外取締役の要件を備えていたということである。
外様というには現時点で「業務執行取締役=生え抜き」であってはならないということはいうまでもない。生え抜きを社外取締役としてもそれでは「外部の目」とは言えないのである。
役員のみならず従業員でも生え抜き感は否めないのであり、社外取締役のなり手不足から従業員を社外取締役とすることはできないのである。支配人、使用人とは従業員のことである。社員とか呼ばれているいわゆる労働者である。
それでは現在の役員や従業員を一旦退任・退職させれば、とりあえず現在の業務執行取締役や従業員ではないので、この者を社外取締役とすることができるのか、といえばそうは問屋が卸さないのである。後段のいわゆる10年要件や過去要件といわれる要件がある。退任・退職したばかりでは生え抜き感は消えないのであり、10年以上が経過しないと生え抜き感は消えない。意外と長い。生え抜き感はなかなか消えないのである。立法段階では一生消えないとする案もあったようだ。
ということは、現在や過去に業務執行取締役でも従業員でもない者であればOKということだろうか。それならば社内の人間でも監査役がいるではないか!監査役を退任してもらって社外取締役とすればいいではないか、と考える人もいるであろう。しかしこれも簡単な話ではない。それが次の要件2である。
要件2
その就任の前10年内のいずれかの時において会社又はその子会社の非業務執行取締役、会計参与又は監査役であった者にあっては、当該非業務執行取締役、会計参与又は監査役への就任の前10年間会社又はその子会社の業務執行取締役等であったことがないこと
もはや日本語であって日本語ではない・・・。これを一発で理解できる人の頭脳は素晴らしい!
この要件は社外取締役となる者の経歴要件といわれるものである。
過去や現在に業務執行取締役でなかった者であれば、社外取締役の要件を充たしているか?要件1のみでは要件を満たすこととなる。しかしこの要件2は、社外取締役となる者が現在の非業務執行取締役、会計参与又は監査役である場合にはその前の経歴に業務執行取締役が含まれていてはイカンということだ。
これは要件1だけの時代に業務執行取締役を退いて生え抜き感を消すためには10年間業務執行からは離れていなければならないのだが、その間も会社に対して影響力を保持するために非業務執行取締役(具体的には何の仕事もせずに取締役会で威張り散らす「会長」職などが考えられる。)や監査役に居座ることがあったそうだ。会計参与はほとんど利用されていないので深く考える必要はないだろう。
したがって、非業務執行取締役や監査役を社外取締役とするときには、その前に業務執行取締役や従業員ではなかったことを確認することが必要だ。
さて、この要件1と要件2を整理すると・・・
社外取締役となる者が現時点で、
①会社とは何の関係もない者・・・就任OK
②業務執行取締役や従業員 ・・・10年間かけて生え抜き感を消してから
③非業務執行取締役や監査役・・・経歴要件をクリアしてれば即就任OK
要件3
会社の親会社等又は親会社等の取締役若しくは執行役若しくは支配人その他の使用人でないこと
ここでの親会社等とは個人の支配株主(いわゆるオーナー)である。オーナーは生え抜き感云々どころか、会社そのものである。社外取締役などになれるはずがない。
親会社と子会社には絶対的な従属関係がある。親会社の決定は子会社の決定そのものである。したがって、親会社の業務執行者は子会社の業務執行者と同視できる。社外取締役にはなることができない。
注目すべきは単に「取締役」と規定されていることから、親会社の非業務執行取締役も不可である。
したがって、社外取締役のなり手不足から親会社に泣きついても、親会社の取締役や従業員を子会社の社外取締役として招聘することはできないのである。
また、親会社の社外取締役と子会社の社外取締役を兼任することはできないということになる。
要件4
当該株式会社の親会社等の子会社等(いわゆる兄弟会社)の業務執行取締役等でないこと
兄弟会社の業務執行取締役は親会社に従属するものであるから、事実上親会社の従業員等の業務執行者と同視できる。したがって、要件3により親会社の従業員を社外取締役とすることができないのだから、兄弟会社の業務施行取締役を社外取締役とすることはできないのだ。
要件5
業務執行取締役等の配偶者又は2親等内の親族でないこと
旦那さん、奥さん、子、孫には生え抜き感があるということだ。脱法的な選任を防ぐための規定だ。
社外取締役とは取締役の要件に加え、これら5つの要件をもクリアしなければならないのが会社法上のルールであり、さらに業務執行取締役のお目付役が適した経歴・能力を有した人物でなければならないということだ。確かに人材確保は困難を極めるであろう。一人の人物が複数の会社の社外取締役に就任しているという現状も理解できる。

