減資1 増資後に減資?
2023/9/27 水曜日
だいぶ前だが、業務の関係で官報を眺めていたところ不思議な公告がなされていた。
株式会社Xの資本金の額、資本準備金の額の減少の公告であったが、内容は次のとおりである。
令和5年9月某日の官報
X社は資本金を7500万円、資本準備金を7500万円減少する
効力発生日は令和4年10月10日
一緒に掲載している最終の貸借対照表の資本金は1000万円で資本準備金は0円と掲載されている。
あれ?資本金が1000万円しかない会社が資本金を7500万円、資本準備金を7500万円も減少することはできるのだろうか?
X社はIR広報などをしていないので想像でしかないが、おおよそ次のような事情や手続をしたのだろう。
まず、X社は設立時から資本金は1000万円以下だったのだろう。もしかしたら設立時はもっと低かったが、増資をしても1000万円を超えないようにしたのだろう。
そしてこの会社は令和5年3月31日に決算を迎え、官報に掲載されている貸借対照表が作成された。(その後の定時株主総会で承認された)
令和5年4月1日以降に1億5000万円の出資を受けた。資本金1000万円の会社が1億5000万円もの出資を受けるというのは何とも景気のいい話である。親会社からの出資かもしれない。
効力発生日は不明だが、本公告がなされた9月よりも前であろう。おそらく直前の可能性が高い。
このとき資本金をあまり多く計上したくないことから、1億5000万円の半分の7500万円を資本準備金に計上したのだろう。資本準備金などはこういったときでもない限り計上されないだろう。
資本金に計上したくない理由は以前の頁でも紹介したが、登記申請の際の登録免許税と資本金の額に応じて課税される法人住民税の均等割の節税であろう。
登録免許税は52万5千円も安くなるし、法人住民税は従業員数にもよるが、1億円を超えると毎年40万円(従業員が少ないと16万円)だが、1000万円を超えなければ毎年12万円(5万円)となる。まぁ、法人税の均等割は資本金と資本準備金の合計額を基準に課税するようなので、増資の際に出資を受けたお金を資本準備金に振り分けただけでは節税とならない。その後に減資をしなければならない。減資とは正確には「資本金の額の減少」と規定されているが、「減資」といわれることが多いので、以降このシリーズでは「減資」という。
資本金の額を多く計上するメリットは登記記録の見た目とそれに伴う信用力を高く見せる以外には会社が許認可を得る際の要件や公共事業の入札要件くらいであり、こういったものに縁がなければ多く計上する必要はない。特に1000万円、1億円、10億円を超えるような場合は法人住民税の均等割が飛躍的にあがるので要注意だ。
こうして、X社は1億5000万円の増資により、資本金8500万円、資本準備金7500万円となった。
減資公告に掲載する貸借対照表は、直前の定時株主総会で承認されたものを掲載するから、増資があった以前(資本金1000万円時代)のものが掲載される。というかこれでOKだ。公告掲載時点の貸借対照表を掲載する必要はない。むしろ貸借対照表は定時株主総会で承認されなければ完成しないので、公告掲載時点の貸借対照表を作成して掲載することは完全な無理ゲーである。余談だが直前の定時総会後公告掲載時までに商号変更や代表者の変更があってもあくまでも直前の定時株主総会で承認されたものでいいので、旧商号や旧代表者が記載されていても無問題である。
だから、これから資本金を7500万円、資本準備金を7500万円減少するX社の貸借対照表の資本金は1000万円、資本準備金は0円となる。
要するにX社は増資を受けたもの登録免許税と法人住民税の均等割を低く抑えるために、一旦(可能な限り低く)資本金の増加を計上し、その後減資したのである。
短期間に資本金の額が増加したかと思ったら元の額以下までに減じている会社はこういった事情があるのだろう。次回以降は減資の手続を掘り下げてみる。
では。
