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休眠状態会社の取締役を辞任したい!3

2022/8/18 木曜日

前回からの続き。
株主総会を開催して取締役を選任しようにも必要な数の取締役がいないので、招集決定ができない。よって株主総会を開催できない。そこで株主全員からの同意を得ることで株主総会の決議を省略して取締役を選任することができる。しかし全ての株主から同意を得ることができない。こんな場合にどうすべきか。株主総会の招集決定をするためには少なくとも法令や定款に定める取締役の員数の過半数がいなければ話にならない、ということは前回までの頁で説明した。
こんなときには仮取締役を選任することがいいだろう。この制度や手続を見ていくことががこの頁の目的だ。

仮取締役は会社法346条に規定されていて、正確には一時取締役といわれているが、この頁では広く認知されている「仮取締役」で統一する。
この制度は端的にいえば、取締役がいなくなってしまって二進も三進も行かなくなってしまったときに、裁判所に取締役を選任してもらうというものだ。

しかし、この仮取締役はそう簡単には選任してもらえない。取締役は株主総会で選任されるということが超大原則であり、その例外には極めて厳格な要件が課されている。

仮取締役選任の要件は次のとおりである。
①利害関係人の申立
②取締役が欠けてしまったこと
③選任の必要性があること
④裁判所への選任申立

物の本にはこのようになっているが、これを独自に整理すると
①選任の必要性
②裁判所への選任申立&予納金の工面
となる。

①選任の必要性について
必要な数の取締役がいなくなり株主総会の招集決定ができないという状態である。
辞任者や任期満了退任者が権利義務取締役となるようであれば、取締役がいなくなったとはいえない。条文上は「欠けた」と規定されているが、株主総会の招集決定ができないという状況であればいいので、「重病」や「行方不明」であっても選任の必要性はあるといえるだろう。「会社非訟申立の実務」という本には「重病」程度では選任の必要性ありとはいえない、としているがこれは如何なものかと思う。重病とは取締役の任を全く果たせないような状況なのだから、取締役が事実上いないことと等しい。「会社非訟申立の実務」の趣旨は「病気のため会社に出勤することができないという程度ではアカンで」ということと解すべきであろう。
条文上の「欠けた」という規定からはかけ離れているが、「株主総会の決議省略」が可能、即ち取締役は欠けてしまっているが、株主は全員が健在で、連絡もつくようなな状態であれば、選任の必要性はないといえるだろう。取締役はいないが株主は全員健全ということは、経営と所有が一致していることがほとんどである中小企業では希ではあるが。
また、取締役の補欠予選(会社法329条3項)がされていれば、取締役がいないということにはならないのでこの場合も選任の必要性はないといえるだろう。補欠予選は取締役が欠けてしまった場合に備えておくことなのだが、中小企業において補欠予選がなされていることは希であろう。よっぽど近い将来に取締役が欠けてしまうことが予想されているような状況でもない限り、補欠予選はないだろう。だいたい、近い将来に欠けることが予想されているような人物を取締役に選任することはないだろう。
要するに「取締役が欠けた」ということではなく、「株主総会の招集決定ができない状態」ということが重要である。
大阪地裁のホームページには「会社法が予定した会社内部における自立的な選任手続をすることができる以上は仮取締役の選任によらず、株主総会を開催して後任を選任すればいい」と書いてある。仮取締役の選任はあくまでも最後の手段だ、と言いたげである。

②裁判所への選任申立&予納金の工面
仮取締役選任申立は非訟事件なので申立が必要である。誰でも彼でも申し立てることができるのではなく、仮取締役を必要としている者のみが申立をすることができるのである。具体的には取締役、監査役、株主、債権者、従業員など利害関係人と呼ばれる者たちである。会社自身が申してることはできないようである。利害関係人ではなく当事者であるからというのがその理由らしい。会社名義で申立ができないのであれば取締役や株主名義で申立をすればいいので、たいした問題ではない。申立手数料は1,000円であり、予納郵券も各裁判所で異なるかもしれないが、それほど高額ではないだろう。チョット変わっているのが登記嘱託料として3万円というのがある。仮取締役選任の登記は裁判所から登記所への嘱託によるのでその登録免許税や手数料である。やや高いとは思うが法令で決まっているので文句のつけようがない。
しかしこれらを吹き飛ばすのが仮取締役への報酬の予納金である。仮取締役を勤めた者へは報酬が支払われるのだが、事実上これを前払いせよということだ。これが高い。

そもそも仮取締役の役割は何だろうか?
端的にいえば株主総会を開催して後任取締役を選任することである。
後任の取締役が内定していればサッサと選任すればそれでお役御免である。この場合は仮取締役がやるべきことは少なく、その在任期間も短いであろう。これであれば報酬額は少ないだろう。
しかし、後任が決まっていないなど仮取締役がやるべきことが少なくないような場合は、その在任期間も長くなりその報酬も高額となるであろう。大阪地裁のホームページにも「後任が決まっておらず、仮取締役が早期にお役御免とはいかんようであれば予納金額は相当高額になるで!」と書いてある。相続財産管理人選任申立などで数十万円クラスの予納金を平気で「サッサと払わんかい!」と言う裁判所が「相当高いで~!」と言っているのだからとんでもない額になるのだろう。予納額は選任申立後に審問期日が開かれ、申立人や会社、仮取締役候補者から事情を聴いてから決まるそうだ。大阪地裁のホームページは後任が決まる見込みがないのであれば仮取締役選任は諦めろ、と言っているような気もする。ではどうすればいいのか?と問いたくなるが「それは知らん!だが、仮取締役の選任はその解決方法ではない」ということなんだろう。

なお、仮取締役候補者の自薦はできないようだ。裁判所に登録している弁護士などが選任されるようである。

あらためて仮取締役選任申立の要件を整理すると、
①現時点ではどうやっても株主総会を開催できないし、決議省略もできない
②後任の候補者がいる
③予納金を工面できる

といったところだろう。
大阪地裁のホームページでからは「仮取締役の選任は例外中の例外である。なのでその選任には高いハードルがあるぞ。」というメッセージがプンプンと匂ってくる。