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成年後見申立の諸問題4 成年後見人等候補者となるべき者

2023/5/24 水曜日

成年後見人等候補者とは成年後見人となる者を申立人が推薦するようなことである。
誰を成年後見人に選任するのかは家庭裁判所が決めるのだが、実務ではある程度申立人の意向を尊重してくれる。
この頁では「家族が成年後見人になりたい」という場合と「成年後見人となってくれるような人がいない」という場合のそれぞれの注意点を紹介する。個人的な見解も含まれるので、実際の運用にあたっては要注意だ。

まずは、「家族が成年後見人になりたい」という場合から。
家族が成年後見人に選任されているというケースは結構多い。成年後見人の属性(家族か家族以外の者か)の割合は最高裁判所が公表しているが、個々の成年後見事件により事情が異なることから、この割合はあまり重要視する必要はない。誰が成年後見人となることが本人にとって、周囲の者にとってベストなのか?という点で考えればいいだろう。

よくあるケースとしては高齢の祖父母、叔父叔母、両親に対して申立人である子や孫が成年後見人となるような場合であろうから、このケースを念頭にその注意点をあげる。

1 欠格事由に該当していないこと
欠格事由に該当すると絶対に成年後見人にはなれない。欠格事由は民法847条に規定されている。これによると未成年者はダメ。成年後見人は本人に代わり契約等のいろいろな法律行為を代理するわけだから、それなりに社会経験が必要ということだろう。

家庭裁判所で免ぜられた法定代理人というのはあまり聞いたことがないかもしれないが、過去に別の者の成年後見人に選任されていたが、事後的に成年後見人には相応しくない行為を行い、成年後見人を解任されていたような場合である。父の成年後見人を解任された者は母の成年後見人とはなられない。欠格事由なので、AさんとBさんの成年後見人に選任されている司法書士がAさんの成年後見事件でやらかしてしまいその成年後見人を解任されると、自動的にBさんの成年後見事件は欠格事由に該当してしまい、結果として成年後見人をクビになってしまう。そのためなのか、「解任」というのは滅多にない。もとより日本では「クビ」とはせず、自主的に辞めさせることが多いので、成年後見人も「辞任させる」ということが行われているハズである。「辞任」とは自発的に辞めることをいう。「させる」というのは強制的に行わさせることである。自発的に行うことを強制させる、ということである。何か日本語としてオカシイ・・・。

 破産者は自己の金銭管理能力に失格の烙印を押されたようなものである。他人の金銭管理など任せられるわけなかろう、ということである。破産に至った理由は人それぞれなので、欠格事由として一律に排除せずに、面倒でも個別の事情を考慮してもいいのではないだろうかとも思う。

 被後見人(本人)に対して訴訟をし、又は訴訟をした者並びにその配偶者及び直系血族というのは、本人に対して経済的な利害関係を有していること、端的にいえば本人に対して「金払えや!」という立場の者はダメということである。いわゆる利益相反関係である。

さて、成年後見になることができない者は、法律上は以上の欠格事由に該当している者だけであるが、ここからは事実上問題となるケースだ。欠格事由の派生論点である。

2 若年者
未成年者はダメだが、現在は18歳以上を成年者として扱う。高校生や大学生である。それでは実際に大学生が選任されるのだろうか。19歳の孫が祖父母の成年後見人に選任されるだろうか?
欠格事由は該当すれば絶対に選任されないというものにすぎず、該当しなければ必ず選任されるということでもない。19歳の大学生ではその社会経験の少なさから単独で選任されるということはないだろう。
しかし、欠格事由ではないのだから、他の者との複数後見や成年後見監督人がセットで選任されることにより、19歳の大学生が選任される余地はあるだろう。ケースバイケースである。

3 年長者
それでは本人よりも高齢の者が選任されることはあるのだろうか?
実はこれはよくあるケースだ。知的障害を抱えた子についてその親が、認知症となってしまった弟についてその兄が成年後見人に選任されたケースはたくさんある。
成年後見人は財産管理が主な任務といっても体力勝負という面はあるので、かつては高齢者は選任されないのではないか、と言われていたそうだ。
しかし現在では、親族が後見人に選任される際は成年後見監督人がセットで選任されることが一般的になってきたし、複数後見もよくあることなので結果として若年者と同様に、単独で選任されるということはないだろうが、複数後見や成年後見監督人がセットで選任されることにより、年長者が成年後見人にが選任される余地はあるだろう。これもケースバイケースである。

4 多額の負債を抱えている者
破産こそしていないが、多額の債務を抱えている者はどうであろうか。成年後見人候補者は事前に負債の有無を申告する(申立時に成年後見人候補者事情説明書を提出する)こととなっている。本人の預貯金を自由に扱えるのであるから、多額の負債を抱えていて、首が回らないような状況の者はキケンということだろう。
しかし、住宅ローンを抱えていることは一般的だし、個人事業や会社経営などで事業用資金として多額の負債を抱えていることはよくあることだ。これらを一律に排除していては、成年後見人となる者がいなくなってしまう。単なる消費や浪費のための負債は問題だが、投資のための負債は問題ないと思われる。なので、住宅ローンや事業用資金などの投資のための負債があっても堂々と申告(返済状況が順調であることも付け加えておけばベストだ)すべきであるし、これを理由に成年後見人に選任されないということはないであろう。しかしこれらの負債を無いと虚偽の申告をしていて、これが事後的に発覚するようなことがあれば、それは別問題であろう。

5 相続手続が未了の者
父が亡くなり、母とその子が相続人となっているが、預金や不動産の相続手続が未了なので、遺産分割手続を行うために認知症の母のために成年後見人を選任する必要があるということはよくあるだろう。この場合母と子は遺産分割の当事者となり、子が成年後見人となり、母と遺産分割協議をすることはできない。利益相反となるからだ。(民法826条)このような母とこの関係は潜在的な利益相反関係ともいうべきであり、この場合は子は母の成年後見人には選任されるのだろうか。
結論から言えば、この場合は成年後見監督人が選任されればその成年後見監督人が成年被後見人である母のために成年後見人である子と遺産分割協議を行う。(民法851条)
そのため、潜在的利益相反関係にある場合でも成年後見監督人とセットでその子が成年後見人に選任されることはあるだろう。また、選任前の審問で家庭裁判所に利益相反ということをキチンと理解していることをアピールすれば家庭裁判所も安心して選任することができるであろう。

まぁ、結局のところ親族が成年後見人に選任される際はいろいろな問題はあっても、複数後見や成年後見監督人の選任ということで、大体が解決するので、親族が成年後見人が選任される際は成年後見監督人の選任があると、覚悟しておこう。

親族であれば、成年後見人にはすんなりと選任されるであろうが、司法書士や弁護士や社会福祉士などの所謂専門職を除くと、知人友人など血縁関係がない第三者は選任されるだろうか。
これは実際の選任件数についてのデータがないのだが、おそらく選任されるようなことは皆無であろう。

親族でも欠格事由に該当すれば選任されないが、欠格事由に該当していなくとも選任されない場合がある。むしろ親族特有の理由ともいうべきことがある。それが次だ。

6 選任について他の親族から反対の意向が示されている場合
老親の介護方針、資産管理方針などについて兄弟姉妹の間で意見が対立しているような場合、遺産分割の前哨戦のようなものが行われているような場合に、成年後見人に選任されるとこれらについて優位に立てると思って成年後見開始の審判を申し立てるようなことはあるだろう。
このような場合は成年後見人に選任されても問題は解決せずに、むしろ親族間の対立が激化するおそれがある。かつては家庭裁判所はこのようなことはあまり深く考えずに親族を成年後見人に選任していたのだが、他の親族から「なんでアイツを成年後見人に選任したんだ!」という申出(苦情?)の対応に苦慮していたそうだ。そんなことから、いつのころからか、成年後見開始の審判の申立時には申立人以外の親族の意向を確認するようにしている。具体的には成年後見開始の審判の必要書類に親族の同意書の提出を求めている。
内容は成年後見制度を利用すること、成年後見人には申立人が推薦する者が選任されることについての意見が求められている。
申立人以外の親族から「反対」が示されるとどうなるのか?
結論から言えば、成年後見開始の審判は中止されない。申立によれば認知症等で自己の財産管理がままならない人がいることは判明していて、この人を保護する必要性があることには変わらない。成年後見人の選任自体は必要だ。
しかし、反対が出ている以上、親族間の関係が険悪であることは推測されるので、申立人が推薦した人物(申立の際の成年後見人候補者)は選任されない、ということになる。
申立の際の成年後見人候補者が申立人以外の者、例えば成年後見制度利用を相談していた司法書士などであってもその者が選任されることはない。
この場合は家庭裁判所が弁護士、司法書士などその事件に適した人物を選任する。家庭裁判所はこういった事態に備えて、成年後見人候補者をストックしているのだ。各士業団体にこういった事態に成年後見人に就任できる人物のリストを家庭裁判所に提出しているのだ。余談ながら私は司法書士会(司法書士会の場合はリーガルサポートという外郭団体)でこのリストの作成・提出事務を担当していた。
要するに全く知らない第三者が出てくるということだ。この第三者は申立人やほかの親族から事情を聞いて、手探りで後見事務を始めることになる。行動指針としては親族の意向よりも、「本人にとってベストは何か?」ということである。まぁ、言うは易し行うは難しだが。

本頁をまとめると、多少問題がある人物でも複数後見や成年後見監督人がセットで選任されることで成年後見に選任されることはあるが、親族間で意見が対立しているとそうはいかないということだ。
成年後見制度利用の際は親族間でよく話し合っておくことが重要だ。

では。