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DES1 DESの理論

2026/1/25 日曜日

今回はデッド・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)について。「頭文字をとってDES」と言われることが多い。
DESには現物出資型と金銭出資型があるが、司法書士実務を扱う当事務所ホームページでは現物出資型を扱う。金銭出資型は出資してもらった資金で借金を返すだけなので余り面白みがない。

現物出資型は会社が抱えている借金(負債)を資本金に変えてしまうことである。なぜこんなことが可能なのか?
会社の規模にもよるが「当社は530千円の負債を抱えております」だと不安になるが、「当社の資本金は530千円です」だとフリーザみたいでとてもすごそうに聞こえる。
530千円の借金が消えて530千円の元手になるのがDESである。まるでマジックである。
債権の現物出資という形をとることにより行うと書かれていることが多いが、これは手続でありなぜ可能なのかという理論構成の説明にはなっていないので、本シリーズでは理論構成の説明を務めてみる。

理論構成とはいったが、実は全く難しくない。
会社法や会社計算規則をみていても答えは出ていないが、簿記や会計の本を見てみると一目瞭然である。
そもそも増資は「資金調達」の一方法である。資金調達といえば銀行等から融資(借入金)を受けることが多いが、増資で資金調達を行うこともある。法形式は全く違うが、会社にカネが入ってくるという点では同じである。この共通点に着目して、それぞれの仕訳をしてみると・・・

融資の場合の仕訳は「現金530,000/借入金530,000」となり、増資の場合は「「現金530,000/資本金530,000」となり、貸方の勘定科目だけが異なる。借入金も資本金も貸借対照表では貸方に記載される。
ということは貸方内の科目を同じ貸方内の科目に振り替えてもトータルの金額に変わりはない。バランスできている。

現金 530,000 / 負債 530,000
             資本金      0

負債を資本金に振り替えると

現金 530,000 / 負債       0
             資本金530,000

となり、貸方合計は変わらない。なので負債が消えて資本金が増えても問題はないのである。この「負債→資本金」とするのが、DESであり債権(会社からすれば借入金)の現物出資で行うものである。以前資本金とは元手であるとしたが、借入金であろうと元手あろうと会社に現金が入ってきたことには違いがない。DESでは余り気にしないのである。
「当社は530千円の負債(借入金)を抱えております」と「当社の資本金は530千円です」は何らの違いがないということである。

気が付いた方もいるかもしれないが、DESの手続において現金の動きはまったくない。あくまでも勘定科目の変更でしかないので、現金がなくても可能である。これは大きなメリットである。
DESは企業再編などの一環で行われることが多いといわれるが、中小非上場企業でも盛んに行われている。中小非上場企業がわざわざDESを行う理由は損失処理が目的であろう。現金が入ってこないので事業拡大のためのではない。損失処理以外には考えられない。
損失処理とは債務超過(純資産のトータルがマイナスとなっている状態)を解消することである。(損失処理と欠損てん補とは厳密にいえば異なるが、同じ意味でもちいられているようだ)

諸資産 5,000 / 負債     6,000
            資本金    1,000
            利益剰余金 △2,000※
※利益剰余金のほかに繰越利益剰余金やその他利益剰余金などの勘定科目がもちいられることもあるが基本的には同じ意味である

う~む、見事なまでの債務超過である。債務超過は見た目が悪いことは勿論のこと、ステークホルダーからの信用がとても悪い。新規の取引を断られてしまう。なので債務超過は可能であれば解消したい。以前に減資して資本金をその他資本剰余金に振り替えてから、マイナス状態のその他利益剰余金と相殺する方法を紹介したが、今回は減資ではマイナス状態を解消できない。

この場合にはDESの出番である。「負債 6,000」の債権者は誰であろうか?銀行からの融資であればDESは使えない。(銀行がこんなことに了解してくれるはずがない)
中小非上場企業では会社の資金繰りが厳しいときに100%株主である社長が用立ててその場をしのぐということが行われるのではないだろうか。このときに社長からの借入金として計上したのが「負債 6,000」である。

「負債 6,000」を資本金に振り替えれば「資本金7,000」となる。これで債務超過は解消される。もっとも、「利益剰余金 △2,000」のままなので、その後に減資をして資本金を5,000まで減少させる必要はある。

つまりこの場合は「募集株式の発行(債権の現物出資)」と「資本金の減少」の2つの手続を行う必要がある。中小非上場企業ではいずれも株主総会特別決議が必要だが、1回の株主総会で2つ決議をすることもできるようである。減資は増資の効力発生を条件とするらしいが、何度も株主総会を開催することが困難であれば採用してもいいだろう。金子先生の本だったかブログだったかに詳細が書かれていたハズである。

以上がDESの理論構成である。とても簡単であり難しくはないハズである。しかしいろいろな本を見てもこのような解説はどこにもない。解説としてあるのは登記手続などだけである。わざわざ説明するほどのことではないのだろうか?いやそんなことはないと思う。
そう思ったからこそこのページを書いた次第である。

なお、債務消滅益に対する課税の可能性が微レ存といわれるが、課税された実績はどれほどあるのだろうか?(債務消滅益ってのは会社に債務を十分に弁済できるだけの資力がないなかで債務を免れたことに対する課税である)
そもそも「債務消滅益」ってなんなんだ?「貸付」と「出資」も会社にとっての「入り」は変わらない。法形式が違うだけである。これを変えただけである。違いなどほとんどない。増資を受けたときに贈与とはみなされない(増資は株式=会社支配権の売買であり、一方的に利益を受けるものではないというのが当事務所ホームページの見解である)のだから、DESによって何らかの利益が発生したわけではない。「債務消滅益」などありえなのではないだろうか。仮に存在するとしてもその額を正確に計算できるのだろうか。法人税法に詳しい人に尋ねてみたいところだ。

とりあえず今回はここまで。次回はDESの登記手続について。

では。