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休眠状態会社の取締役を辞任したい!5

2022/9/22 木曜日

さて、このシリーズの最初に取り上げた休眠状態の会社に名目だけの取締役として登記されているという場合を考えてみる。

知人に頼み込んで取締役に名前だけ貸してもらうようだから、おそらく取締役会設置会社であろう。定款に取締役の員数についての規定がないと仮定すると、最低でも3名以上の取締役が必要であり、3名以上は存在していたハズである。休眠状態なので既に取締役や監査役も皆行方不明であろう。

辞任しようにも最低員数を割り込んでしまうとそもそも権利義務役員となるので辞任ができない。後任を連れて来る必要がある。
後任候補者に目処が付いたらこの者を取締役に選任するため株主総会を開催する必要がある。登記申請も必要だから代表取締役にもなってもらう必要がある。

仮に後任を用意できても、株主総会を開催するには自身を含めてもう1人の取締役が必要なので、仮取締役の選任申立が必要となる。休眠状態なので必要性はクリアするだろうが、予納金を工面する必要がある。少数株主による招集請求は趣旨が違うかもしれないので検討しない。

無事に仮取締役が選任されても、株主総会に招集すべき株主がどこの誰だか分からない。
資料があればいいのだが、なければ探すしかない。休眠前に何らかの登記申請をしている会社であれば登記所に株主リストが保管されているかもしれないし、法人税申告時の資料があれば税務署に何らかの資料は残っているかもしれないのでそれらを探すしかない。

無事に株主が判明してもこの株主が取締役でもあると行方不明であろう。会社経営に失敗して夜逃げでもしていれば、探し出すことはほぼ不可能であろう。住民票などが入手できても転居届などはしているはずがない。この場合は行方不明の株主について不在者財産管理人を選任するしかない。もっとも、辞任予定者も株式を1株でも保有していれば株主総会は開催できるかもしれない。

何とか株主総会を開催できれば仮取締役はお役御免なので、新たに選任された者と辞任予定者自身で取締役会を開催して、新たに選任された者を代表取締役に選定して辞任の登記申請をする。
これで当該会社から離れることができる。

なお、既存の取締役が任期満了となっている場合にはこれらの者の後任も連れてこないと行けないので、後任は3名必要となる。

さて、残された新取締役はこの後どうするのだろうか。既に休眠状態なので事業を再開することはないだろうから、解散するしかないだろう。事業に失敗して休眠状態となっているのだから、未払いの債務もたくさんあるだろう。これらを処理しなければ清算結了とはならない。場合によっては破産も検討しなければならない。
後任者にはかなり大変な事務が待っているのだ。

果たして休眠状態の会社の役員になってくれる人がいるだろうか?
会社の解散事務までやる羽目になるのでタダで引き受けてくれることはないだろうから相応の謝礼は必要だろうし、逆にこのような状況でも引き受けてくれるのであればそれはそれでアヤシい。マネーロンダリングなどに使うために何らかの法人を欲している人かもしれない。
仮取締役選任申立時の予納金も本来は会社に求償できるのかもしれないが、休眠状態ではそれも実現できず、持ち出しになるだろう。

つまり、休眠状態の会社の取締役を辞任するということは事実上ほぼ不可能であると断言できる。現行の法制度では手も足も出ないのである。そもそもそういったことを想定していない。休眠会社のみなし解散ということはあるが、これはあくまでも解散状態にするだけであり、会社自体をこの世から消滅させるものではない。
みなし解散となった会社を強制的に消滅させる制度が創設されればいいのだが、会社債権者もいることだから、簡単に消滅させるというわけにはいかないだろう。

休眠状態ではない場合でも取締役を辞任するということはなかなか大変なので、気軽に就任してはならん、ということしか言えない。
なす術がないので、何もできない。登記記録上は名前が残っていることになるが、実際に会社債権者等から責任追及(=残っている債務を支払えってこと)がなされなければ、事実上害はない。仮に会社債権者から責任追及されたら消滅時効の援用などで抵抗してそれでもダメなら事情を説明して諦めてもらうしかない。会社債権者による破産申立をしてもらうしかない。こんな簡単にはいかないはずだが、こうするより他はない。

繰り返しになるが、気軽に取締役になってはならないのだ。これを結びとしてこのシリーズを完結させる。