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先例・通達をぶった斬る!2 令和3年6月16日民商103号 バーチャルオンリー株主総会

2022/12/22 木曜日

新型コロナウイルスの感染により、テレワークやリモートによる会議出席が増えてきた。技術的には可能だったのだろうが、一昔前では考えられないことだった。
私の周辺でもリモートが増えている。新型コロナウイルスの終息後もこの流れは止まらないのだろうか。

さて、株主総会でもリモート開催が呼びかけらている。
この頁では開催場所がない株主総会、いわゆるバーチャルオンリー株主総会についての産業競争強化法の改正とそれにともなう登記事務通達である令和3年6月16日民商103号を取りあげる。

はじめにとても重要なことだが、株主総会の「リモート開催」、「バーチャルオンリー」、「決議省略」「書面決議」についての違いを整理しておく。

これらの違いは「会議が行われているか」と「会議の場所があるか」である。

まずはリモート開催から。
この頁では出席者の「一部」がテレビ電話会議システムやズームなどのインターネットによる会議システムで出席する方法を「リモート開催」と呼ぶこととする。
会議室で会議を行うが、出席者の一部がズームで参加するような場合である。
この場合は会議が行われているし、会議の場所もある。出席者の一部が会議の場にいないだけである。実は株主総会の「リモート開催」は古くから開催可能であった。その法的根拠というと、株主総会議事録の記載事項を定めた規定にある。会社法施行規則72条3項1号である。株主総会議事録には開催場所と出席者を記載するのだが、「(開催した)場所に存しない取締役株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法」を記載することが求められている。これは「リモート開催」が前提となっている規定である。
よって、「リモート開催」は法的には可能である。

次にバーチャルオンリーについて。
この頁では出席者の「全部」がテレビ電話会議システムやズームなどのインターネットによる会議システムで出席する方法を「バーチャルオンリー」と呼ぶこととする。
出席者全員がズームで参加している場合等である。
我が東京司法書士会の委員会等ではよく行われている方式である。何らかの実施可能な根拠規定はあるのだろうか?と首をかしげたくなるときもあるが、執行部は何も考えていないのだろう。
この場合は会議は行われているが、会議の場所がない。この会議の場所が存在しないという点が問題となる。
株主総会議事録には開催した「場所」を記載しなければならないことから、場所が存在しない株主総会=バーチャルオンリーはできない、と解されていた。

次に決議省略と書面決議について。
これは同じ意味である。
この場合はそもそも会議が行われていない。よって場所も存在しない。稟議とか持ち回り決議などである。
これは当然に可能である。以前決議方式と同意方式についての説明をしたが、このうちの同意方式である。なお、リモート開催やバーチャルオンリーは決議方式にカテゴライズされるのだろう。

産業競争強化法の改正はバーチャルオンリーを可能とすることを内容としている。とはいってもすぐにバーチャルオンリーが可能となるのではなく、いくつかの要件がある。

要件1
バーチャルオンリーが可能なのは上場企業に限られる。我が国の会社の99.9%は非上場企業であり、株主も家族だけなどの中小企業なのでバーチャルオンリーではなくとも株主総会の開催は容易だろうし、決議省略も容易であろうということだろう。

要件2
経済産業大臣と法務大臣の確認を受ける。

要件3
要件2の確認後に定款にバーチャルオンリーができる旨を定める。よって経産相および法相の確認を受けた後、バーチャルオンリーではない会議の場所のある株主総会を開催する必要がある。
なお、これにはオマケの経過措置があり、令和5年6月16日までの間は、両大臣の確認を受けた場合は定款にバーチャルオンリーができる旨が規定されているとみなされる。(施行附則3条1項)
前述のとおり、バーチャルオンリーを開催できるようにするには、バーチャルオンリーの前に開催場所の存在する株主総会(リアル株主総会)を開催して定款変更をしてからである。しかし、令和5年6月16日までは経済産業大臣と法務大臣の確認さえ受ければリアル株主総会で定款変更をしなくともバーチャルオンリーが可能(特例バーチャルオンリー)ということである。上場企業では経済産業大臣と法務大臣の確認を受けることよりもリアル株主総会を開催する方が費用も労力もかかる。これは新型コロナウイルスの感染が蔓延している間にはリアル株主総会を開催する必要がないということである。産業競争強化法改正の立法者は令和5年の夏頃までに新型コロナウイルスが終息すると思っているのだろうか?
ところが施行附則3条2項によれば、この特例バーチャルオンリーではバーチャルオンリーを可能とする定款変更決議を行うことはできないらしい。上場企業の個人株主は高齢者が多く、インターネットが苦手な人も多く、バーチャルオンリーを毛嫌いするであろうから(私も苦手だ!)バーチャルオンリーを可能とする定款変更は必ずリアル株主総会で決議せよ、ということであろう。令和5年の夏頃までには新型コロナウイルスは終息しているハズだから、あらためて(少なくとも1回は)リアル株主総会を開催すればいいじゃん、といいことだろう。
令和5年の夏頃まで新型コロナウイルス終息の兆しが見られなければ、施行附則3条1項の期間は延長されるかもしれないし、延長されないかもしれないので、要注意だ。

ところで、バーチャルオンリーは上場企業のみが可能となり、中小企業ではできないということとなっている。
それでは中小企業ではどうやってもバーチャルオンリーはできないのかといえば、そうではない。リモート開催でも事実上バーチャルオンリーと同じことができる。
バーチャルオンリーとリモート開催の違いは会議の場所があるか否かである。場所が定められていればそこに人はいなくてもいいのだ。株主総会の会場を会社の会議室と定め、出席者である取締役と株主はみなリモート出席であっても、これはバーチャルオンリーではなくリモート開催である。会議の場所があるからである。実際には通信トラブルなどに備えるため会場に事務局として従業員が控えていることが多いだろう。金子先生は会場がありそこには誰かがいるということを株主総会議事録に記載して、バーチャルオンリーではないことをアピールするべし、としている。

このようにすれば中小企業でも事実上のバーチャルオンリーは可能である。まぁ、中小企業であれば株主も少なく皆身内ということが多いので決議書略も不可能ではないだろうから、このようなバーチャルオンリーもどきよりも決議省略を検討した方がいいかもしれない。バーチャルオンリーやリモート開催をする場合には通信障害が発生した場合のことなどを考えておいた方がいいかもしれない。
当然、事前の準備や訓練は怠ってはいけない。
上場企業でもバーチャルオンリーを実行するかは怪しい。高齢株主が多い会社であれば敬遠するかもしれない。
また、リモート開催であっても株主の多くは会場に参集していても、取締役だけがリモート出席ということはあるのだろうか。無配とする決算の承認では株主はお怒りなハズだし、リモート出席では逃げていると感じられてしまうかもしれない。
バーチャルオンリーでもリモート開催でも議決権行使の方法やその集計方法はどうやるのだろうか。おそらくは専門の業者やシステムなどのの支援をうけるのだろう。それはそれで費用が嵩むであろう。会場費とどちらがお高くつくのだろうか。こういった事情もバーチャルオンリーやリモート開催を実施する場合の検討事項であろう。
また先にも触れたように、開催中に通信障害が発生して多くの株主が議決権行使できない状況になってしまった場合には当該株主総会はどうなるのだろうか?ごく少数の大株主は通信障害は生じていないが、大多数の個人株主に通信障害が生じた場合に、決議を強行するのだろうか?大株主だけは会社が別に用意した鉄壁のセキュリティが施されたインターネット環境で出席させるが、大多数の個人株主は各自の自宅でパソコンやスマホで出席、ということは予想されるので、大株主だけが議決権行使できるという状況は起きうるだろう。
この場合に決議を強行しても、決議要件を満たしていれば決議は有効とも考えられるが、あまりに不公平と判断されると決議不存在ということにもなるかもしれない。また、『特定の株主だけを優遇したと非難されるかもしれない。
新興の会社であればバーチャルオンリーを実施するかもしれないが、老舗の経営者が保守的な会社では実施せず、ハイブリッド型として、会場出席するか否かは株主の判断に委ね、通信障害発生時の議決権行使が不可能となるリスクも株主の判断に委ねる、という会社が多くなるかもしれない。