数次相続Ⅴ
2021/10/18 月曜日
長々と続けてきた数次相続の「締め」である。
以前「登記原因証明情報は戸籍謄本等と遺産分割協議書である。この遺産分割協議書の記載方法は難しい!端的にいえば遺産分割協議当事者適格が相続により承継された過程をすべて記載する必要がある。正確に言えば「記載する必要があった」である」としたことの続き。
不動産の相続登記の際に用いる遺産分割協議書には「平成20年に登記名義人Aが死亡し、相続人はB、C、D、Eであったが、平成25年にBが死亡し、BをC,D,Eが相続し、更に平成28年にC,が死亡し、XとYが相続した。」と数次相続の過程をこと細かに記載し、末尾の署名欄には、それぞれの肩書きを
D・・・「A相続人」兼「A相続人B相続人」
E・・・「A相続人」兼「A相続人B相続人」
X・・・「A相続人C相続人」兼「A相続人B相続人C相続人」
Y・・・「A相続人C相続人」兼「A相続人B相続人C相続人」
と記載する必要がある。
実際はここまで細かく記載しなくとも問題はないのだろうが、原則的にはこのように記載すべきである。
遺産分割協議書にここまで細かく記載する必要があるのは不動産の登記の場合くらいであり、私が知る限る金融機関等ではこんなに細かく記載しなくてもOKなハズである。
金融機関としては「戸籍謄本等で数次相続の過程が分かるので遺産分割協議書には細かく記載しなくともOKやで!」ということだろう。
不動産登記は権利変動の過程まで記録することを使命としているので、添付書類もそれに倣えということだろうか。
しかし、平成29年3月30日民二237号は、最終の相続人が被相続人名義の不動産を取得した旨の記載のみで足りるとし、中間の過程(最終の相続人が一次相続、二次相続の各相続人の地位を承継して遺産分割協議を行った結果、中間者が単独で相続したこと)を記載する必要はないとした。
これによれば、「Aが死亡したので、CとDが遺産分割協議を行いCが相続した」の記載だけで足りるということである。
これは戸籍謄本等をも添付していることからAからB、BからC、Dへという相続関係が合理的に推認することができ、「BがAを相続し、そのBをCとDが相続して遺産分割協議をしてCが相続した」ということが分かるというのがその理由だそうだ。
要するに「細かく書かなくとも添付書類から分かるんだから、いーじゃん♪」ということである。金融機関等で行う相続手続では、最終の相続人だけを明らかにしていれば足りていた。
これが健全な方法であり、従来からの登記実務が遺産分割協議参加適格を誰がどのような経緯をたどって相続していったのかを事細かに記載することを求めていたことがどうかしているとしかいえなかったのだ。
しかし今後は金融機関等で行う相続手続同様に不動産登記でも健全な方法(記載の仕方)でOKとなったのだ。
従来の登記実務は「細かく書かなくとも添付書類から分かるんだから、いーじゃん♪」が通じなかったのである。法務局における手続とは得てしてそんなものだ。
この通知により、「細かく書かなくとも添付書類から分かるんだから、いーじゃん♪」一切お断りのハズだった法務局が手のひらを返したごとくの取り扱いの変更である。
これには、私以外にも驚いた方は多いのではないだろうか。
あまりの驚きで、この通知が発出された事情や背景はどのようなものなのかを勘ぐってしまう。
従来からの健全ではないとした「遺産分割協議参加適格を誰がどのような経緯をたどって相続していったのかを事細かに記載する」取り扱いでも、そのようにしていれば中間圧縮登記により最終の相続人へ直接所有権移転登記は可能であった。つまり1件の申請で可能ということ。
誤解してはならないことだが、本通知によって登記名義人から中間圧縮登記により最終の相続人へ直接所有権移転登記が可能となったのではない。従来から可能であったが、添付書類である遺産分割協議書の記載方法に一工夫必要だったのだ。
記載方法に一工夫加えればいいだけなので、本来は申請人に過度な負担とはならないはずである。
数次相続は決して珍しいものではなく、申請件数も決して少なくないと思われる。
しかし、遺産分割協議書の記載が不十分なものも少なからずあったのではないだろうか。
それらをいちいち補正させていたらキリがないし、その度に申請人から「細かく書かなくとも添付書類から分かるんだから、いーじゃん(怒)」とお叱りを受けていて法務局も辟易としていたのだろうか。
また、昨今法務省が「所有者不明土地問題解決のための相続登記推進キャンペーン」を打ち上げているところ、従来よりも簡易な方法での相続登記を可能とするための施策なのかもしれない。
はたまた、本通知のきっかけとなった申請を補正させずに受理したかったという大人の事情でもあったのだろうか。
いずれにせよ、本通知により数次相続の登記申請はチョットだけやりやすくなったことは事実である。
