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減資2 減資の効果と目的

2023/10/24 火曜日

前回からの続き。

X社が減じた7500万円+7500万円はどこへ行ってしまうのか?出資してもらった1億5千万円ものお金は会社にある。
これは以前も書いたとおりであるが、その他資本剰余金に計上される。減資の効果は「科目間の移動」にすぎない。

これは貸借対照表で考えるとわかりやすい。
出資があればお金が入ってくるので、左側(借方=資産の部)の現金科目が増加し、右側(貸方=株主資本の部)の資本金科目も同額だけ増加する。この資本金科目に計上された額を同じ株主資本の部のその他資本剰余金科目へ振り替える。このあたりは当事務所ホームページで書き倒しているところだが、文字だけよりもイラストや動画で説明できればいいので、いずれはイラストや動画も制作したいところだ。

では、減資は何のために行うのか?
これは大きく分けて3つある。「節税」「配当・払戻の財源」「欠損てん補」である。

①節税
前の頁でも少し触れたが、法人住民税の均等割は資本金と資本準備金の合計額を基準に課税されるので、資本金と資本準備金に計上されている額をその他資本剰余金へ振り替えることによって資本金と資本準備金の額を下げることができ、法人住民税の均等割を少なくする(節税する)ことができるのだ。前頁のX社はおそらくこれであろう。

②配当・払戻の財源
配当とは文字どおり株主へ利益を配ることである。
払戻とは会社が株主のもっている株式を買い取ることである。
制度上は自己株式の取得とされているが、株主から見れば出資した資金の回収(投下資本の回収)に他ならないので、この頁では「払戻」という。
この「払戻」には株主総会の開催が必要なことなど手続が面倒なので、後日別の頁で紹介する予定だ。
配当・払戻は会社の「分配可能額」の範囲内の資金でなければならない。では分配可能額とは何か。
分配可能額とはその他資本剰余金とその他利益剰余金の合計額プラスαである。
その他利益剰余金とは繰越利益剰余金とも呼ばれ、ザックリいえば毎期の利益の積み重ねである。以前このあたりのことをニデック社についての記事でも触れたので、そちらも読んでほしい。(令和5年8月4日掲載「分配可能額 ニデック過大配当事件」)

つまり配当や払戻は毎期の利益の積み重ねと減資により資本金から振り替えられたその他資本剰余金の範囲内でしかできない。その他資本剰余金は合併差益や自己株式処分差益でも計上されることはあるが、合併や自己株式の処分をしたことがない会社では計上されていない。

資本金1000万円(株主Aが500万円、株主Bが500万円を出資 その他利益剰余金は0円)の会社で、Bが出資の返還を求めている
減資を行い資本金1000万円のうち500万円をその他資本剰余金に振り替えかえることにより、その他資本剰余金500万円の状態にする。これを財源にBから株式を買い取る、というイメージだ。もちろん、利益の積み重ねであるその他利益剰余金が計上されていればこれを財源にしてもいい。

減資の目的を配当・払戻としたが、正確には「分配可能額の確保」といったほうがいいかもしれない。減資により分配可能額を確保し、これを財源に配当・払戻を行う、ということである。

③欠損てん補
その他利益剰余金がマイナス計上されていることがある。これは会社成立後からの毎期の損益の通算がマイナスということであり、会社設立以来利益が出ていないということであり、かなりヤバい状況である。その他利益剰余金がマイナスのことを損失といったり欠損といったりする。正確には損失というべきだが、広く同意義で用いられているので、本頁でも「欠損」と呼ぶことにする。

以下余談。
欠損額とは会社計算規則151条に「分配可能額がマイナスの場合の絶対値」と規定されているので、欠損とは「分配可能額がマイナス状態」ということである。
損失とは「その他利益剰余金がマイナス状態」ということである。
どちらも同じじゃね?と思うかもしれないが、実は違う。損失が生じていれば欠損も生じているといことが多いだろうが、欠損は生じているが損失は生じていないという場合もある。例えばその他利益剰余金はプラスとなっていても(損失は発生していない)、自己株式をたくさん保有していると、結果として分配可能額がマイナス=欠損ということもある。
これとは逆にその他利益剰余金はマイナスで計上されていても、その他資本剰余金がたくさん計上されていれば、損失は生じているが欠損は生じていないということもある。
なので、本来は欠損と損失は同意義で用いてはならんのだが・・・。

ハナシはそれたが、このようなときにはその他資本剰余金と相殺してマイナスを消すことができる。これにより会社の経営状況はさておき、貸借対照表上は赤字(が累積状態)ではないように見えるようになる。
もちろん、貸借対照表だけを見ても会社の経営状況は分からない。しかし利益剰余金がマイナス計上されていると、それだけで印象はかなり悪い。新たな投資や銀行からの融資を期待することができない。利益剰余金がマイナスの会社は経営状況や事業内容にかかわらず門前払いである。貸借対照表の見た目は大切だ。

資本金1000万円 その他資本剰余金0円 その他利益剰余金-500万円、という会社において、減資により資本金を500万円減じる。そうすると・・・
資本金500万円 その他資本剰余金500万円 その他利益剰余金-500万円となる。このままではまだ欠損が生じている。そこでその他資本剰余金をその他利益剰余金に振り替える。そうすると・・・。
資本金500万円 その他資本剰余金0円 その他利益剰余金-500万円+500万円=0円となる。これで欠損はゼロになる。この剰余金の振替えは剰余金の処分といい、株主総会で決議する。

この方法を魔法の方法という人もいるが、本業の不振を出資で穴埋めするのだから、本末転倒であり、お腹のすいたタコが自分の足を食べているだけのような気もする。
禁止が会計の大原則である資本と利益の混同のような気もする。(会計基準は混同ではないとしているが・・・。)
それに何度も何度もできることではない。設例の会社ではあと500万円しかない。費用も時間もかかる。金子先生は欠損てん補目的の減資は業績の落ち込みから脱却したとき=底を打ったときに行うべし、としている。

このように減資とは節税、配当・払戻または欠損てん補を目的に資本金をその他資本剰余金へ科目移動することである。

これらの目的や必要性がないときでも、将来に備えてあらかじめ減資をしてその他資本剰余金を計上することもある。株主にとっては害とはならないので、時間と費用をかけてでも実行するだけの価値はある。よく見かける「機動的な資本政策のため」とはこのことだ。

会計士さんや税理士さんは「減資には有償減資と無償減資がある」と分類している。
これは会社からお金が流出するか否かの基準での分類である。
「配当・払戻」が有償減資、「節税」と「欠損てん補」が無償減資である。減資の本質が科目移動であることには変わらないので、その後の剰余金の処分などの手続を除けば有償無償の分類は登記手続に差異をもたらさない。税務上は大きな違いがあるので、会計士さんや税理士さんはこの分類を強調するのであろう。

その他資本剰余金を資本金に戻すこともできる。剰余金の資本組入れという手続である。
資本金、資本準備金、その他資本剰余金はお互いに移動が可能である。

資本金→資本準備金またはその他資本剰余金
これはこれまで書いてきた減資である

資本準備金→その他資本剰余金
これは資本準備金の減少という手続で減資とほぼ同じような制度・手続である

その他資本剰余金→資本準備金
これは資本剰余金の資本準備金の組入れである。

その他資本剰余金(資本準備金)→資本金
これが資本剰余金(資本準備金)の資本組入れである。会計科目上は減資と逆の流れである。その他利益剰余金を資本金に組み入れることもできる。

多くの司法書士のホームページにはこの手続の説明がなされている。登記申請が必要だからなんだろうが、ハッキリいってその他資本剰余金やその他利益剰余金を資本に組み入れる需要がどこにあるのだろうか?時間と費用をかけて減資の手続をしたのに、元に戻してしまうものだからである。意味がない・・・。これは資本金、資本準備金、その他資本剰余金はお互いに移動が可能ということの帰結にすぎない。

資本金の額を大きくしたいという需要でもない限り、その他資本剰余金やその他利益剰余金を資本金に組み入れる理由として考えられるのは、配当財源をなくすということくらいであろうか。資本金と計上されていれば配当の財源とすることはできないが、その他資本剰余金やその他利益剰余金と計上されていれば配当財源とすることができる。

その他資本剰余金やその他利益剰余金がたくさん計上されていれば、株主から配当せよといわれてしまう。しかし将来の資金需要に備えて会社に資金を留保しておきたいので、おいそれと配当してしまうわけにはいかない。そこで、配当可能な財源としていたものを配当不可能な財源へと変えてしまうことができる。

しかし、この方法も任意積立金などの制度によりより簡単に同様の効果を得ることができるので、あまり一般的ではない。なのでその他資本剰余金やその他利益剰余金を資本金に組み入れることはほとんどないだろう。

次の頁では減資の手続についてである。

では。