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テレビ電話による本人確認情報2

2023/9/03 日曜日

前回の続き。

 この頁は東京司法書士会の会則や規則を前提に進める。「東京司法書士会会則」の第106条の2には「会員は、業務(相談業務を除く。)を行うに際し、依頼者及びその代理人等の本人であることの確認並びに依頼の内容及び意思の確認を行い・・・」とある。
 そして「東京司法書士会依頼者等の本人確認等に関する規程」は本人確認の方法として4条(1)に次のように規定している。

ア 依頼者等と面談し、第7条第1項に定める本人確認書類の提示を受ける方法
イ 上記アの方法によらない合理的理由がある場合には、第7条第1項に定める本人確認書類又はその写しの送付を受けて当該書類の写しを第6条に定める記録に添付するとともに、当該確認書類に記載された住所に宛て、当該依頼者等に対し、転送不要扱いの書留郵便(簡易書留郵便含む。)等により文書送付を行い確認する方法
ウ 上記ア及びイの方法によらない合理的理由がある場合には、司法書士の職責に照らし適切と認められる方法

 申請人が法人であってその代表者が施設等に入所・入院中ということもあるだろうが、とりあえず申請人が自然人ということを念頭に置く。

また、意思確認の方法として4条(2)には次のように規定している。
(1) 事務の依頼を受けるにあたり、自然人たる依頼者又はその代理人等に対し面談をする方法
(2) 前号の規定にかかわらず、合理的理由がある場合には、依頼者等の本人確認書類の原本又は写しを取得するとともに依頼者等に対し電話をし、本人固有の情報を聴取するなどして本人であることの確認を行った上で確認を行う方法、その他これに準ずる方法であって、司法書士の職責に照らし適切と認められる方法

 本人確認・意思確認と一括りで論じられるが、規定上や制度上は別ものである。方法もそれぞれ規定されていることからも両者は別ものであると理解できる。

まずは、本人確認から。
 本人確認の方法は依頼者(ここでは申請人=登記義務者)との面談が原則であり、合理的理由がある場合にはイやウの方法で行う。イとウの関係はよく分からない。面談によらない場合はイが原則でありウがその例外なのだろうか。規定を素直に読むとそのように読めるが、面談が原則であり、ウがその例外であって、イはかなり具体的な規定振りであることからその例示とも思える。とりあえず前者の考え方をを前提とする。
 いずれにせよ本人確認は面談によるのだが、これは唯一絶対の方法ではなく例外があるということである。

 さて、この面談というのは直接面談であることには間違いない。この規則ができた頃にはテレビ会議やWeb会議などはほとんど知られておらず、完全に想定外であったハズである。それではテレ面はどうなのかということである。
 その前に本人確認を電話で済ませることは可能なのかということを検討する。

 依頼者が遠方にいるのでアはできない(時々どの程度遠くであれば遠方と評価できるか、というしょーもない議論を見かけるが、これは個々の司法書士と依頼者との関係により相対的に定まるべきものであろう)。住所と居所が違うのでイもできない。となれば電話である。アもイもできないというのはウでいうところの合理的理由である。

 電話口で「あなたはAさんですか?」「はい、そうです」だけでは足りず、依頼者しか知らないようなことなどをいくつも質問すれば「司法書士の職責に照らしても適切」と評価できるのではないか。
 対面で身分証明書の提示を受けているにもかかわらず「あなたは本当にAさんですか?」とあれやこれや質問したら怒られてしまう。しかし身分証明書の顔写真と照合ができない電話での本人確認なんだから、多少のしつこい質問はしないとマズいだろう。電話口の依頼者が「いい加減にしやがれ!」とブチ切れる一歩手前くらいしないと「司法書士の職責に照らしても適切」と評価されないかもしれない。意思確認の方法も原則面談であるが、合理的理由があることに面談によらない方法でも可能であり、同じように電話口であれこれ聴取することとなる。本人確認と意思確認と別ものであるにもかからわず、同じようなことをすることになるので、結果として本人確認・意思確認と一括りで論じられることになってしまうのだろう。

 なので電話による本人確認はハードルは高いかもしれないが、ウには該当するであろう。
電話での本人確認が可能ということには抵抗があるかもしれない。しかし規定上は否定していないし、より重要と思われる意思確認ですら電話での可能性が示されている。なので可能である。
 もっとも、面識がない者からの依頼で、しかもその依頼内容が売買による所有権移転登記とか抵当権設定登記とかであれば、これを電話で済ませようとはしないのではないだろうか。逆に依頼内容が単発の担保権抹消とかであれば、電話だけでもいいんじゃないか、とも考えたくなる。つまり依頼内容に応じてケースバイケースなんだろう。あくまでもこれらは事実上の問題であって、電話による本人確認・意思確認を否定することではない。
 否定派の多くは売買による所有権移転登記を念頭に、本人確認と意思確認の違いをよく理解せずに、漠然と禁止されていると思っているのであろう。
 もちろんこれは、会則上や司法書士法上の責任に限った話であり、なりすましを見抜けなかったこと等による賠償責任とは別問題である。

 電話とテレ面とでは顔やその他の容姿を確認することができるので、本人確認の方法としてはテレ面のほうが優れている。ということは少なくともテレ面もウには含まれる。
 
 問題はアの「面談」にテレ面が含まれるかということである。
 これが肯定されればテレ面&身分証明書の提示を受けることにより、本人確認はOKであり、イの実施を検討する必要はない。
 逆に否定されれば、まずはイの方法の実施を検討しなければならず、これがダメなときにウとしてテレ面での本人確認となる。単発の抹消登記申請でも、まずイを検討っていうのはチョット現実的ではない。

 本人確認の場合でもテレ面の場合は施設等からの要請や施設等で行うことや親族等の同席が必要となるのか、ということも問題となる。
 
 なお、意思確認の方法は本人確認とはチョット違うが考え方はほぼ同じであろうから、意思確認については割愛。

 このように本照会は会則上の問題点については何も触れていない。日司連としては部署が違う、といいたいのかもしれないが、本人確認情報は不動産登記法に限ったことだが、本人確認や意思確認は不動産登記のみならず商業登記やその他の業務でも日常的に行われるものである。頻度は圧倒的に多い。部署が違うというのであれば違う部署で同時並行で検討してほしかった。会則は各単位会で定めるものであるから、各単位会で検討せよ、といいたいのかもしれないが、会則の文面は日司連が策定しているのであろうから、立法担当者の意見として何らかの指針は示すべきであるし、各単位会ごとの判断で進めると単位会ごとで運用が異なることを肯定してしまう。果たしてこれでいいのだろうか。

 既にテレ面での本人確認や意思確認はたくさん行われているであろう。なので、今更要件などを示せば混乱を招くかもしれない。 

 一方で、この手のものは個々の司法書士の判断の範疇なのかもしれない。むしろそう考えるべきかもしれない。なので司法書士会があれこれと指針等を示すべきではないのかもしれない。

 結局のところ本照会ではチョットだけ前進または後退したものの、重要なところは何一つ変わっていない、触れていない、ということが感想である。本人確認・意思確認は司法書士にとってはとても重要なことなので、引き続き検討を進めておきたい。とりあえずこれでお終い。

では。