超難解!会社計算規則14条 その7
2025/11/14 金曜日
このシリーズの最後は5項。
「第一項第二号の規定の適用については、現物出資財産について法第百九十九条第一項第二号に掲げる額及び同項第三号に掲げる価額と、当該現物出資財産の帳簿価額(当該出資に係る資本金及び資本準備金の額を含む。)とが同一の額でなければならないと解してはならない。」
~でなければならないと解してはならない、という規定振りは珍しい。というか他に見たことがない。「●●と▲▲が一致しないことを妨げるものではない」とかの規定振りでもよかったのではないだろうか。ものすごく違和感のある規定振りである。こういった規定があるから会社計算規則を苦手とする司法書士が多いのだろう。会社計算規則アレルギーなどといわれている。
さてこの5項は何をっているのであろうか?
共通支配下関係にない者から事業の現物出資を受ける場合を考えてみる。
事業売買の対価を現金ではなく、株式で行うことである。単純な増資というよりもほぼ企業再編(会計基準では企業結合というらしい。M&Aのことであろう。)である。会社分割に近いが、会社分割との違いは前のページで書いたとおりである。
この事業は簿価が△500ではあるが時価は1000である。企業結合では時価に引き直してから(時価再評価)、受入れ会社(発行会社)に合算・受け入れられる。
対価はいくらでもいい。時価1000のものの対価は1000でもいいが、通常は将来の収益性や受け入れ会社の事業との親和性などを考慮して1000よりも高い額で取引されることが多い。
1億円で売りに出されている不動産について、この不動産を利用すればもスゴくたくさんの収益を生み出すことができる技術や環境を持っている者であれば、他の者が1億円でなら購入してもいいと思っていても、この者だけは1億2000万円で購入しても十分に採算が合う。売り出し価格1億円を時価とすれば、ここでいう1億2000万円を「事業価値」という。企業結合では事業価値で取引がされる。
なので時価1000の現物出資に対して1200分の株式を交付することはあり得る。というか通常はこうなる。全部新株発行だとすると仕訳はこんな感じになる。
受入れ資産 1000 / 資本金等増加限度額 1200
時価で受入れ会社に受け入れられるので借方の受入れ資産は1000になる。
事業価値が会社法199条1項3号の「金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額」なので、発行会社は事業価値を募集事項として株主総会等で決議する。そして1項によりこれが資本金等増加限度額となる。
そうするとバランスがとれていないので借方に200を計上する必要がある。
ここは「のれん」を計上する。のれんは割高分や超過収益力などともいわれる。
受入れ資産 1000 / 資本金等増加限度額 1200
のれん 200
企業結合の場合は受入れ事業の時価と事業価値=資本金等増加限度額が異なることが通常である。これは当たり前のことらしい。このことを注意的に規定したのが5項であるらしい。再び「会社計算規則逐条解説 113頁」を以下に引用する。
「会社法に基づき決定すべき募集事項中の出資財産の価額(法199条1項3号)は、その時の時価または出資者との間で合意した価額が定められることとなるから、その価格と帳簿上当該現物出資財産に付すべき価額や資本金等に計上すべき価額が異なる場合がありうることも、併せて注意的に明らかにされている。」
募集事項中の出資財産の価額とは事業価値のことである。
「帳簿上当該現物出資財産に付すべき価額」とは時価で受入れ会社に受け入れられるので借方の受入れ資産は1000になるとしたものである。
ここでも「実体としての取引(資本金は1200増える)と、これをどのように表示(受入資産の1000を計上する)するかという問題とは、別の問題として捉えるべきものである。したがって、計算規則では、企業結合会計基準という公正妥当と認められる会計慣行を適用することができるようにすることを優先しており、表示の問題と実質の問題を混同した指摘に対しては特に対応していない。」ことになるが、そんなことは知らん!ということだろう。
金子先生はのれんが計上される根拠であると指摘されている。5項はこのように理解しておけばいいかもしれない。
5項は前提知識などをしっかりとおさえておけば難しくはないらしいが、企業結合の現場などに身を置いていないと、なんのことだかちんぷんかんぷんである。
会社計算規則全般にいえるが、分かる人には分かるという感じだ。まぁ、誰しもが適用を受ける法令ではないのだが、もう少し分かりやすく規定してほしいものだ。
これを結びとしてこのシリーズを終える。
最後に参考文献を紹介しておく。本ページとこれらの文献を交互に読んでいただければ理解が進むハズである。
「会社計算規則 逐条解説」(税務研究会出版局)
「事例で学ぶ会社法実務」(中央経済社)
「これが会社計算規則だ株主資本だ」(中央経済社)
「募集株式と種類株式の実務」(中央経済社)
