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成年後見申立の諸問題5 診断書の準備

2023/6/12 月曜日

成年後見開始の審判申立の書類の準備の中で、司法書士では準備できないものに診断書がある。戸籍や住民票などの取得は日常的な業務だし、財産目録等は本人や親族、関係者からの事情聴取を行えばある程度のものは用意できるし、申立の段階なので完璧なものは求められていない。むしろ完璧なものを作成することは無理ゲーである。

診断書は医師が作成する必要があるので、かかりつけ医がいれば、同医師に作成を依頼しよう。親族やケアマネージャーや介護士等の本人以外の者からの依頼でも作成に応じてくれるだろう。診断書はどんな書式でもいいのではなく、成年後見申立用の書式でなければならないので要注意だ。最近では成年後見申立用の診断書の書式を持っている医師もいる。
書式を持っていない医師へは書式を渡す必要がある。とはいっても家庭裁判所のホームページからダウンロードすればいいので、それほど大変ではない。

診断書作成依頼では併せて鑑定の引受も依頼しておこう。鑑定は所謂精神鑑定であり、成年後見開始の審判申立ての手続の中で実施されるものであるが、その実施割合は50%強程度といわれている。ということは半分近くは鑑定を実施しないで審判がなされているということだ。ただしこれはかなり昔の情報であり、しかも東京家庭裁判所での運用なので、よその家庭裁判所では異なるであろうし、東京家庭裁判所でも現在は異なっているかもしれない。
ところで鑑定が実施される場合と実施されない場合の違いは何であろうか?
これは診断書が作成される「診断」と「鑑定」違いを理解しておくと答えが見えてくる。

端的にいえば、「診断」はザックリとしたもので、類型選択の指針である。「鑑定」は診断により選択された類型が本当に現在の本人の判断能力にマッチしているのかを慎重に確認するものである。具体的には診断書の診断が「三類型のいずれかの境目あたり」というような場合には鑑定を実施し、類型を断言しているような診断であれば鑑定は実施しないということである。
診断結果が「判断能力は著しく低下していて、常に他人による支援が必要」などと記載されていれば、保佐なのか成年後見なのかはイマイチ判然としない。またよく行われる長谷川式簡易知能評価スケールは高得点だが、成年後見相当の診断となっていれば、これも保佐なのか成年後見なのかはイマイチ判然としない。こういう場合には鑑定によりシロクロつけようということだ。一方で認知症がかなり進行していて明らかに後見相当である、という診断結果であれば鑑定をするまでもない。
衰えてきた人間の判断能力を3類型のいずれかに明確に分類することはなかなか難しい。
被保佐人とされている人と被補助人とされている人とそれぞれ話をしてみても、ハッキリと保佐と補助の違いは見いだせない。繰り返しだが難しい。
 一方で類型によって支援者である成年後見人、保佐人、補助人の権限はかなり異なってくるし、本人が一人でもできる法律行為の範囲も異なってきて大きな影響を及ぼす。

類型の決定は難しいが、重要なことなのでキッチリと決定しなければならないということだ。
先の頁でも触れたが、この診断書の診断結果に応じて申し立てる類型を決めるので、申立人となるべきものがいない問題などを診断書の診断によりある程度解決できる。もっとも類型の決定は本人の判断能力の程度と必要となる保護の度合いから決めるべきであり、申立人いない問題を解決することのみに重きを置くことには感心できない。

ところで診断書作成の費用はどの程度であろうか。これは作成する医師次第なのだが、概ね数千円程度のところが多いようだ。この費用は申立費用の一部なので申立人負担であるが、実際は本人の資産から支出されることが多いようだ。申立費用については別の頁で触れる。

診断書はあまり古いものでは意味がない。人の判断能力は刻々と変化するのだから、数年前の診断書では現在の本人の判断能力を示すものとはいえない。家庭裁判所では申立日から遡って3ヶ月以内に作成されたものでなければならないとしている。つまり診断書が作成されてから3ヶ月以内に必要な書類を準備し、成年後見人等候補者を決めて申立をしなければならない、ということだ。
これはかなりタイトなスケジュールである。なので、実務では申立人となるべき者や成年後見等候補者を決めてから(またはある程度の目処をつけつつ)必要な書類の準備に着手しつつ、診断書の作成依頼も行うという方法をとる。

診断書は成年後見開始の審判申立ての書類のうち根幹をなすものであるので、その取得もいろいろな問題や論点があるということがご理解いただければ本頁の目的は果たせたことになる。
次回は診断書以外の書類の準備についてである。

では。