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司法書士法人履行体制基準改正4

2024/9/26 木曜日

前回からの続き

 今回の改正の目玉は2つある。1つは事務管理責任者の創設であり、もう1一つは業務報告書の提出先の変更である。まずは事務管理責任者から。

今後は、法人正会員は事務管理責任者という役職者を1名定めることとなる。
その役割は「業務報告の責任者」というまたしてもあやふやな内容である。
基準改正の説明には「内部ガバナンスの統制役」とある。事務担当者制度は維持したままなので、事件ごとに事務担当者はいて、各事件の業務報告についての管理をすることが役割なんだろう。管理というのは業務報告の内容の適切性や、報告期限の遵守について各事務担当者を指導・監督することである。
 そうであれば、事務管理責任者が管理職で事務担当者が現場、といってもいいだろう。
法人正会員内での役割を明確にせよ、ってことだろう。

 確かに法人、特に社員が無限連帯責任を負う法人の業務なんだから各司法書士法人内で業務体制というのは確立されているはずだし、そうでなければならない。現場と管理者という2段構成というのはある意味当然である。

 事務管理責任者は名簿登載者でなければならない。そして司法書士法人の社員でなければならない。
 私が考える事務管理責任者の役割からすると社員に限定している点は評価できるが、名簿登載者に限定する点は疑問である。LSは事務管理責任者も成年後見業務に精通していなければならないものであると反論するだろうが、事務管理責任者は「業務報告の履行についての責任」を負うにすぎず、個々の業務内容が適切か、即ち受任している成年後見事件が適切に遂行されるよう指導監督をすることまでは含まれないのではないだろうか。結局のところ事務管理責任者が負う責任とはせいぜい提出期限の遵守についての指導監督だけではないのか。

 この点について、LSは業務報告の提出だけではなく、成年後見事件が適切に遂行されるよう指導監督をすることを含むと反論するであろう。
 LSの反論も理解できるが、条文の規定振りや「司法書士法人による後見業務等の履行体制基準の改正点」という改正の案内文の記載を見てもチョット無理がある。LS執行部内において事務管理責任者の役割や位置付けについての認識が正しく共有されているのかアヤシくなる。少なくとも個々の現場では法人正会員と各支部の執務管理担当者との間で認識の齟齬による混乱は予想される。
 まぁ、これは事務管理責任者の役割をどのようのに捉えるかということであり、私の考えでは管理職というものなので、名簿登載者に限定する必要はないばかりか、LSの会員である必要もない。

 事務管理責任者は成年後見業務に精通していなければならないというLSの言い分は理解できるが、LS会員ではなくとも成年後見業務に精通している司法書士はたくさんいる。
無限連帯責任を負う司法書士法人の社員が、当該法人の業務に精通していないということ
などがあるのだろうか。仮にそんなことが現実に存在するのであれば、それはマジでヤバい。末期症状である。そんな司法書士法人は即解散すべきだし、LSも「履行体制基準や!」とか言っている場合ではない。当該法人正会員を厳しく指導すべきだし、成年後見人の交代を促すべきである。

 LS会員である必要はないという私の考えにはLSはこのように反論する。「LSの会員でなければ指導監督できないし、指示通知を発することができないだろうが!」
何度も言うが、指導すべきは法人正会員であって、その社員や使用人司法書士ではない。また、指示通知をLSシステムで完結させることに拘泥しているにすぎない。もう少し柔軟な発想と運用が必要である。

 ところで、事務管理責任者と事務担当者は同一人であってもいいようである。しかしこれでは業務報告を行う者とその履行の責任を負う者が一致してしまい、内部ガバナンスの責任を全うできるのだろうか。
 やはり、事務管理責任者と事務担当者は別々の者が務めるべきである。1人司法書士法人などを念頭に置くとやむを得ないとは思うが、やはり腑に落ちない。
 まぁ、社員司法書士は1名でも使用人司法書士がたくさんいる1人司法書士法人であれば妥当するような気もするが・・・。

 そもそも1人司法書士法人とかで、事務管理責任者と事務担当者をわざわざ置く必要などがあるのだろうか。多くの法人正会員が感じていることではないだろうか。
 実はこの点こそが今回の改正の最大のポイントであり、この点を抜きに今回の改正を理解することはできない。にもかかわらずLSはこの点の説明をすっ飛ばすという大きな過ちを犯している。

 今回の改正は「大規模な司法書士法人」を念頭に置いているのである。これがポイントである。このシリーズを通じて何度か大規模な司法書士法人という言葉を使っているが、それは単に社員数や従業員数が多いとか、受任事件数が多いとかではなく、従たる事務所を複数の都道府県に設置している司法書士法人である。特に個々の司法書士事務所をグループ化しているタイプの司法書士法人である。このての司法書士法人では事件の融通や共同で事件処理が可能などのメリットもあるが、個々の社員間の結びつきが稀薄であり、お互いの顔さえも知らないということあるであろう。このような司法書士法人でも社員司法書士は無限連帯責任である。顔も知らない者がやらかした損害について無限連帯責任である。あまりにもリスクが高い。

 大規模な司法書士法人では社員や使用人司法書士の異動が多く、事務担当者の交代も頻繁になされるし、顔も知らない他の社員が業務を行っている成年後見業務など知るはずもないので「責任所在曖昧事例」が起きやすくなる。LSはこれを問題視しているのである。

 LSが問題視している点は理解できるので、これを批判覚悟でキチンと表明し、説明し、理解を求めるべきである。これをしないので、事務所が1カ所しかないという多くの法人正会員からすれば今回の事務管理責任者の新設は意味が分からないであろうし、LSに対する不満も出てくるのであろう。

 制度論としては、一定規模以上の司法書士法人に限り事務管理責任者の設置を義務付けるとかでも良かったかもしれない。一律というのは楽だろうけど、それはLSの都合でしかない。

もう1つの業務報告の提出先の変更について。
これは司法書士法人履行体制基準の改正ではないが、同一に論じられているのでこのシリーズで扱う。

 これまでの事務担当者基準から主たる事務所基準に改められた。LSではだいぶ前からLSシステムによる業務報告なので、会員からすればどこが提出先かということはほとんど関心がない。大阪家裁管内の常識が東京家裁管内の非常識ってこともあんまりないだろうし、この変更は会員にとってほとんど意味がない。
 一方で、LS東京支部やLS大阪支部などの大都市圏支部の担当役員や担当委員の負担が増えることになるハズである。現場はどのように考えているのか?基準改正時にLS執行部は支部の担当役員等と意見交換しているんだろうか。たぶんしてないだろうけど・・・。

なので、報告の提出先の変更ではなく、業務精査担当支部の変更である。個々の会員にとってはほとんどカンケーないのでこの程度にとどめておく。

終わりに
 司法書士法人履行体制基準が改正されて暫くたつが、改正基準についての善し悪しをあまり聞かない。私がLSの執行部と無関係というのことはあるかも知れないが・・・。
多くの法人正会員はどのように考えているのだろうか。
 いずれにしてもLSには成年後見業務を行っている会員の業務を1つのパターンに押し込むようなことはせずに、多様性を認めるような寛容性を持ってもらいたいと切に願い、このシリーズを終える。

では。