減資3 減資の手続
2023/11/09 木曜日
この頁では減資の手続の概略。
減資は資本金からその他資本剰余金への科目移動といったが、これは債権者にとっては重大な関心事項である。
資本金が100万円として計上されている会社の全部の財産を売っ払って、全部の負債を支払った後には100万円が残る計算になる。実際はこうはならないかもしれないが、理論上はこうなる。
しかも資本金として計上されている額は配当や払戻により減ることはない。(というか減ってはいけないハズである。)
要するに最後の最後まで会社に残っているはずの財産(金額)である。債権者にとっては最後の引き当てである。これを株主への配当や払戻に充てることができる(減資により資本金をその他資本剰余金へ振り替える)ようにされては困るのである。
だから減資を行うときは会社内部の決定である株主総会決議の他に会社外部である債権者の了承を得なければならないということだ。
そもそも減資について株主総会の決議、しかも特別決議など必要だろうか?
増資は既存株主にとって会社支配比率の減少などの影響を及ぼすので株主総会で決議するということには理解できるが、減資は単なる科目間移動なので、これ自体株主に及ぼす影響は軽微なはずである。その後に配当や払戻や欠損てん補があればそれはそれで株主には少なからず影響はあるのだが、これと減資手続は別である。
株主総会決議による必要性は見いだせない。むしろその他資本剰余金の資本組入れのほうが株主に影響が強い。にもかかわらず株主総会普通決議である。株主総会決議が必要でも特別決議を要する理由は見いだせない。まぁ、このように立法されているので仕方がないが・・・。
会社法447条3項は増資と減資を同時に行うときに限り、取締役会で減資の決議ができる旨規定しているが、これは閉鎖会社では使いにくい。減資を取締役会で決議できるとしても、増資をするには株主総会決議が必要なことに違いはない。閉鎖会社では株主総会を開催することはそれほど苦労しないはずだし。
これはさておき、債権者の了承は公告と催告によって取り付ける。
公告は「官報」という国が刊行している新聞のようなものに「●年●月●日に減資をするので、異議があれば●月●日までに申し出てね」という内容で掲載する。掲載すべき事項を減資公告事項と呼ぶことにする。具体的な記載例は「官報 減資」でググればいろいろな記載例がある。毎日数社以上が減資公告を掲載しているので実際の官報を見てもいいだろう。
会社は公告方法を定めているが、これは主に対株主なことが多く、債権者にとってはカンケーないので仮に会社が定めた公告方法が日刊新聞や電子公告でも官報に減資をする旨の記事を掲載してお知らせする。官報なんて見てる人いるの?と思うかもしれないが、官報には破産の情報なども掲載されており、銀行等の金融機関は毎日確認して、各自のデータベースに記録しているはずである。
催告は債権者一人一人に官報に掲載した内容と同じ書面(催告書)を送る。
異議は一定期間受け付けることになる。この期間を異議申述期間といい、1ヶ月以上は設けなければならない。
公告掲載と催告は同日同時にしなければならないわけではない。それぞれ1ヶ月以上の異議申述期間が設けられていればOKだ。
実例では公告掲載予定日のチョット前の日に催告書を発送して、異議申述期間は「本公告掲載日(または本催告書到達)から1ヶ月」とするのではなく、ある程度余裕を持った日を定め、この日までに異議を申し出よ、とするものが多い気がする。特に個別に発送する催告書だと到達した日が分からなくなり、到達した日から1ヶ月経過後の日も分からなくなるので要注意だ。1つ1つの催告書を配達証明付内容証明郵便で行えば到達した日も分かるしその証明も可能だが、分量が多ければその費用を考えると現実的ではない。
債権者の異議とは、「最後の引き当てを減らすとは何事だ!オレの債権の回収ができなくなるだろう!だから減資をするな!」ということである。
異議が出た場合は、弁済期が到来している場合は弁済をする。(というかこれは当たり前!弁済期が来たらサッサと弁済すべきである)
弁済期が到来していない場合は弁済してもいいのだが、担保が十分にあることや会社の支払能力に問題がないことを証明しなければならないので、債権者、特に大口債権者である主要取引先や取引銀行には異議を申し出ないようにネゴっておくべきである。
要するに減資をする旨を官報に掲載するとともに債権者へ個別に通知をして異議を受け付け、異議があれば債権者を安心させなければならないということだ。これを債権者保護手続という。
催告は公告を2つの媒体で行うと省略することができる。
公告は会社の公告方法が何であっても官報で行わなければならない。
しかし、公告方法を日刊新聞と定めている会社では官報の他に日刊新聞でも公告を行うと、各債権者への催告を省略することができる。これを二重公告という。
小口の債権者が多いとこの催告手続は厄介だ。催告書の発送費や事務は馬鹿にならないし、貸借対照表まで記載した催告書を債権者に送付することには抵抗もあるだろう。
異議がでればいちいちこれに対応しなければならないのだが、事前に全員にネゴっておくことは事実上不可能だろう。催告書の記載を工夫して債権者から異議が出にくいようにすべきともいわれている。
債権者が多いと催告漏れのリスクもある。たった一人の債権者への催告を漏らしていたからといって減資が無効になるのかは分からないが、催告漏れは避けたい。
会社によっては一定の額以下の債権者には催告書を送らないという基準を設けていることもあるようだ。万一「催告をしていないぞ!減資は無効だ!」と指摘されても小口なのでサッサと弁済して黙らせてしまえばいい、と考えているのだろう。また、給料も債権なので会社の労働者も債権者である。労働者だから催告する必要などないと考えることもあるだろう。
しかし、会社法上は小口の債権者や給与債権者には催告をしなくてもいい、とは規定されていない。独自の解釈で催告省略と決めないほうがいい。コンプラ意識は高くしておくべきだろう。
こんなときは二重公告を選択するといいだろう。官報の掲載費用は掲載内容や文字数行数にもよるが、大体10万~20万円くらい。20万円を超えることはないかもしれないが。
ただし、決算公告をしていない(ほとんどの会社がそうであろうが)と貸借対照表の要旨をも掲載するので、費用はもうちょっと高くなる。
日刊新聞への掲載費用は各紙によるが、高いところでは100万円以上のところもあれば、安いところでは官報掲載費用と同じところもある。公告方法として定めることができる新聞は限られていて、時事に関する日刊新聞と規定されていることから、業界紙やスポーツ紙はダメだが、地方紙はOKだ。時事に関する日刊新聞でも、新聞社が公告掲載を請け負っていないところもある。
日刊工業新聞という新聞は公告掲載費がかなり安い。ここは自社のホームページでも公告掲載費の安さをアピールしている。業界紙はダメなはずだが、東京法務局から「日刊工業新聞は公告掲載紙たり得る」という何ともビミョーな回答を得ているそうだ。これもホームページに記載されている。
多くの会社は公告方法が官報となっているので、このままでは二重催告はできない。
なので、減資に先立ち公告方法を変更する定款変更決議を行い、公告方法を掲載費用が安い日刊新聞に変更しておく。これにより二重公告が可能となる。登録免許税なども発生するので、結局は費用対効果である。公告方法を変更する具体的な方法は次の頁で触れる。
異議申述期間を1ヶ月以上設ける必要があるので公告と催告は減資の効力発生日の1ヶ月以上前にしなければならない。増資は1日でもできるが、減資は異議申述期間中に株主総会を行うとしても1ヶ月以上かかる。
実際は公告の準備などで2ヶ月近くかかる。減資ではスケジュール管理が重要である。特に年末や年度末や決算期までに完了させたいというときは特に重要である。
このように減資は内部手続である株主総会と外部手続である債権者保護手続を株主総会で決めた効力発生日までに実施する。この両手続は同時並行させてもOKだ。
先に公告・催告をして異議申述期間中に株主総会を行うこともできる。
減資をする際には減資の目的に適した効力発生日を先に定め、これに合わせたスケジュールを組むことから始まり、このスケジュールをこなしていくことになる。
では。
