代表取締役の住所非表示6
2024/6/16 日曜日
前回からの続き。
パブコメ21
世界的な潮流に反する。先進国では実質的支配者すら開示しているぞ。
世界的な潮流とやらはよくわからないが、うちはうち、余所は余所でもいいんじゃなかろうか。コレについての法務省の回答が興味深いので深掘りしてみる。
法務省は申出の際に実質的支配者に関する書面を提出させることを要件としているから(世界的潮流とやらとの関係でも)無問題といっている。
コレについてピンときたのだが、法務省はすべての会社の実質的支配者に関する資料を集めるようとしているのではないか。実質的支配者の資料が法務省側ともいえる公証役場に保管されているのは最近設立された会社だけだし、実質的支配者リストが発行されている会社などどの程度あるのだろうか。つまり法務省が実質的支配者を把握している会社はごくわずかなのである。
世界的潮流とやらにあわせるためにもすべての会社の実質的支配者を集めようとしているので、今後はことあるごとに実質的支配者に関する書面を提出させようとするのではないだろうか。いきなりすべての会社に提出を義務付けると混乱するので、チョットずつ進めようとしているのではないだろうか。今回のパブコメへの回答をみているとそんな気がしてならないのである。考えすぎだろうか。
パブコメ22
小規模法人では訴状等の書類を送付しても届かないことがあるので、安易な非表示は認めるべきではない。
実在性が認められなければ登記官は「ひそ」を終了させることができるので無問題である、というのが法務省の回答である。制度上はそうなんだが、コレについての要検等が曖昧なので不安に思う人もいるのであろう。
パブコメ23
他の省庁の意見や了解を得ているのか
得ていないらしい。まぁ、そうだろう。法律の改正だって他の省庁と連携するようなことは滅多にないのだから。他の省庁は「ひそ」に否定的なところが多いだろうから、意見や了解を得ながらでは遅々として進まない。
パブコメ24
「ひそ」を実施した場合の会社が被るデメリットも周知するべき
法務省はデメリットも周知するとしている。新しい制度ができたときにそのデメリットをも周知するというのは非常に珍しい。「ひそ」が賛否両論あることを物語っているのであろう。
パブコメ25・26
運用や要件の確認にすぎないものなので割愛。そもそもパブコメするほどのものではないだろう。
パブコメ27
資格者代理人による実在性の確認について、資格者であることはどのように確認するのか。
同時に提出されている登記委任状で確認するらしい。不動産登記の本人確認情報とは違うようだ。
パブコメ28
資格者代人による実在性の確認はどのようなものとなるのか
これは通達で明らかにするらしいが、本店宛の配達証明と同程度になるハズだし、そうでなければならない。
パブコメ29
運用や要件の確認にすぎないものなので割愛。
パブコメ30
「ひそ」の申出が不適法で却下されたときでも同時に申請された登記申請に却下事由がなければ登記だけが受理されるのか。
こういうことはあり得るようだ。同時申請や連件申請ではないので当然といえば当然だが。
パブコメ31
「ひそ」終了の申出の際に該当の代表取締役の了解は不要なのか
印鑑届をしていない代表取締役についての「ひそ」を終了させるときのことなんだろう。
申出主体は会社なんだから不要としている。
パブコメ32
登記官による「ひそ」終了を促すために、利害関係人による会社に実在性がない旨の申出等は可能か。
詳細については通達時に明らかにするとしているが、登記官による「ひそ」終了は代表取締役のプライバシー保護VS債権者等の利害関係人の保護という「ひそ」の本質的な問題点の調整的な役割が期待されるので、その運用には期待したい。
パブコメ33
法令違反等により行政処分を受けた会社も「ひそ」を終了させるべきである。
消費者被害を想定しているのであろうが、適用対象を規定するのは結構難しい。
法務省も「今後の参考とする」とあるので、これも法蹴である。
パブコメ34
運用や要件の確認にすぎないものなので割愛。
パブコメ35
これはパブコメ16とほぼ同趣旨なので割愛。同趣旨のパブコメとして1まとめにしてもいいんじゃないだろうか。1まとめにする作業時間がなかったのだろうか。
パブコメ36
過去の住所や退任した者の住所は非表示にされないのか。
これは規定どおり非表示の申出をすることはできない。あくまでも現在の代表取締役の現在の住所だけである。結構気にする人は多いので需要はなくはないんだろうが、退任した者の住所をも非表示とすることは技術面や事務作業上の問題が多いと思う。コンピューター化する前の閉鎖登記簿に記載されている住所まで非表示とするのはチョット面倒だし。
DV被害者等の非表示措置は退任者の住所も非表示にすることができることが示唆されているが、これは被害者の生命身体の保護が目的なので、同列に論じることもできないだろう。
パブコメ37
予め代表取締役の携帯電話番号などを提出さておいて、登記官が「ひそ」を終了させる場合には当該電話番号に連絡するなどして、連絡が取れない場合などに限り終了させるべきである。
登記官による「ひそ」の終了を柔軟な方法をとるべきということだろうが、あまりに柔軟すぎると個別のケースの対応できないことになりかねない。よって法蹴である。
パブコメ38
登記官による「ひそ」終了事由である「実在しないと認められるとき」の判断基準や具体例を示すべき。
コレはもっともなハナシである。施行時の通達で明らかにされるようである。
パブコメ39
第三者から実在性がない旨の通報があれば、登記官は積極的に「ひそ」を終了させるべきである。
趣旨はそのとおりなのだが、第三者の通報の内容次第である。ろくすっぽな調査もせずに通報する者もいるだろうから、このようなものにいちいち対応していられるはずがない。
実際の運用は施行時の通達で明らかにされるだろう。
パブコメ40
コレは何を言っているのか分からないので割愛
パブコメ41
登記官による「ひそ」の終了の場合には実在性が認められないので、本店の表示(登記記録)まで抹消すべきである。
これは無茶なハナシである。よって法蹴である。
パブコメ42
行政区画を表示する理由は何か。
事務所がないときの普通籍を明らかにするためだそうだ。
おそらく、民事訴訟法4条4項の「普通裁判籍」のことであろう。
実在性が認められないっていうことは、同項でいう「事務所がない」と同じことなんだろうか。株式会社である以上、本店所在場所は存在する(登記されている)のである。
パブコメ43
上場会社が非上場会社となったときに「ひそ」を終了させる理由は何か。
上場の廃止後は証券取引所を通じた会社情報の公開が担保されないからだ。証券取引所を通じた情報開示とは有価証券報告書とかのことだろうか。
これはオカシイ。
上場会社が「ひそ」の申出をするときには「金融商品取引所に当該株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面」を提出しているので、少なくとも申出時は実在性は確認されている。
「ひそ」が実施されても実在性が認められないときは「ひそ」を終了させることができるので、実体要件として実在性は常に備わっていなければならないはずである。上場会社であれば証券取引所を通じた会社情報の公開が継続して行われるから常時実在性は確認できるということなんだろう。
しかし、非上場会社では常時実在性があることを確認する術はない。つまり、実在性確認の術がない(なくなる)ことを理由に「ひそ」を終了させることにはムリがあると思う。
パブコメ44
「ひそ」を時限措置(更新制)とするべきである。
これは東京司法書士会のパブコメだろうか。住所変更登記失念云々がないので違うかも。
前回書いたとおり更新制はいろいろ問題あるので、法蹴である。
パブコメ45
申出不要ですべての株式会社は一律に「ひそ」とするべきである。
これはかなり無茶である。このパブコメをした人は一体どういう人なんだろうか。
以上が、パブコメに対する法務省のコメントに対するコメントである。
注目に値するものの1つは施行日が延期されたことである。このようなパブコメは形式的なものが多く、パブコメを受けて変更ということは滅多にないからである。
もう1つはパブコメ24である。新制度のデメリットをも周知するということは見たことがない。
いずれも「ひそ」が賛否両論あるということなんだろう。これだけ賛否両論の制度が運用されはじめると、予想外の問題点も生じるかもしれない。
今後もこの「ひそ」の動向には注目していくつもりである。
これを結びに代えてこのシリーズを終える。
では。
