成年後見申立の諸問題7 申立費用は誰が負担するのか
2023/7/16 日曜日
成年後見開始の審判申立には様々な費用が発生する。結論からいえばこれは申立人負担である。本人の負担ではない。ここは誤解が多いところだが、申立人の負担である。
制度の恩恵を受けるのは本人であり、必ずしも申立人の利益になるとは限らない。それでも費用は申立人負担である。何か理不尽な気もするが、家事事件とはこういったものだから仕方がない。
では、実際にどの程度の費用がかかるのだろうか。
①官公署交付書類
住民票や戸籍謄本など官公署で取得する書類はいずれも交付手数料は数百円程度であり、通数も多くはないはずだ。これらを取得するための交通費や郵送で取得する場合の通信費もあるだろう。いずれにしても多くても数千円程度であろう。
②官公署交付書類以外の書類
前の頁で解説をした書類は申立人自身が用紙をダウンロードして書くので、費用はかからない。紙代やインク代は費用とはいわない。
③切手印紙
手数料は800円分の収入印紙を用意する。代理権付与の申立等もするのであれば、さらに800円かかる。切手は裁判所の指定した組み合わせを用意する。これは各裁判所で異なるようなので、事前に確認しておこう。大きな裁判所にある売店ではこれらの組み合わせで販売されていることもある。さらに登記手数料として2600円分の収入印紙も用意する。これは成年後見開始の審判後に裁判所が法務局に成年後見登記を嘱託するための費用だ。嘱託という言葉は聞き慣れないが、役所がほかの役所に事務を依頼することと考えておけばいい。
東京家庭裁判所での成年後見類型の申立であれば800(収入印紙)円+2600円(収入印紙)+3270円(切手)=6670円である。
余談だが、切手が多いように思われるかもしれない。これは何に使うのか?という疑問がわくかもしれない。多くは成年後見開始の審判書の特別送達のためである。特別送達とは裁判所からの正式な通知を郵送することであり、特別な書留と考えておけばいい。残りは同意書がない親族への照会などに使うのだろうが、照会がなければ特別送達以外にはほぼほぼ使われない。だから余ることが多い。余った切手は費用負担者である申立人に返される。
④診断書作成費用
診断書は主治医に作成してもらうのだが、これにかかる費用は当該主治医次第である。私の知るところでは数千円程度の医師が多い。タダという医師もあるし、1万円以上という医師もいる。これは主治医に確認しておこう。
⑤鑑定費用
鑑定費用は10万円から30万円のようである。診断書と同様に鑑定を実施する医師次第である。診断書に比べるとかなり高額なような気もするが、それだけ診断書作成には医師の時間と労力を拘束するということだ。記載事項も多いし、作成の指針とする手引き書などはウンザリするほどの分量だ。
鑑定の実施率は各裁判所によって異なるようだ。東京家庭裁判所では50%くらいであると聞いたことがある。鑑定は申立書類提出後に家庭裁判所が実施するかどうかを決めるので、実施が決まった段階で鑑定費用を裁判所に納めることになる。
⑥司法書士等に依頼した場合
②の書類の作成を司法書士等に依頼した場合の費用は、各司法書士次第である。
これらの書類作成には本人や関係者のところへ赴きインタビューがひつようになり、場合によっては複数回足を運ぶこととなる。しかもその回数はケースバイケースになるので、一律に「●円」と提示することが難しい。地域差もあるが東京都内の司法書士は10万円から30万円程度であろうか。かなりブレがあるが、それだけ事前に見積もることは難しいのだ。
成年後見開始の審判申立に要する費用はこんなもんだろう。
クドいようだが申立人負担である。本人負担ではない。鑑定がなく、司法書士等に依頼しなければ1,2万円程度であろう。鑑定があり、司法書士に依頼すれば30万円近くにもなるだろう。本人と交流が疎遠になっている場合でも4親等以内の親族でも申立人資格はあるが、実際に疎遠になっている本人のためにこれらの出費をするだろうか。申立人がいない問題の一因でもあるだろう。
それでは全部が申立人負担なのかといえば、そうではない。事後的ではあるが本人に対して負担した分を返してもらえることがある。申立費用の本人負担の申立である。この申立をしておくと、上記申立費用のうち、③と⑤を本人負担としてくれるので、成年後見開始の審判後に本人から返してもらえる。実際は成年後見人等が返済の事務を行うのだが。
しかし、③と⑤以外は本人負担とはしてくれない。鑑定がなければ③だけなので、全体の金額からすれば大した割合ではない。
では実際は③と⑤以外はどうしているのだろうか?これについての公式な見解はないが、申立前に本人の預金から上記の申立費用相当額を何らかの方法で払い出しておき、申立人がこれを取得し、支払に充てるということが行われているようだ。家庭裁判所も後見開始の審判以前の本人の預金口座からの出金についてを監督の対象としたということは聞いたことがない。もちろん、審判直前までに2,30万円の払出があれば「これは何だろう?申立費用に充てたのかな?」とは思うだろうが、あえて不問に付すしているのだろうか。
実際はこのようにして、申立人の負担にはならないようにしていることもあるだろう。
しかし、まったく無問題ということではない。慎重に行うべきである
これで成年後見申立の諸問題のシリーズを終える。
成年後見開始の審判申立て手続は日々進化?複雑化?している。
これまで書いてきたことが、数年後には異なっていることは十分に考えられる。
なので、成年後見開始の審判申立てをするのであれば、必ず家庭裁判所のホームページ(後見サイトでググってみる)に目を通しておくべきである。このホームページは閲覧者が多いせいか、数年前と比べるとだいぶわかりやすくなっているぞ
