お知らせNews

互選・決議省略・書面決議

2022/10/30 日曜日

47 互選とは

「君は互選とは何かを理解しているかね?」

先日、事務所の本棚を整理していたときに偶然目にした登記研究803号に神崎先生からの問いかけがあった。「司法書士や登記官でも正確に回答できた者はいなかった。」ようだ。

この問いかけへの回答がこの頁の目的だ。しかしホントに回答できなかった者はいなかったのだろうか・・・?

互選とは選定者と被選定者が一致していることといわれている。なんのこっちゃ?ということなので、端的にいえば複数名の中から1名を選出するのだが、選出者はこの複数名の者である。第三者が選出されるものではない。自分たちの代表を自分たちで選出するということである。

互選といえば取締役会を置かない会社の代表取締役の選定方法の一つである。これが一番メジャーな「互選」であろう。複数名いる取締役の中から取締役たちが代表取締役を選出するということである。

そんなこと当たり前だといわれそうであるが、互選の意義が問題となるのはその方式や可決要件である。互選をするには取締役が一堂に会する必要があるのか、全員賛成でなければならないのかそれとも過半数で足りるのか、互選書は1通作成し、これに全ての取締役が記名押印する必要があるのか、が問題となる。会社法はこのあたりについての規定がない。ここらへんがあやふやだから「司法書士や登記官でも正確に回答できた者はいなかった」のであろうか。

まずは、以前の頁で会社法が定める意思決定方式には決議方式と同意方式というものがあると紹介したので「41 休眠状態会社の取締役を辞任したい!2」をご覧いただきたい。

互選とはこの同意方式の一種または準じたものであるという見解が強い。

同意方式であるので、方式に制限はない。取締役が一堂に会する必要もない。持ち回りでOKだ。可決要件は過半数で足りる。会社法348条2項は「取締役が二人以上ある場合には、株式会社(取締役会設置会社を除く。)の業務は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役の過半数をもって決定する。」と規定している。代表取締役の選定が会社の業務といえるかはビミョーなところだが、代表取締役の選定に限って全員の一致を求める根拠はない。取締役会であれば過半数で足りるのだから、取締役会を置かない会社でも同様であるべきだろう。

したがって互選を同意方式と論じるのではなく、348条2項を代表取締役の選定に当てはめたものであると考える。あえて互選として別に規定している理由を見いだすのは難しいが、決めるというよりも、選び出すという点が強調されているのだろう。はたまた先に述べたとおり代表取締役の選定が「業務の決定」とは言い難いから別に規定したのだろうかな。まぁ、これはあまり重要ではないが。

取締役会設置会社では定款で定めることにより、決議省略というものがある。会社法370条である。これは決議方式や同意方式とは別問題と考えるべきであろう。
これは本来は一堂に会して議論をして最後は多数決で決めなければならないものを、一堂に会することなく決定してしまうものである。これは大きな例外なので、一堂に会して行うときは過半数で可決するものが全員一致でなければならない。例外なので決議要件のハードルがあがっているといえばそれまでだが、チョット厳しいような気もするが。

整理すると・・・。
①非設置会社設置会社
意思決定の方式に決まりはないので、どんな方法でもOK。なので同意方式をとるか決議方式をとるか、である。

②取締役会設置会社
意思決定の方式は会議方式しかないので一堂に会して会議をするしかないのだが、例外的に決議を省略することができる。

繰り返しになるが一堂に会する会議が必要か否かである。

このあたりを正確に理解していない人もいるのではないだろうか。特に決議省略と同意方式を混同していることが多いと思われる。司法書士会の各機関も決議省略をすることができる旨の規定があるようだが、可決要件は過半数であったり全員一致であったりする。これは決議省略と同意方式を正確に理解していないことに起因する。

なぜ正確に理解されていないのだろうかと原因究明をしてみると、用語の使い方の不統一ということに行き着いた。わたしは株主総会でも取締役会でも「決議省略」という言葉を使っている。条文のタイトルからしてこの表現が正しいハズである。しかしこれを「書面決議」や「持ち回り決議」など表現しているものもある。おそらく「決議省略」だと、議事録を作成するということが理解しにくいので「●●決議」などと表現した方がイメージが伝わりやすいと考えたのかもしれない。しかし株主総会では「書面による議決権行使」というものがあり、これと「書面決議」の違いはこの表現からはハッキリしない。こういことを繰り返しているから、理解が正確ではなく、冒頭の「正確に回答できた者はいなかった」になるのかもしれない。
「書面決議」としてしまうからメールではできるのか?や決議要件は過半数なのか全員一致なのか?という本末転倒な議論が起きてしまうのだろう。
まぁ、メールがダメならファックスでいいだろう。決議要件は司法書士会の会議体では全員一致が通例ということが多いのであまり問題にはならないかもしれないが、決議の成立日に影響する。過半数で可決なのであれば、各構成員から同意書なるものがファックスされるのだが、構成員の過半数から同意書がファックスされてきた時点で可決する。これはチョットした違いがでてくるだろう。

ここからは非取締役会設置会社の話である。
以上の点を登記申請の添付書類に落とし込むと・・・

取締役会を置かない会社が定款規定に基づく互選により代表取締役を選定する。
取締役はA・B・Cの3名であり、Aを代表取締役に選定する。

添付書類の定款や印鑑証明書はさておき、ここでは互選書という書面を作成するのだが、これを1通作成して、A、B、Cが一堂に会し、全員が賛成し、全員が1通に署名または記名押印するというのが一般的であろう。これだと取締役会と全く変わらないのであり、こういった実務慣行のため「正確に回答できた者はいないのだろう」と神﨑先生は嘆いてたのかも。しかししかしホントに回答できなかった者はいなかったのだろうか・・・?

一堂に会する必要はないので、Aのみが記名押印したもの、Bのみが記名押印したもの、Cのみが記名押印したものの計3通でもOKだ。
取締役の員数が多い場合は1通の書面に順次記名押印していては手間だろう。
同じ内容の書面を取締役の人数分用意して、これを各取締役に送付して、記名押印後に送り返してもらえばOKだ。タイトルは互選書でも同意書でもいい。
設立時に発起人がたくさんいる場合にもこの方法でOKだ。発起人が複数いる場合の意思決定も同意方式である。発起人の決定書を発起人の人数の分だけの通数を用意すればいい。
発起人が決定すべき事項は基本的には発起人の過半数で決するので、過半数分の通数でもOKなのだが、設立時発行株式に関する事項の決定(会社法32条)は全員一致が必要なので、発起人全員分の通数が必要だ。

記載ぶりは一堂に会する場合の書面とは異なり、少し工夫が必要だが、「Aを代表取締役に選定することに同意(「賛成する」でもいいだろう)する」だけでOKだろう。理論上は日付も不要かもしれないが、効力の発生日に関わることだから記載しておいた方が無難だ。日付以外の余計なことは書かなくてもいいのだが、各同意書と就任承諾書との関連性は持たせておいた方がいいだろう。金子先生は、同意書のみを添付するのではなく、代表取締役作成の「決定(または互選)があったことを証する書面」も併せて添付することがいいぞ、と説く。(平成27年施行改正会社法と商業登記の最新実務論点 207頁)この場合は同意書3通に加え、証明書1通添付する。

記載例はこんな感じ。
当社定款の定めにより代表取締役を互選したところ、添付の同意書のとおり取締役○名中、過半数である○名の同意を得たので、これを証明するぞ
●●株式会社 代表取締役 何某 会社届出印

余計なこと記載しなくてもいいということであれば、全員が一堂に会して、1通の同意書や互選書にそれぞれが記名押印する場合でも、一堂に会した会議体であること(日時や場所など)は記載しなくてもいいハズである。会議体不要なところ敢えて会議「風」に行ったに過ぎないものである。

チョット話は逸れるが、金子先生のブログだったか著書だったかに、同意書や互選書のタイトルを「取締役会議事録」としたので、法務局から「取締役会を置かない会社なのに取締役会とは一体どーいうことかいな?」という指摘をうけたことがあったそうだ。
これは「取締役の会議の録である」としてことを収めたようである。
同意方式は何もかも自由なのでそれを書面に落とすときはそのタイトルまで神経を使うべし!という教訓であろうか。タイトルは「取締役の決定書」とすることが多い。

さらにいえば、過半数で足りるのでA、B、Cそれぞれの同意書や互選書のうち、AとBの同意書だけでもOKである。Cの賛否は確認しなくてもいいのだ。

最後に。
この議論に際には互選とは全員の一致が必要であるという古い裁判例が引用されることがあるようだ。どのような局面でのことなのかは分からないが、少なくとも取締役会を置かない会社の代表取締役選定の局面ではないだろう。
なので、そのような裁判例は無視してしまって問題ないだろう。