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社外取締役3

2022/5/30 月曜日

さて、人材確保が難しい社外取締役ではあるが設置が義務付けられている会社は少ない。
会社法上設置が義務付けられているのは

①特別取締役による議決の定めのある会社
②監査等委員会設置会社
③指名委員会等設置会社

である。それぞれの会社の特徴をザックリと整理すると、①は大きな取引の最終決定を取締役会ではなく特定の取締役の決定で可能な会社形態である。重要な決定を迅速にできるようにすることができる会社であるが、実際はほとんど使われていないようなので深く考える必要はない。
②は取締役の権能の1つである他の取締役の業務執行の監視権限を強化した会社形態である。③は取締役や取締役会を支配するための三大要素である人事、報酬、監督を分散させ、特定の取締役に権限が集中するのを防ぐことにより、コーポレートガバナンスの充実を図る会社形態である。繰り返しだが、かなりザックリした説明である。

①はほとんど使用されていないのでともかく、②と③はコーポレートガバナンス充実のため、特に③は国際的にはメジャーな形態であるので、敢えてこういった形態を選択する会社もあるようだ。多くは日本を代表するような大企業ばかりであり、中小企業では多額のコストや人材難を克服してまで導入するメリットはほとんどない。当然ながら中小企業ではこれらの会社形態の導入義務もなければ社外取締役の設置義務などない。

さて、令和元年の会社法改正前までは上記3つの形態の会社に加え、もう一つ事実上の設置義務が課せられていた会社があった。

有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない監査役会設置の公開大会社は、社外取締役を置いていない場合には、置くことが相当ではない理由を説明しなければならないとされた。改正前会社法327条の2である。
監査役会設置会社とは独任制といわれている監査役が合議体を設けなければならないほど監査業務が忙しい会社、公開会社はいわずもがな株式の譲渡が自由であり、不特定多数の株主がいる会社、大会社とは資本金5億円以上または負債が200億円以上の会社、有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならない会社とは端的いえば上場企業である。要するに大企業の典型的なパターンの会社である。大企業は社外取締役を設置することが望ましいのだが、設置しないのであればその理由を公表せよということで、事実上設置を強制されていた。

何故このような奥歯に物が挟まるような表現なのだろうか。答えは簡単であり社外取締役制度を推進して大企業のコーポレートガバナンスの充実を図りたい立法者(≒日本政府、特に法務省)と、人材難のため義務化してほしくない産業界との対立による妥協の産物である。そんな背景により「設置しなくてもええけど、その代わりにその理由を公表して世間様の理解を得るんやで!」ということに落ち着いたのだ。
我が国の行政機関やお役人様はこういった玉虫色な決着をお家芸とする。コロナ禍で「自粛することが望ましい」、「自粛を要請」などというもはや日本語としておかしい言葉が連発されていたことは記憶に新しい。自粛は自主的に行うから自粛である。強制されるものではない。それでも政治屋やお役人様は「強制はしていない」と言うのであろう。

令和元年会社法改正によりこの玉虫色の規定は改正され、上場している監査役会を設置している公開大会社にも設置が正式に規定された。コーポレートガバナンスの充実派の勝利である。しかし要件の緩和などはないため、人材難の問題は残されたままである。過去要件や経歴要件などを見落として、選任すべきではない人物を社外取締役としてしまった会社がでてくるかもしれない。