ひそ・リターンズ4&先例・通達をぶった斬る!5 令和6年7月26日民商116号
2024/10/30 水曜日
前回からの続き。
この頁では「ひそ」についての法務省の一般向けの周知を見ていく。
法務省民事局のホームページである。
冒頭には制度の概要が記載されている。ここで目を引くのは「※注意※」として、「ひそ」のデメリットを説明している。「ひそ」のデメリットといえば、やはり与信審査の際など会社の信用力低下の可能性であろうが、そのことが書かれている。パブコメにもデメリットを周知していくつもりだ、としていたので、おそらくこれがそうであろう。
法務省は「ご利用は慎重に!」程度の説明しかしていないが、もう少し詳しく書いてもいいんじゃないだろうか。「ひそ」を終了させてしまうと、再度の「ひそ」の申出はとても難しい(申出ができる局面が限られているってこと)ことも説明しておくべきだろう。
この他の注意点として、「ひそ」が実施されていても代表取締役の住所に変更があればその旨の登記申請が必要だという点がある。これは誤解する人が多いと予想されるので、注意喚起しているんだろう。
また、「ひそ」が実施されている会社でも登記申請書には代表取締役の住所の記載は必要となるんだが、「ひそ」実施後に住所変更がありその旨の登記申請をしている場合には、現在登記されている住所がどこかということは忘れるな、ということも注意喚起している。
住所変更を数回していると分からなくなってしまうこともあるだろう。いつのときの住所が登記されているかな?と思って登記事項証明書を見ても分からないかもしれない。まぁ、市区町村だけは登記されているから、ある程度は分かるんじゃないかな。
さて、ここで1つの問題がある。
登記申請書に記載した代表取締役の住所が登記されている住所と異なる場合である。当然却下事由であるから、補正の対象となる。これは当然である。
では「ひそ」が実施されている会社(登記されている代表者の住所はA地)が登記申請書に代表取締役の住所をB地と記載した場合、登記官は住所が相違していることをどのように申請会社に説明するんだろうか。申請会社や申請人が素直に補正に応じれば特に問題はないし、多くはそうであろう。
しかし、なかには住所はB地であると強弁した場合はどうであろうか?「登記事項証明書を見てみろ」と言っても分からない。特別に「ひそ」がされていない登記事項証明書を見せるのだろうか。そもそもそんなことができるのか。できるとしても当の代表取締役であればまだしも、申請代理人に見せることができるのだろうか。
同一市区町村内で住所変更を繰り返しているとこのような事態になりかねない。
「ひそ」が実施されていると登記されている住所の確認は、付き合いのある会社でもない限り、代表取締役からの聴取に頼らざるを得ない。住民票を見てもそれが登記されている住所であるとは限らない。住所の記載相違については大目に見て欲しいものだが、わざわざ注意喚起しているということは、難しいかも。
本原稿を書いている時点で、施行まで1ヶ月程度である。業界内ではあまり騒がれていないような気もするが、「ひそ」は公示という登記制度の根幹に関する制度である。施行後もそのあり方についての議論は続いて欲しいし、特に法務省もそのあり方を常に検討を続けて欲しいと思う。施行後しばらくしてから実態調査もしてほしい。
ということでシリーズはこれでオシマイ。
では。
