共有・懲戒処分1
2023/1/12 木曜日
毎月発行されている月報司法書士という業界向けの雑誌(これは無料で配布される)の巻末には懲戒処分が掲載されている。懲戒処分とは悪さをした司法書士に対して法務大臣(昔は法務局だった)がお灸を据えることをいい、具体的には戒告、業務停止、業務禁止がある。戒告は厳重注意ということ、業務停止は1週間~2年の範囲での営業禁止処分、業務禁止とは≒資格剥奪である。刑事事件ではないので「罪」という表現は適切ではないが、便宜的に罪という表現を用いれば、一番罪が重いのは業務禁止、次いで業務停止、一番軽いのは戒告である。なお、戒告であっても公表されてしまう。
懲戒処分はあくまでも司法書士に対する行政処分なので、基本的に「司法書士の業務上のやらかし」についての処分なので、司法書士業とは無関係にやらかしたことは対象にならない。なのでとある司法書士が仕事とは無関係な休日に他人をぶん殴っても、それは暴行罪や傷害罪にはなるかもしれないが、これは刑事処分であり行政処分である懲戒処分は科せられない。理論上は科せられないハズなのだが実際は傷害事件や痴漢事件を理由に懲戒処分が科されている例もあり、これらの境界は曖昧である。厳格に峻別すべし、という意見もあるようだが、そもそも「人として終わっている」ような人物に登記の依頼などはしたくないであろう。
月報司法書士を隅から隅まで読んでいる司法書士はほとんどいないハズである。私もそうである。パラパラとめくってみて興味をそそるような記事だけを読んでいる程度である。
全体的にあまり読まれていないのであればいっそのこと電子化して配信してみてはどうかとも思う。しかし、巻末の懲戒処分の公表だけは多くの司法書士は読んでいるようである。
さて、一体何をやらかせば懲戒処分が科されるのであろうか?
特に統計をとったわけではないが、多いと思われるのは「本人確認・意思確認義務違反」と「補助者決済」である。この業界に身を置いている人でもない限り、なんぞや?と思われるので掻い摘まんで説明する。
「本人確認・意思確認義務違反」とは、登記の依頼を受けたときに依頼者の実在性や依頼者の登記申請をしたいという意思を確認して登記申請代理をせよ、ということである。
弁護士などとは異なり、司法書士は不動産仲介業者や税理士などから依頼者の紹介を受け、業務が開始することが多い。不動産取引の業務では取引の概要は仲介業者から聴取するだけであり、取引の当日に初めて依頼者と顔を合わせるということが多い。会社の登記は税理士が自己の顧問先の会社で役員変更や増資などがあると、当該会社を司法書士に紹介することが多い。司法書士は当該税理士から依頼の概要を聴取し、必要な書類を作成し、これを税理士経由で会社に交付し署名押印させ、これが税理士経由で戻ってくる。なので、依頼者である会社の代表者と顔を合わせることはおろか、電話等で話すこともない。
このように依頼者から直接話を聴いて事件処理をするということがあまりない。だからこそ依頼者が蚊帳の外で、仲介業者や税理士の指示のみで事件処理をするのではなく、依頼者から直接話を聴きましょう(意思を確認しましょう)、ということが意思確認である。なお、勘違いしている司法書士もいるが、この場合の依頼者とは仲介業者や税理士ではない。あくまでも登記申請人となる不動産の売主買主や会社である。以前、この場合の依頼者とは仲介業者や税理士である、と堂々といっている人がいたのでとても驚いたことを覚えている。
補助者決済についてはこれも長くなるのでいずれ別の頁で説明する。こっちはこっちでかなりカオスなので、どうやって説明すべきか悩ましいところだが・・・。
月報司法書士2023年1月号に、共有不動産の取引に基づく登記申請の依頼を受けた司法書士に依頼者の意思確認を怠ったとして懲戒処分が科された旨が掲載されていた。
この懲戒処分の妥当性について、やや疑問に思うことがあるのでこのシリーズをはじめた次第である。この頁では懲戒処分制度の紹介をして、次頁以降では「共有」「とある懲戒処分の妥当性」と展開していく。
では。
