減資4 公告方法の変更
2023/11/26 日曜日
この頁では二重公告をするために、既存の公告方法(実際は公告媒体といったほうがいいかも)である官報を日刊新聞に変更してから減資の手続を行う方法とその諸問題を紹介する。なお、開催する株主総会の回数を極力少なくし、登録免許税も最安になる方法を模索する。
公告方法の変更は定款変更であり株主総会特別決議でおこなう。減資も株主総会特別決議で行うので、この定款変更と減資を同一の株主総会で決議する。
1号議案 定款変更
公告方法 官報→日刊新聞
2号議案 減資 効力発生日 ●年●月●日 金●円減じる
これで公告方法は官報から日刊新聞へと変更した。この定款変更は効力発生に条件を付していないので即時効力発生=株主総会決議時に効力が発生する。
問題は日刊新聞による公告掲載はいつの時点から有効となるのだろうか?公告の相手ともいうべき債権者は定款変更があったことを知らないことから問題となる。
これは大きく分けて3つの説がある。1つは株主総会時点説で1つは公告方法の変更の登記申請時点説、もう1つはその登記完了時点説である。
株主総会時点説によれば、やっていることは定款変更であり、これは会社内部の手続(株主総会決議)だけで完結するものであり、会社の外部者である債権者が知っていようがいまいがカンケーないということである。この説によれば株主総会の日が掲載開始可能日となるので、掲載日をコントロールしやすい。
登記完了時点説は、登記の本来の目的である公示機能に着目したものであり、あくまでも債権者が知ることができる時点を基準に考えるべきとするものである。この説によれば登記完了時=公告方法が日刊新聞に変更した旨の記載のある登記事項証明書が手に入る日から掲載できる。
株主総会後に登記申請してこれが完了した後なので、掲載開始可能日がいつになるのかは登記所の混み具合次第だし、登記申請は完了予定日よりも前に完了することもあるが、それがいつになるのかは分からない。株主総会時点説と比べると掲載開始可能日は1,2週間くらい遅くなることになる。タイトなスケジュールで減資を行うときはこの1,2週間の違いは結構デカい。
登記申請時点説はこの2説の折衷である。この説によれば登記申請をした日から掲載できる。株主総会時点説と同様に申請人側で掲載日をある程度コントロールできることになる。
しかしこの説は、会社内部の手続で完結するものという点からも、登記の公示機能という点からも上手く説明できない。
さて、いずれの説でいくべきかだが、私の知り合いの司法書士からは株主総会時点説を推す声が多い。
ところが、登記実務ではなんと登記申請時点説が採られている。金子先生の「組織再編の手続」という本に商事法務1481号の記事が紹介されている。
これは驚きである!実例もあるそうだが、この見解自体がそれほどメジャーでもないので、事前に登記所に確認をしておいてもいかもしれない。まぁ、安全策を採るのであれば登記完了時点説で行くべきだが、この説の最大の弱点は他の2説と比べて、公告掲載ができる日がだいぶ遅くなってしまうので、スケジュールに余裕があるときに限られてしまう。
登記申請のタイミングについて登記申請時点説と登記完了時点説では、先に公告方法の変更の登記申請をしなければならないことになる。株主総会時点説を採用した場合はその後の減資の登記と同時(同一の申請書)に申請してもいい。登録免許税の節約にはなるだろうが、異議申述期間が1ヶ月以上あるので、公告方法の変更登記については登記期間に間に合わなくなる。
結局のところ、どの説でも登記申請は2回に分けて行わなければならない。当然だが株主総会議事録は2通用意しておくか、1通用意して1回目の申請では原本還付請求をしなければならない。まぁ、この場合の株主総会議事録は押印しなくてもいいので、プリントアウトすればいいのだが。
このように株主総会→公告掲載という流れだが、これは日刊新聞に掲載する方であり、官報への掲載は株主総会よりも前でもOKだ。公告方法の変更の手続をしている間に先に官報で公告してしまうのである。同じ日に掲載しなければならないわけではない。
決算公告をしていなければ、貸借対照表の要旨まで掲載するので掲載までの時間がかかるので、官報での公告は早めにしておこう。
決算公告だけを先行させてもいいかもしれない。多少費用はかかるが、減資公告掲載までの時間を短縮できる。
減資の手続き完了後に公告方法を元の公告方法である官報に戻す会社もあるそうだ。掲載料格安の新聞社であれば掲載費用にそれほど差はないが、いろいろな公告(一番多いのは株主総会招集を行う場合か決算公告だろう)をする際にいままで馴染みのある官報へと戻すのであろうか。はたまた大口債権者からの要請だろうか。
元に戻すといっても定款変更には違いないので株主総会を開催する必要がある。簡単に開催できる会社でなければ次の株主総会(おそらくは次回の定時株主総会)で変更すればいい。
ここまでは実務ではたまにあることのようだが、この公告方法を元の方法に戻す決議まで同一の株主総会でできないだろうか?そんなことを考えてしまう。
株主総会はこんな感じである
1号議案 定款変更
公告方法 官報→日刊新聞
2号議案 減資 効力発生日 ●年9月30日
3号議案 定款変更
公告方法 日刊新聞→官報 効力発生日2号議案の減資の効力発生を条件とする(効力発生日は●年10月1日)
株主総会の決議に条件や期限を付すことは法律の強行規定、その趣旨、定款又は株式会社の本質に反する不合理なものでなければ差し支えないという。(最判昭37・3・7)
この3号議案は公告方法を元に戻すだけである。1号議案で公告方法を変更した動機は二重公告による個別催告を省略するためのものである。これは会社法が定めている方法であり、やましいものではなく、「法律の強行規定、その趣旨、定款又は株式会社の本質に反する不合理なもの」ではないし、これを元に戻すこともやましいことではない。同一の株主総会で条件付きで決議をして何が悪い!ってところだ。
しかし、登記申請は2回に分けるしかない。1回目は最初の公告方法の変更を2回目は減資と公告方法を元に戻す変更である。なので、公告方法の変更にかかる登録免許税は2回分支払う。
先に紹介した株主総会時点説を採用し、すべて1回の申請で行えば公告方法の変更の登録免許税は1回分だけで済む。しかしこれでは1回目の公告方法の変更の申請については登記期間を遵守できない。どれほど短くとも3,4週間程度の遅れだが、登録免許税を1回分で済ませようというセコさ丸出しで、登記官を怒らせてしまうだろう。過料は免れないだろうし、その勢いで株主総会時点説も粉砕されてしまい、公告も無効とされ、その結果減資も却下されてしまうかもしれない。
なので、株主総会は1回でもOKだが、登記申請は2回に分けるべきである。
以上長々と書いてきたので最後に雑感を。
減資はどのような目的でも会社の経営状況や株主との関係に大きく影響するので、経営者にとっては検討すべきことであることに違いない。
そもそもこのシリーズのきっかけはとあるホームページで「減資を解説します」といっておきながら、減資とは何か?その効果は?ということに一切触れず、いきなり「株主総会特別決議と債権者保護手続が必要」とはじめていたものを見たことである。
減資とは何かをおさえておかねば、要件もアタマに入ってこないハズである。
減資とは純資産の部の係数操作にすぎない。しかしそのためにはいくつもの手続をこなしていかなければならない。たかが係数操作されど係数操作である。これが重要だ!これがいいたかったのである。
といったところで減資のシリーズもこれで終わりである。
では。
