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書評『Q&A商業登記と会社法』

2022/11/26 土曜日

このページでは司法書士向けに出版されている書籍についての感想を書く。
販売中の書籍なので営業妨害にならない程度の論評をする。まぁ、論評なんてほどではないかも知れないが。

記念すべき第1弾は最近刊行された「Q&A商業登記」である。
著者というか代表編集は司法書士加藤正也先生である。加藤先生とは面識はないが、多方面で活躍されている。出版社は新日本法規であり、価格は3,800円、令和4年9月に発売している。

本書の特徴として、各論点における会社法の理論と商業登記法に基づく登記手続を分けて著述されていることがあげられる。よくある登記手続の解説書は登記申請手続だけを記載したものが多いが、本書は必ず実体法である会社法の解説から始まる。
司法書士試験向けのテキストなどに見られる記述方法だが、商業登記は会社法に規定されている手続を実践するものであるから、本来はこういった記述法が正しいといえる。
なかには司法書士には釈迦に説法ともいえそうな箇所もあるが、加藤先生ははしがきにおいて「会社が意図した会社運営をするためには、法規制と法の趣旨を前提に、どのように意思決定をし、行動するかを考えることが必要」とも述べているからか、本書は会社法の理論や実務上の問題点→商業登記の手続という流れが一貫している。

単なる丸暗記では実務では役に立たないにもかかわらず、司法書士向けの研修などは実務の取り扱いなどだけを延々と紹介するものもある。日々の業務では必要なことかも知れないが、これではチョット異なる事案にあたるとまるで対応できなくなる。司法書士の中には理論や理屈などは立ち入らずに結論だけを抑えようとする者もいる。
本書はこういったことに警鐘を鳴らしているようにも思える。
また、個々の執筆は複数の司法書士が行っているのだが、この手の書籍にありがちな各著者が好き勝手に書くので、同じようなことが複数の箇所に記載されていたり、用語の不統一などが見られるのだが、本書ではこういったことが見受けられない。
執筆前に入念にすり合わせていたのか、それとも加藤先生が編集の段階で苦労されたのかは分からないが、この点では非常に良くできた書籍である。

さて、次に本書のザンネンな点をあげる。
本書は体系的な記述とはなっていないので、例を挙げると設立でも論点や手続が一から十までは記載されていない。なかにはかなりマイナーな論点などについての解説にもかなりの紙面を割いているようにも見える。また、書式や記載例も多の司法書士向けの書籍と比べても多いとはいえないだろう。少なくとも書式集ではない。前述のとおり司法書士の中には理論の解説よりも書式集を求める者も多いので、そのような者にとっては本書は余り歓迎されないだろう。

よって、本書は商業登記の業務が多い司法書士が将来の受任に備えて、予め読んでおくことがいいのだろう。
しかし、商業登記の業務がそれほど多くはないという司法書士でも本書の第1章は読んでおくといいだろう。参考になることが多い。

本書には気になった箇所が1つある。設立時代表取締役選定についての解説の箇所である。初版では74ページである。
設立する会社が取締役会設置会社となる場合のことであるが、次のように記載されている。
「会社法47条3項により、「発起人」の過半数の一致によって設立時代表取締役を選定する場合には・・・」

確かに設置会社でも発起人が設立時代表取締役を選定できるようだが、47条3項は設立時取締役が選定する場面である。
本書のこれに続く記述は設立時取締役が設立時代表取締役を選定することを念頭に置いた内容である。
これは「発起人」ではなく「設立時取締役」の間違いではないだろうか。(本書購入時に正誤表なんてあったかな?)

最後に本書のオススメ度である。
オススメ度「大」であれば、すべての司法書士必携
オススメ度「中」であれば、関心がある司法書士はゲットすべき
オススメ度「小」であれば、おサイフに余裕があれば買ってもいいんじゃないだろうか

本書は「中」である。

新しい書籍や既に販売されている書籍の書評も企画しているのでお楽しみに。では。