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超難解!会社計算規則14条 その1

2025/1/27 月曜日

予告どおりこのシリーズでは会社計算規則14条について検討する。

 はじめに述べておくが、この会社計算規則14条は超難解である。この条文を起案した法務官僚は頭がいいを通り越して、「ヤバい人」である。
しかし、意味しているところはとても単純であるので、基本的な考え方と結論さえ抑えておけば無問題である。
 金子先生がシンプルに解説されているのでこちらをオススメする。いずれも中央経済社から出版されている。

「事例で学ぶ会社法実務」
「これが会社計算規則だ株主資本だ」(これはオススメ) 
「募集株式と種類株式の実務」

 会社計算規則14条は株主資本のうち、「募集株式を引き受ける者の募集を行う場合」とあるように募集株式の発行等を行った場合の計算についての規定である。いわゆる増資の場合である。
 増資の登記申請には「資本金の額が会社法及び計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面」を添付することとなるのだが、なぜこの書面の添付が必要なのか?そもそもあの書面は何なのか?そういった疑問の答えともなるのが会社計算規則14条である。

 増資とは出資を受けることである。会社に財産が入ってくるのだが、これに対して出資者に対価を渡すことになる。タダでお金をくれる人はいない。増資は返済不要とは言うが、何かしらのモノを渡さなければならない。
 会社が出資者に渡すものは株式なのだが、株式を新たに発行する場合と既存の株式を渡す場合がある。新たに発行する場合を「新株発行」と呼び、既存の株式を渡すことを「自己株式の処分」という。自己株式とは定義は難しいのだが、会社がかつて発行した株式を何らかの理由で株主から取得したものである。事実上は買い取った場合であり、株主からすれば出資の払戻しである。いわゆる自社株買いをした自社株である。

 自社株は会社が買い取っただけでは消滅するものではない。株式とは会社支配権(利益配当と株主総会議決権=株主の権利)のことであり、出資の対価である。
 会社が買い取っただけでは過去に誰かが出資をした事実は消えない。ただし会社自身が会社支配権を行使することは好ましくないから、会社は自身で保有する自社株についての会社支配権を行使することはできない。自己株式は会社にとっては無用の長物である。唯一の使い途が増資の際に出資者に交付することである。

 1株あたりの権利は新たに発行されたものでも、かつて発行されたものでも変わらない。新品でも中古でも価値が変わらない。出資額は異なるかもしれないがこれは別次元の話である。設立時は1株10,000円で引き受け、設立後の増資では1株15,000円で引き受けることはあるであろう。会社が成長したので、この会社の支配権の価値が上がったのだから当然である。しかし10,000円だろうが15,000円だろうが、1株には違いない。
 冨田太郎先生はこれを「新札でも旧札でも価値は変わらない」と表現されている。(募集株式と種類株式の実務 14頁)言い得て妙である。

株式は出資の対価、というよりも出資をしたことの証と考えるべきであろう。

現金100を出資して設立された会社の貸借対照表で考えてみる。
「現金 100/資本金100」となっているハズである。
この時に株式が発行された。この株式は100を出資した証なのだから、「資本金100」に対応するものである。

 1年後に利益が100でたので、貸借対照表は
「現金200 資本金100
       利益 100」となっている。

ページの都合で詳しくは書かないが、会社が株主から株式を買い取る場合はこの「利益100」のみが財源となる。いくら会社に現金があっても利益が出ていなければ株式を買い取ることはできない。株式買取の財源については正確ではないがとりあえずこれでいい。
ここで利益100で株式を買い取ると貸借対照表は
「現金 100  資本金  100
利益   100
         自己株式△100」
となっているハズである。

 自己株式△100を貸方に計上する。重要なのは会社が株式を買い取ってもこの株式が資本金100に対応していることに変化はない。この株式は設立時に100が出資されたことの証なのである。
 なので、新たに増資する場合にこの株式(自己株式)を交付しても現金は増えるかもしれないが、資本金100は変わらない。自己株式の交付は株主が変わっただけと言ってもいいだろう。既存の株式の使い回しである。

まぁ、ながながと書いたが、「増資をすると会社に財産は入ってくる。
 一方で新たに株式を発行した場合は資本金が増えるし、既存の株式(自己株式)を交付した場合は資本金は増えないということである。
会社計算規則14条を読み込むためにはこれをおさえておく必要がある。

先に述べたように、過去に株主から買い取ったことがあるような会社でもない限り自己株式は存在しない。自己株式を持っていれば増資の際に交付するか新たに株式を発行するかのどちらかまたは併用することを選択することができるが、持っていなければ新たに株式を発行するしかない。中小企業であればほとんど後者であろう。

次からは具体的に条文を見ていく。

では。