成年後見申立の諸問題2 類型の選択
2023/5/10 水曜日
まずはどの類型を選択すべきか、という問題である。
ご承知のとおり成年後見制度には、成年後見、保佐、補助の3類型がある。成年後見開始等の審判の申立では、どの類型で申立をするかを決める必要がある。ではどの類型で申立をすればいいのだろうか。
法律の条文では成年後見は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある」、保佐は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である」、補助は「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である」と規定されているのだが、これではいまいちよくわからない。
実務では医師の診断に基づきこれを決める。成年後見開始等の審判の申立の添付書類には医師の診断書を提出する。この診断内容に基づき類型を決めればOKだ。診断書の様式は家庭裁判所のホームページからダウンロードできるので、成年後見制度の利用を考えている方は、まずこの書式を手に入れてほしい。
「判断能力についての意見」という欄の「契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができる。」と診断されていれば、判断能力に問題はないのだから、成年後見制度の利用はできない。というか利用する必要がない。
「支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することが難しい場合がある。」と診断されていれば、補助類型を選択すればOKだ。
「支援を受けなければ,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。」と診断されていれば、保佐類型を選択すればOKだ。
「支援を受けても,契約等の意味・内容を自ら理解し,判断することができない。」と診断されていれば、成年後見類型を選択する。
この成年後見三類型だが、成年後見とは判断能力がほとんどない、補助とは判断能力が不十分、保佐とはこの中間と考えておこう。
私の拙い経験から見ると、家賃や水道光熱費などの毎月の支払を忘れる(忘れていて電気や水道の使用を停止させられそうになることがある)ことが日常茶飯事であれば、まちがいなく成年後見相当であろう。この状況であれば命の危機にかかわる問題である。早急に第三者による財産管理がなされた方がいいだろう。
また、人間誰しも年齢を重ねると若いころと比べて判断力が鈍ることがあるだろう。この状況であれば補助相当であろう。とはいえ、忘れっぽいという程度では補助相当とはならないだろう。判断能力に問題があるとはいえない。
この中間の保佐は以外と範囲が広く、具体的な事例が思いつかない。
ただし、実際はほとんどが成年後見のようだ。おそらく補助相当や保佐相当では成年後見制度を利用せずとも、親族等の協力によりなんとかなっているのだろう。また、判断力の衰えは外見からはわかりにくいということもあり、徐々に判断力が衰えていることを本人はともかく周囲の人間が気が付かないということもあるのだろう。
また、成年後見三類型は支援する人(成年後見人、保佐人、補助人のこと)の権限という観点から分類するとわかりやすいかもしれない。
成年後見は支援者(成年後見人)が全面的に契約等の法律行為を代理する。
保佐は支援者(保佐人)がいるものの、自身でできることは本人が行い、本人だけに任せておくと危ない法律行為を支援者である保佐人が代理する。
補助は保佐よりも自身でできることの範囲が多く、支援者である補助人が代理する事柄は少ない。要するに補助とは、本人が行うことができる事柄が多く、成年後見は本人が行うことはほとんどなく、保佐はその中間である。これは支援者からすると特に大きな違いである。補助や保佐では本人ができること、保佐人・補助人が行うべきことの違いを常に意識しなければならない。場合によっては本人がやや不合理な契約等を行っても、それが本人が行う事柄に含まれる限り、支援者はこれを是認しなければならない。一方で成年後見ではこのようなことはなく、支援者である成年後見人が全面的に法律行為を行う。
成年後見人や保佐人、補助人を勤める立場でいえば、圧倒的に成年後見がやりやすい。
成年後見制度は判断能力が不十分な人を保護する制度ではあるが、見方を変えると本人の経済活動を制限するものでもある。なるべく本人の自由な経済活動を保障するのであれば、保佐や補助が望ましい。近時はこの傾向が強いらしい。一方で支援者からすると本人の経済活動の自由をほぼ全面的に制限する成年後見がやりやすい。
本人の経済活動の自由を広く認めると、それだけ経済的損失のリスク(悪徳商法などに騙されたりすることはもちろん無用な散財など)は増える。本人の経済活動の自由を広く制限すると経済的損失のリスクは少なくなる。どちらがいいのか?このトレードオフの関係は診断書の準備の段階である程度コントロールができるので、この後の診断書の準備の頁も見てほしい。
次の頁では「申立人」についてである。
では。
