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代表取締役の住所非表示5

2024/6/12 水曜日

前回からのつづき。

 前回で「ひそ」のシリーズは終えたはずだが、4月16日に法務省から今回のパブコメの結果とそれを受けた商業登記規則の改正案が公表された。パブコメに対する法務省の回答が記載されていて、コレが結構オモシロかったので紹介することにした。
 
 今回は773件のパブコメが寄せられたそうだ。773件なので773名、773団体なのか、1名から複数のパブコメが寄せられて773件なのかは分からない。この手のパブコメで773という数が多いのか少ないのかも分からない。
 パブコメを寄せた者には私のような司法書士等の実務家もいれば、先に紹介した東京司法書士会のような職能団体もあれば、商業登記には直接の関わりがない弁護士等の法律実務家もいれば、起業家や起業家のサポート団体等の財界もいるだろう。このようにいろいろな立場からのパブコメなので、当然賛否は分かれている。

それでは一つ一つみていこう。

パブコメ1の要旨
住所公表は起業を躊躇させるので、原則非公開にすべし

これは賛成意見なので財界からのパブコメであろう。これが冒頭なのは単なる偶然なのかそれとの法務省に何らかの意図があったのか?

パブコメ2の要旨
代表取締役が引越をしても手続不要で助かる

これは盛大な勘違いである。今回の規則改正でも代表取締役の住所が登記事項であることには変わらない。そのため、「ひそ」が実施されても代表取締役の住所に変更があっても住所変更の登記申請は必要である。法務省もコメントで登記申請が必要であることを注意喚起している。

パブコメ3
「ひそ」申出をいつでもできるようにせよ

心情としては理解できるが、これまでに「ひそ」のあり方や位置付けを書いてきたとおり、無理な注文である。もっとも、法務省が単に「今後の参考とする」ではなく、「引き続き検討していく」としている点は注目に値する。

パブコメ4
会社の実在性確認のために不動産登記法の事前通知のような制度を導入せよ

 申請人側の負担が少なくて良案ではあるが、その反面登記所の負担が増える。なので法務省から軽く一蹴されている。このパブコメ4は現役の司法書士が出していると思われるが、「申請」と「申出」を混同していることがザンネンである。

パブコメ6
過去の住所や閉鎖された登記簿も「ひそ」にしろ

心情としては理解できるが、「ひそ」は本来は就任時にのみ選択可能という私の考えからすれば無理な注文である。法務省は軽く一蹴(多いので以降「法蹴」という)である。

パブコメ7
一定期間ごとや再任時に住民票などで代表取締役の住所を確認すべし

これは「ひそ」についての意見ではないと思う。当然ながら法蹴である。

パブコメ8
消費者被害や企業犯罪等で代表者の責任を追及するためにも、「ひそ」は適切ではない。
また、利害関係を有する第三者が代表者の住所を知る術を規定せよ

このパブコメに対する法務省の回答全体に通じていえることだが、第三者が代表者の住所を知る術を用意せよという意見に対して、登記簿付属書類の閲覧ができるぞ、という回答がなされている。このパブコメを寄せた人は条文をキチンと読んでいたのだろうか?

パブコメ9
「ひそ」が実施された会社の印鑑証明書に代表取締役の住所を記載せよ

制度論としてはオモシロい。これも法蹴なのだが、「大規模な改修とコストが必要だが」、とことわりを入れているので、予算が付けば可能ということが言いたいのかも。

パブコメ10 11
士業や銀行業等の特殊な業種に限り住所が記載された登記事項証明書の取得や付属書類の閲覧ができるようにせよ

これもどだい無理な話である。当然ながら法蹴である。

パブコメ12
株式会社以外も適用対象とせよ

これは私が前回までに展開していたことであり、大いに疑問だし関心もあるところである。
法務省は施行状況を踏まえて引き続き検討していくらしい。単に「今後の参考」ではないので、今後の動向に注目である。

パブコメ13
消費者被害の回復が遠のく。住所の開示請求が法律職の既得権になる。

消費者被害の回復に手間暇がかかるというのは分からんでもないが、住所開示請求とは何を指すのだろう?弁護士照会のことかな?いずれにしても既得権となり安定した収入とはならんだろう。このパブコメを寄せた人はどういった人なんだろうか?

パブコメ14
「ひそ」の申出について登記官が「適当と認めるとき」とはなにか、登記官に裁量が認められるのか?具体例な基準を示せ

これについては必要書類の充足を指すものであり、登記官に裁量を認める趣旨ではないそうだ。私もこの点を指摘していたのだが、まぁ、妥当であろう。だったら「適当と認めるとき」などと規程しなければいいのに・・・。

パブコメ15
実質的支配者についての確認を求める根拠は何か

これは大いに関心がある。
法務省が言うには、消費者被害について実質的支配者が本来の行為者であるときに実質的支配者に関する書面を利害関係者に閲覧させることにより、責任追及しやすいようにするため、だそうだ。

 ひそが実施されていない会社については債権者等の利害関係がある者であっても、実質的支配者が何処の誰であるかについて調べることはできない。実質的支配者に関する書面が法務局には提出されていないからである。「ひそ」の悪用を防ぐために、「ひそ」の恩恵を受けるのであれば、それと引換に実質的支配者に関する書面をよこせ、ということであろう。
 もっともらしいことを言っているようであるが、大いに疑問である。ここでは実質的支配者=株主と考える。会社による悪事は会社がその責任を負うべきであり、間接有限責任が原則なんだから、株主へ責任追及というのはお門違いである。
 法人格否認の法理などもあるが、あくまでも例外である。例外を本則に持ち込んでいる感は否めない。

パブコメ16
「ひそ」実施会社には住所記載の登記事項証明書をも交付すべきである。

会社に住所記載版と不記載版のどちらかを選択して交付請求できるようにせよと言うことだ。実現すれば与信審査時の問題もクリアできそうだ。交付請求事務をどうすべきかやシステム上の問題もあるが、「今後の参考にする」ではなく、「引き続き検討していく」なので期待できるかも。

パブコメ17
「ひそ」のまま会社が解散清算結了により登記記録が閉鎖されてしまうと、後日会社財産が発見され、清算やり直しになったときに面倒である。解散清算結了による登記記録閉鎖時には「ひそ」を終了せよ。

なるほど、である。このようなことは想像がおよばなかった。法務省もコレを受けて、閉鎖記録を復活させるときには「ひそ」を終了させる旨の規定を新設した。(31条の2第4項第3号を新設)

パブコメ18
3月決算、6月総会の会社が多いので6月施行では混乱を招く。施行期日を延期せよ。

法務省はこれをうけて延期を令和6年10月1日とした。確かにそうかもしれないが、3月決算の会社の「ひそ」申出の絶好のタイミングである。これを失うのは勿体ない。

パブコメ19
法制審議会の検討結果を無視しているので、本省令には反対だ。

法制審議会は賛成だったのか反対だったのか、部分的に賛成だったのかが全く分からない。いつの法制審議会なのか?そもそも法務省側もいつの審議会のことなのか特定できているんだろうか。盛大に法蹴である。

パブコメ20
会社への苦情を伝える有力な手段である代表者宅への抗議文の送付や自宅前での街宣ができなくなるから反対である。

こんなことをしている人たちがいるとは驚きを超えて戦慄が走る。「ひそ」云々ではなくもう少し平和的な方法はとれないものか。抗議文はまだしも自宅前街宣はやり過ぎである。

かなりヤバいパブコメをみて背筋が凍る思いがしたので、一旦ここらで一息入れで、続きは次回。

では。