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ひそ・リターンズ1&先例・通達をぶった斬る!5 令和6年7月26日民商116号

2024/9/26 木曜日

 このシリーズは、またまた「ひそ」である。「ひそ」については以前にいくつか書いてきたので、そちらもご覧いただきたい。
 「ひそ」は令和6年10月に施行なんだが、その施行直前の通達が7月26日に発出された。この手の通達が2ヶ月以上前に出されるのは珍しいのではないだろうか。
 この通達は改正商業登記規則の解説のようなものである。このシリーズではこの通達を深掘りしていく。本通達は以前私が疑問に思っていたことについての回答でもある。これを待ちわびていた。
せっかくなので本通達の順序に従ってみていくこととする。それではいってみよう。

1 代表取締役等住所非表示措置の申出
(1)代表取締役等住所非表示措置の対象
 申出対象者は代表取締役、代表執行役、代表清算人である。これは改正規則が公布されたときから変わらないが、逆にいえば、本通達以前は対象となるか否かがハッキリしなかった者、例えば支配人、持分会社の代表社員は対象とはならないことが明らかになった。 意外だったのは特例有限会社も対象外ということである。特例有限はその特殊性故に、「ひそ」の対象外ということは理解できなくもないが、理論的な説明がほしいところである。株式会社には違いないのだから。
 また、非表示となる住所は行政区画以外のものとされていて、この行政区画とは何を指すのか?という疑問もあったが、これについては市区町村をいうそうだ。政令指定都市の行政区を含むので「千葉県千葉市中央区」という記載になるのだろう。
 「行政区画とは市区町村や!」っていうのは、まぁ、予想どおりだが、商業登記法26条の「行政区画」との整合性は付いているのだろうか?少々疑問が残るし、私が呈した疑問である「外国の都市」については何にも触れていない。「アメリカ合衆国ロサンゼルス市」とか「中華人民共和国上海市」とかになるんだろうか?パブコメによれば事務所がないときの普通籍(たぶん普通裁判籍のことだと思う)を明らかにするためなんだから、住所が国外であれば単に「アメリカ合衆国」とか「中華人民共和国」でもいいんじゃないだろうか。

(2)申出を行うことができる登記の申請
これも改正規則が公布されたときから変わらない。
①設立
②管轄外本店移転
③代表取締役、代表執行役の就任
④代表取締役、代表執行役の住所変更
⑤代表清算人の就任
⑥代表清算人の住所変更
である。

就任には「重任」を含むようだ。
 つまり、既存の会社は管轄外本店移転や代表者の住所変更でもない限り、「ひそ」の申出は次の任期満了改選時の重任までお預けということである。
 また、管轄外本店移転で「ひそ」の申出ができる(=「ひそ」が実施される)のは、新所在地の登記なので、閉鎖される旧管轄の登記記録は「ひそ」がされないので、「あまり意味ねーじゃん!」と指摘していたが、これも変わらずである。
 
 まぁ、旧管轄の登記記録をも「ひそ」にしたところで、過去に交付された登記事項証明書には住所がバッチリ記載されているので、いまさら旧管轄まで「ひそ」をしても意味ねーじゃん、ってことでもある。過去は消せないのである。

(3)申出の方法
 申出の方法は登記申請書に「ひそ」の旨を記載するようである。登記申請書とは別の申出書を提出するわけではない。旧姓の併記のときと同じような感覚であろう。
 問題は添付書類である。添付書類はすでに「ひそ」が実施されている会社か否かと、上場しているか否かの4パターンに区分されている。

 おそらく1番需要があるであるのは、これまでに「ひそ」の申出をしたことがない非上場の会社である。要するに規則改正により初めて「ひそ」の申出をする中小企業である。
 この場合を掘り下げる。

 添付書類の1つは会社の実在性を証明する書面である。これは次の2つのうちいずれかを添付する。
①資格者代理人が当該株式会社が本店の所在場所において実在することを確認した書面
②本店所在場所に当てた本店宛の配達証明郵便

 相変わらず何をもって「実在する」と判断すべきかは全く触れられていない。確認書の書式も示されたが、全く触れられていない。確認の方法に「現認」と「郵送」があげられてはいるが、具体的には各資格者代理人が自己判断せよってことなんだろうか。ちなみに資格者代理人とは司法書士のことと考えてオケである。それであれば、司法書士が実在性アリと判断するに至った経緯、具体的事実を示せば登記官はそれを否定することはできないハズである。曖昧な基準を定めたからには文句を言うな!ってことである。もっとも施行直後に具体的な基準が示されるかもしれない。
 
 この実在性について私の思うところは次のとおりである
 登記されていることだけをもって実在性アリではないというのが改正規則のスタンスである。これには疑問がないわけでもないが、実在性を証明する書面とは原則として②である。①と②の違いは司法書士に登記申請を委任しているか否かである。委任していない場合をこの業界では「本人申請」と呼んだりする。登記法は本人申請を前提としている。つまり、本人申請が原則なのである。なので、本人申請の場合は②であって、司法書士に委任している場合は②でも①でもオケである。厳密には本来は②なのだが、司法書士に委任した場合は①でもオケってことである。司法書士に委任した場合には選択肢が増えるってことである。何らかの事情で②が提出できない場合は①で対応することができるのである。 以前、設立申請において設立前の会社に宛てた郵便の受領ということの不可解さを指摘したが、この場合は①でいいんじゃないだろうか。

 つまり、②が原則で①は補充的・追加的・救済的な意味があるということなので、①の確認の程度は②と同程度の確認で足りると考えるべきである。配達証明郵便が到達する程度の本店機能の存在を確認すればいいのである。これには異論はあるかもしれないが、仮に①の確認の程度はもっと高度なものだ!というのであれば、②に切り替えればこと足りるのである。
 設立のときには②が使えないのであれば①によるべきだが、その内容としては看板や表札の有無の確認や本店所在場所に「発起人」に宛てた配達証明郵便の到達したことの確認でいいんじゃないだろうか。

 ①の場合、資格者代理人であることの確認は確認書への「職印の押印等」のようである。職印の押印であれば職印証明書の添付も必要であろう。「等」なので、職印&証明書に限られず、電子申請の場合の電子署名で足りるような気もするし、会員証の写しでもいいんだろう。

 添付書類のもう1つは代表取締役の実在性を証明する書面である。
 以前も書いたかもしれないが、これは意味不明である。少なくても代表取締役は就任時に印鑑証明書の提出等により実在性は確認されているハズである。一体どういうことなのか?「ひそ」実施にあたり、現在の住所と登記記録上の住所が一致しているかを再度確認したいのであろう。
 登記申請時に代表取締役の住所・氏名を証する書面を添付している場合以外なので、重任の場合や管轄外本店移転や住所変更の登記申請と同時に「ひそ」の申出をするときに添付することとなるのであろう。

 添付書類のもう1つは実施的支配者(実配)の本人特定事項を証明する書面である。
 実配が誰であるかということと「ひそ」の関連性には疑問もあるが、実配の特定が必要になる。具体的には次のいずれかだ。
①犯収法4条1項に規定する確認事項の記録
②犯収法4条1項に規定する本人特定事項についての代表取締役の供述書に公証人の認証を受けたもの
 この2つが実配の本人特定事項を証明する書面である。もっとも・・・
③実配情報一覧の保管の申出がなされている場合
には、上記①、②は不要である。

 ①の確認記録は司法書士に作成が義務付けられているので、司法書士に申請代理を委任した場合である。本人申請の場合は②または③をとる。①と②とではやることはほぼ同じだが、②は公証人の認証が必要という点で結構ムズい。というかめんどい。この点では司法書士に委任したほうがいいかもしれないので、本人申請で行くのであれば③の方法を検討してもいいかもしれない。

 どうでもいいが、会社の実在性を証明する書面に比べるとコッチはかなり具体的に規定されている。どうも法務省は実配の確認について躍起になっているような気がしてならない。まぁ、定型的なので淡々と処理すればいいので、コッチのほうがヌルゲーであろう。

とりあえず今回はここまで。次回も本通達を掘り下げる。

では。