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代表権の帰趨 実践編2

2023/2/23 木曜日

55 代表権の帰趨 実践編2

前回の亜流。取締役も新たに選任されるパターン。

取締役がA・Bの2名の会社 代表取締役はA
令和4年6月1日にCを取締役に、Dを監査役に選任するとともに取締役会を設置する株主総会特別決議 CおよびDは同日就任承諾 代表取締役は引き続きA

なすべき手続や注意点は前回とほぼ同じであり、取締役の選任が追加されるだけ。
まずは株主総会を開催する。

(1)株主総会
1号議案 取締役の選任         ※取締役Cを選任
2号議案 取締役会設置会社の定めの設定 
3号議案 監査役設置会社の定めの設定  
4号議案 監査役の選任         ※監査役Dを選任

株主総会後に取締役会を開催し、代表取締役を選定し直す必要があることも前回と同様だ。

(2)取締役会
1号議案 代表取締役の選定 代表取締役 (住所)Aを選定

取締役全員が出席して署名押印する。監査役の監査の範囲が会計監査に限定されていなければ監査役も出席して署名押印する。
問題は押印すべき印鑑である。
取締役会議事録は議案や議事内容にかかわらず押印しなければならない(会社法369条3項)のだが、代表取締役の選定決議を行った場合の商業登記規則商業登記規則61条6項は届出印または実印での押印を要求している。
代表取締役を選定(し直している)しているのだから届出印または実印であろうとも考えられる。
一方で、61条6項は「登記の申請書には」とあるように登記申請を念頭に、登記所へ提出する取締役会議事録の押印すべき印鑑を定めているようにも読める。
一般論として取締役会議事録は同じものを2通用意して、1通は登記所提出用、もう1通は会社保管用とすることがある。
代表取締役の選定であれば登記所要には61条6項に基づく押印を、会社保管用は369条3項に基づく押印でもいいハズである。
369条3項は押印せよとはあるが、印鑑の種類までは指定していないのでいわゆる認印でもOKだ。
ということであれば、当該取締役会議事録は登記所に提出はしないものの、作成して出席取締役(と監査役)が記名押印しなければならないが、押印すべき印鑑はどんなものでもいいのだろう。この登記申請には用いない取締役会議事録に押印すべき印鑑は前回の実践編1の場合でも同じことがいえる。

そして登記申請。申請書はこんな感じ。
①登記の目的
「取締役の変更」
「取締役会設置会社の定めの設定」
「監査役設置会社の定めの設定」
「監査役の変更」

会計限定監査役とするのであればこれも。
「監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの設定」

②登記すべき事項
「令和4年6月1日 取締役C選任」
「同日       取締役会設置会社の定め設定」
「同日       監査役設置会社の定めの設定」
「同日       監査役D選任」

会計限定監査役とするのであればこれも。
「同日 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めの設定」

③添付書類
株主総会議事録
株主リスト
取締役の就任承諾書
取締役の本人確認証明書
監査役の就任承諾書
監査役の本人確認証明書

問題は印鑑証明書の要否である。既に代表取締役と平取締役がいるので各自代表制ではないことは明らかである。Cは代表取締役ではないので、その選定を証する書面への押印について規定した商業登記規則61条6項の適用は問題とならない。
問題となるのは就任承諾書への押印を規定した61条4項と5項である。非設置会社では平取締役の就任承諾書は実印で押印して印鑑証明書を添付する。
設例の会社は株主総会の決議で非設置会社から設置会社へ移行していて、同じ株主総会で取締役に選任されたCは非設置会社の取締役に選任されたのか、それとも設置会社の取締役に選任されたのだろうか。
前者であればCの就任承諾書は実印で押印して印鑑証明書を添付しなければならない。

決議された順序を見れば1号議案で非設置会社の取締役に選任され、次の2号議案で設置会社へ移行している。選任された直後に設置会社へ移行しているのである。ということはCは非設置会社の取締役に選任されたといえるのである。
しかしながら、これは決議の順番に着目したにすぎず、その順番を入れ替えたり、決議の効力発生に条件を付せば、取締役の選任決議の効力発生時点では設置会社ということもできるハズである。果たしてこれは決議の順番や効力発生時の問題なのであろうか。

これについては司法書士のバイブルともいえる「商業登記ハンドブック」の400頁にヒントとなる記述がある。

「取締役の改選に併せて取締役会を廃止した場合には、改選された従前代表権を有しなかった取締役は各自代表の取締役として選任され就任承諾をしているため、当該取締役が重任するときは、取締役の重任および代表取締役の就任の登記を申請することとなり、取締役の選定についての議事録にかかる印鑑証明書(変更前の代表取締役が届出印を押印した場合を除く)および取締役の就任承諾書も添付書類となる」

これは非設置会社への移行と同一株主総会で取締役が就任(重任)しているケースで、商業登記規則61条6項の適用が問題となっている。取締役の就任(重任)→取締役会の廃止という順序で決議していれば、設置会社の平取締役として選任されており、この時点では代表取締役ではない。その次の議案で各自代表制の非設置会社へ移行しているのである。
したがって、取締役を選任した株主総会総会議事録には商業登記規則61条6項の適用はなく、届出印や実印での押印、印鑑証明書の添付は不要に思える。

しかし、上記商業ハンドブックでは届出印や実印での押印、印鑑証明書の添付が必要としている。

「取締役会廃止の決議と役員選任議案の採決の前後は、同一の機会に決議をしている以上、株主総会および被選任者の意思は上記のとおりであり、どちらが先になされても、また効力発生時期に条件を付していなくとも結論に相違はないと解される」としている。

これは決議の順序や効力発生時期などはどうでもよく、「Cを設置会社の取締役に選任したのだ」や「オレは設置会社の取締役に就任するのだ」という会社や被選任者の意思を重視すべし、ということであろう。

株式会社の登記全実務という本の729頁には以下の記述がある。
「取締役会設置会社が株主総会の第1号議案で取締役を増員し、第2号議案で取締役会設置会社の定めを廃止した(各自代表制へ移行)場合、選任時には取締役会設置会社であるが、当該取締役の就任承諾を証する書面の印鑑について印鑑証明書の添付が必要である。被選任者は取締役会設置会社の定めを廃止した後に会社を代表する取締役となることを認識していたからである。」

これは本節例とは逆の「取締役会設置会社の定めの廃止」ではあるが、議案の順序にかかわらず、会社や被選任者の意思を重視するといえる。

これにより、本頁では以下の見解を採用する。

「設置会社から非設置会社への移行または非設置会社から設置会社への移行と同一の株主総会で選任された取締役は移行後の形態の会社に選任され、就任したものとして扱われる」

よって、Cは設置会社の平取締役となるので、商業登記規則61条4項の適用はなく、就任承諾書は実印で押印する必要はなく、印鑑証明書の添付も不要である。
ただし、実印での押印と印鑑証明書の添付を求めた実例はあるかもしれないので、実際は事前に法務局に照会しておいてもいいだろう。

④登録免許税
金7万円
内訳
 取締役会設置      3万円(別表 ワ)
 監査役設置       3万円(別表 ツ)
 役員(監査役)変更   1万円(別表 カ)
※会計限定の旨も別表カ

では。