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DES2 会計帳簿

2026/2/09 月曜日

今回はDESの登記手続について。

前回も触れたし、いろいろなところでいわれているとおり、DESは債権の現物出資で行う。負債を資本に振り替えるといっても帳簿上の操作だけではないってことだ。
会社に対する債権即ち会社からすれば債務(債務も負債も同じだ)を会社に出資して、株式を発行してもらうことによる。要するに増資手続である。

現物出資なので本来は検査役の調査が必要となるのだが、現物出資財産が会社に対する期限の到来している金銭債権(会社が期限の利益を放棄すれば期限は到来する)であって、定められた額が当該金銭債権にかかる負債の帳簿価額を超えない場合には検査役の調査を不要とすることができる。(会社法第207条9項5号)債権出資の特例ともいうべきである。

現物出資による増資手続では現物を会社に引き渡したことを証明する必要もなければ、現物が存在することの証明も不要である。自動車を現物出資するときに自動車の車検証や自動車を引渡したときの受領書などは添付しなくてもいい。
しかし、債権出資の特例では出資が履行されたことを証明する必要がある。このことを定めた商業登記法第56条をみてみると、会社法第207条第9項第5号に掲げる場合(DESの場合)には、「金銭債権について記載された会計帳簿」とある。出資が履行されたことを証明というよりも、出資の対象となった債権の存在を証明するといったほうがいいかもしれない。

問題となるのはこの「金銭債権について記載された会計帳簿」とはなんなのかということである。会計帳簿といえば総勘定元帳や仕訳帳などを指すものと思われる。
商業登記ハンドブックには仕訳伝票(借入金の記載のある入金伝票、買掛金や支払手形などの負債項目の記載がある振替伝票)、現金出納帳(借入金の入金の記載がある場合)、買掛元帳など会社が作成した会計帳簿に原本証明をすればOKとある(ハンドブック 278頁)
前の頁で例示した代表者が用立てたような場合では、借入金の仕訳帳でもいいということである。
代表者がちょくちょく用立てていて、かなりの金額になっているということもあるかもしれない。こんなときでも毎回の仕訳帳を複数用意すればいいってことだが、複数の貸付金をまとめて一本の債権に変更する準消費貸借契約書でもOKともいわれている。

仕訳帳が散逸してしまっているときには有用な方法だが、その契約書の記載の仕方には注意を要することが金子先生の本に書いてあるの一読すべきだろう。(平成27年施行改正会社法と商業登記の最新実務論点 185頁)

ただし、準消費貸借契約を認めない登記官もいるので、事前確認をオススメする。
なお、準消費貸借契約書には収入印紙の貼付が必要である。仕訳帳では不要なので少々イタい出費である。

DESは期限が到来している債権でなければならないところ、仕訳帳や総勘定元帳には弁済期などが書かれていないことがフツーだろう。この場合でも弁済期が到来していないことが明らかでなければ、特に弁済期が到来していることを証明する必要はない。準消費貸借契約による場合は弁済期の到来を明示しておいたほうがいいかもしれないが。

ここからが今回の本題だが、仕訳帳や総勘定元帳以外の会計帳簿であっても「金銭債権について記載された会計帳簿」といえるのであろうか。貸付金が記載されている貸借対照表などの財務諸表でもいいのではないだろうかと考える。代表者と会社との間で締結した(準)金銭消費貸借契約書でもいいというのは「会計帳簿」に拘っているのではなく、あくまでも会社に対する債権の存在を示せればいいという考えに基づくものではないだろうか。そうであればであれば「会計帳簿」に拘る必要はない。
また、仕訳帳はあくまでも会社内部で作成されたものなんだから、債権の存在を客観的に証明できるとは言い難いが、仕訳帳でいいというのであれば同じく会社内部で作成された貸借対照表でもいいのではないだろうか。(貸借対照表は一応株主総会で承認されるので証明力は若干ながら仕訳帳よりも高いともいえるかも)

以前、この点を法務局に尋ねたことがある。「金銭債権について記載された会計帳簿とは最終の貸借対照表でもいいか?」と尋ねた。このときは該当しないということだった。
理由としては①貸借対照表は財務諸表であって条文で規定する会計帳簿ではない、②貸借対照表作成日から現在までに弁済されている可能性を排除できない、③貸借対照表上の「貸付金」では債権を特定できない、④そもそも会社には会計帳簿の作成義務があるのだから、その提出は容易である、ということであった。

ここからは当事務所ホームページおきまりの「お役所の持ち出す薄っぺらい根拠」の擦り倒しである。
まずは①について。これはあまりにも文言に拘泥しすぎであり、呆れて物も言えない。条文の趣旨を理解していないのではないだろうか。
次に②について。そんなことは仕訳帳や(準)金銭消費貸借契約書でも同じことである。やはり呆れて物も言えない。
続いて③について。確かに現物出資する債権は特定できないかもしれないが、それは株主総会の決議や株式申込証で補完できているのではないだろうか。
最後に④について。会計帳簿の作成は会計監査で明らかにすればいいことであり、法務局が出張ることではなく、作成義務云々などはどうでもいいことである。作成義務があるからこれを提出せよというのは乱暴である。それこそ貸借対照表だって作成義務があるんだから同じことではないだろうか。

以上の反論を展開したが、それでも貸借対照表を「金銭債権について記載された会計帳簿」とは認めないということであった。真に残念であった。
ということで無難に行くのであれば仕訳帳一択であろう。
どうしても貸借対照表などの会計帳簿以外の書類で行くのであれば、税理士等の証明によることも検討すべきである。

なお、「金銭債権について記載された会計帳簿」以外は通常の金銭出資と同じなので余り言及しないが、株主総会議事録の出資債権を特定する記載方法には注意を要する。

DESは親会社や金融機関から責っ付かれて債務超過解消の切り札としてもちいられることが多いであろう。増資した後の減資も行うとすれば2ヶ月近くはかかるので時間的余裕を持ちたいところである。前の頁でも触れたが、はじめから出資として処理すればなんの問題もないのだから、貸付ではなく出資とすることも考えておくべきである。

今回はいつものように冗長になってしまったが、許してクレメンス。

では。